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森貴史の『この積ん読、どうする?』1.【4ページミステリー/蒼井上鷹(2010)】

1月11日、遂に今年1冊目の更新です。
記念すべき最初は、何と13年前の作品。

雑誌『小説推理』での連載「2000字ミステリー」、その五年分を収録した60本のショートミステリー集。
作者は蒼井上鷹さん、質の高い短編小説を書くことで知られています。

今作の初版は2010年。今からおよそ13年前、自分がまだ高校生の頃ですね。
表紙イラストにもある通り、通勤・通学中の車内での軽い読み物にはピッタシの一冊!
というのが宣伝文句でした。
当時の僕は海外のファンタジー長編小説を読み耽っていました(「ハリーポッター」「ダレン・シャン」etc.)ので、その合間に気軽に読み進めることが出来て、手早く終わりを感じれるショートショートや短編モノはありがたく思えました。

さて、初めての蒼井さんだったのですが……当時は今ひとつでしたね。
その理由は、あの頃ショートストーリーといえば「SFモノ」一択!と、当時勝手に思い込んでいたからです。恐らく星新一さんの影響でしょう。
逆に今作は推理モノだけあって、殺人や窃盗といった嫌に現実的な話ばかり。さらに事件に巻き込まれた大人達に襲いかかる悲劇がやけにシビアでホラーチックで、最後はどこか皮肉めいて終わるのです。それこそが、今作の売りなのに、高校時代の僕はそれに嫌気がさしてしまい、本のページをめくる手を止めてしまったのです。

しかし成長して大学生になり、電車通学となった自分は再びこの本に手を伸ばしました。そして、当時の僕は何て読解力が無かったのかと痛感しました。しっかりとした「推理モノ」を僅か2000字=4ページでまとめられる、その手腕の持ち主の作品をどうしてもっと若い内に多く読んでおかなかったのかと。

今作のオススメポイントは〝一話につき十分もかからない〟この一言に尽きます。ショートショートにも当てはまりますが、それは作者によって千差万別で、ときに一分、ときに五分、またあるときは十分を要することもあります。しかし、今作のお話は全て四ページと決められているので、十分以上はまずかからないです。
個人的には
「ロック・オン」
「ふゆのよばなし」
「覆面の依頼人」
がオススメ。
特に「ロック・オン」は他の人のレビューサイトでも必ず紹介される程、絶賛された作品でした。
ただ、オチが上手く読み取れないホラーチックなラストの作品も入っていたので、全てが起承転結でスッキリするものではない、ということですね。勿論読者によって作品の満足・不満足はバラバラですので、読書好き、特に「ミステリー好き」という方に是非読んで頂いて、どの作品が好きかを、個人的に聞いてみたいものです。



というわけで、
今作は『保持』か『手放す』か……判定!

【手放す】!

面白い本ではあるのですが毎年一回は読みたい……とまではいきませんでした。
逆に言えば、
「忘れた頃にもう一度読みたい!」
しかし
「面白かった作品が多かったので、しばらく忘れないだろうな」
ということですね。

(2022年1月11日)

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