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不測の危機をしなやかに生き延びる、レジリエントな会社の作り方

Harvard business review 2021年2月号のテーマは、
「組織のレジリエンス」
複数のテーマコンテンツの中で、特に示唆に富んでいたのは
マッキンゼー・アンド・カンパニーによる論文、
「永続的に成長するレジリエント・カンパニーの条件」でした。
論文の内容をもとに、中小企業をレジリエントに育てる方法を考えます。

Resilienceとは、危機から力強くよみがえるしなやかさ

最近ちらほら見かける「レジリエンス:resilience」とは、本来「跳ね返って戻ってくる弾力性」を指す言葉。この意味から派生して、人が困難な状況から前向きな気持ちを取り戻したり、災害にあった町が復旧していくなど、危機的状況に陥っても、絶望に覆いつくされることなく、前向きに回復していくしなやかな力強さを「レジリエンス」という言葉で表現します。

レジリエント・カンパニーの共通点

バブル崩壊、アジア通貨危機、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルス感染拡大など、予想外の事態が次々と企業経営を襲いますが、大きな危機に飲み込まれたとき、同業でも伸びる会社と滅びる会社があり、世界にはそのような危機を何度もチャンスに変えて永続的に成長し続けている企業があります
そのような「レジリエント・カンパニー」の共通点は何でしょうか。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのチームがリーマンショック前後の企業行動を調査した結果、3つのポイントが見えてきました。

①財務安全性の確保

同業他社が負債を増やす一方で、レジリエント・カンパニーは景気後退局面の早い段階から負債比率を減らし、財務健全性を高めていました。負債を圧縮しておくことで返済の負担が軽減して経営が安定化し、再びチャンスが巡ってきた際に機動的に投資する余力も生まれます。

②規律ある投資抑制

レジリエント・カンパニーでは、景気後退局面で積極的に事業売却を行い、回復期には逆に事業買収を再加速させていました。

③コスト削減

レジリエント・カンパニーは危機の早い段階から売上原価を中心とするコスト削減に取り組み、生産性を向上させていました。

結局、レジリエント・カンパニーは何をしていたのか?

さて、一見バラバラに見えるこの3つの共通点が示唆する1つの大きな特徴、それは、「安全性と収益性重視の経営」です。好景気から景気後退への予兆が見えた時、レジリエント・カンパニーでは即座に負債比率を下げて経営の安定性を確保し、コスト削減を進めてそれでも低収益化する事業は次々と売却しました。つまり、売上が減少しても利益を確保して、それでも無理なら蓄え(内部留保)を食いつぶして生き残る準備をしていた、というのが、上記の3つの共通点の意味するところです。

中小企業に当てはめても、本質的には同じこと。急激な売上低下に耐えられる会社であるためには、収益性を高めること、そして、負債を厳しく抑え、財務安全性を確保しておくこと

日本の会社組織に決定的に足りないもの

さて、そんなレジリエント・カンパニーになるためには、どんな組織づくりをすればいいのでしょうか?マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、50年以上の歴史を有し、幾多の危機を乗り越えてきた世界の真のレジリエント・カンパニーは、①陳腐化しない企業哲学とパーパス、②M&Aやイノベーション、教育の仕組みづくりによる継続的な価値創造、③一部株主の利己的な行動から会社を守るガバナンス、などの特徴を備えているといいます。
しかし、2000社の組織健康度を独自に調査・分析した結果、日本企業の総合力はグローバル企業の最下方10%程度の位置づけとのこと。どの要素から見ても、日本企業の組織能力はグローバル企業平均よりも低い、という結論のようです。そして、そんな日本企業の組織健康度を高める最も効果的な処方箋は、「会社の価値観を社員が共感できる形で伝え、そのうえで評価にまでつなげること」であったといいます。

まとめ

日本企業では、「社会に貢献する」というような漠然とした経営理念が掲げられていることが多いですが、これを、明確なミッション(社会・顧客にとっての当社の存在意義)として整理して従業員と共有し、日々の実務や評価の判断基準として浸透させていくことで、経営者から従業員まで、組織全体の方向と足並みを揃えることができます。
組織力を高めた上で、経営指標を売上高から利益額へシフトさせて収益性を高めること、そして、負債を厳しく抑え、財務安全性の確保を目指すことが、自社をレジリエントな会社に育てる第一歩です。


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