ピニャコラーダ松井

1980年生まれ。東京都出身。

ピニャコラーダ松井

1980年生まれ。東京都出身。

マガジン

  • 出張族の自由時間

    2015年よりSNSに投稿してきた出張日記をアーカイブとして再編保存。

最近の記事

#12 Answer (秋田県由利本荘市)

秋田県由利本荘市に滞在していることを知った仙台の音楽仲間から『アンサーってお店があるから行ってみて』とメッセージがあり、とある晩タクシーを呼んで遊びに行った。 店の前に車をつけてもらいタクシーを下りる。 友達から紹介されている以上何の心配も無いのだが木材を使った外観も『Answer』というロゴも自分には馴染みのある風合いで、これから楽しい時間が始まることを十分に予感できた。 扉を開くと男性店員と女性店員が迎え入れてくれた。知らない顔の男の来店に『ん……誰?』という若干

    • 出張族の休日 (秋田県秋田市)

      2016年4月25日 出張族といえども基本的に週末は東京に帰るのだが秋田ともなればそうはいかない。今日は珍しく出張先で過ごす日曜日。せっかくだからと午前中にアパートを出て本荘公園を散策。こちらはまだ桜が咲いていて、二度目のお花見ができるのは何だか得した気分。 日曜日の昼でも羽後本荘の駅前はひっそりとしている。都市圏とは違って地方に行けば車を使う生活が当たり前で、電車を使うのは学生ぐらいだろう。 電車は1時間に1本。北に向かえば秋田市、南に向かえば山形県。ピンクのラインが

      • 36回目の誕生日

        2016年4月、出張族として各地を転々とする生活が始まって1年を迎えようとしていた。 基本的に5~6人で動いている小さな会社で、行く先々で頻繁に酒盛りをするのだが、誰かの誕生日には全員参加でお祝いをするのが決まり事だ。 『今日は何が食べたいですか?』 『うーん、せっかくだから秋田らしいものを……』 『何ですかねー…』 『比内地鶏かな』 ということで。 しかしながら36歳の誕生日を秋田県南端の海沿いの町で迎えることになるとは想像もつかなかった。つくづく無計画でテキト

        • #11 Jam's bar (栃木県宇都宮市)

          yujicafeに通い始めて間もなく、同じビルの2階に系列店としてセッションバーがオープンした。 お店に楽器が置いてあるので集まった者同士で自由にセッションして音楽を楽しみましょう、という店だ。 ある晩、『オープンしましたよ!』とサラちゃんに促されてハートランドを片手に2階へ上がってみた。 自分で音楽をやればわかることだが世の中には有名無名を問わず腕の良いミュージシャンがゴロゴロいる、仕事帰りのスーツ姿のおじさんがネクタイを緩めた途端に凄腕ギタリストに変身する瞬間などを目撃

        #12 Answer (秋田県由利本荘市)

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        • 出張族の自由時間
          26本

        記事

          #10 ハコカフェ(茨城県取手市)

          2016年1月23日 久しぶりのhako cafe@茨城取手 何も言わずに突然現れるのがいつものやり方。 ペヤングが多摩から取手に移り店を開いて6年。カフェ営業のみならず音楽ライヴも精力的に開催して地元民に愛される素晴らしい空間を築いてきた。 ごくたまに気まぐれに訪れるが、いい店だと思う。 お互いにやっていることは違うけれど大切にしてきたことはそう変わらない。 ハートランドをゆっくり呑みながら 時折周りのお客さんと言葉を交わし、 適当に作ってもらった魚介パスタの味に

          #10 ハコカフェ(茨城県取手市)

          #9 Indifood (静岡県島田市)

          2016年1月15日 『今日は一人で呑んで来ます』 同僚の誘いを断ってホテルの大浴場で疲れを癒しながら何となく思い出したのが群馬館林でPROCEEDを見つけた晩のことだった。 昨夜ホテルのフロントで手にした飲食店のチラシを見て『どこかで読んだことがあるコピーだな……』と思い、この店に行けば何か面白いことがありそうな予感がした。 いわゆるダイニングバーと呼ばれるような雰囲気の店で作業ジャケットを羽織った三十路男が一人で飲むにはふさわしくない気もしたが、カウンターに座って飲

          #9 Indifood (静岡県島田市)

          #8 INITY (栃木県宇都宮市)

          宇都宮に来て早々にyujicafeと出会い、やはり音楽を聴きながら寛げる店があるのは最高だなと改めて感じ、 これぐらいの規模の街であれば他にも何件かあるだろうとスマホで検索したところ一軒のレゲエバーを見つけた。 自分はジャマイカに行ったことは無いし髪型をドレッドロックスにしたこともないが、レゲエのリズムにリリックを乗せて歌うシンガーとしてかれこれ十数年活動してきた。狂信的にこの音楽を愛しているわけではないが肌に馴染むビートであることに間違いは無く出張先にそんな店があるな

          #8 INITY (栃木県宇都宮市)

          #7 music cafe & bar yujicafe(栃木県宇都宮市)

          日光の仕事が終わってからしばらくは一週間単位、長くても数週間の仕事が続き、栃木、茨城、千葉などを転々とするようになったのだが、そのなかで最も多く訪れていたのが宇都宮。というのもJR宇都宮駅にほど近い場所に会社が部屋を借りていたので周辺で仕事が入ればそこで寝泊まりしていたからだ。 幸いにも部屋に一台の自転車が置いてあり、自分以外に乗り回す人もいなかったので暇があればマンションのあるJR東口から東武宇都宮駅周辺に遊びに行った。 初めてyujicafeを訪れたのは宇都宮にやっ

          #7 music cafe & bar yujicafe(栃木県宇都宮市)

          【追記】今市回想録

          日光での暮らしが始まる少し前のこと、聖蹟桜ヶ丘のバーカロで店主のヒデ君と話したことをよく覚えている。 『オレ、しばらく日光で働くことになったんだよ』 『いいなー、楽しそうじゃん!』 『でもね、みんなが知ってる観光地とは少し離れてるし、最寄り駅の名前がさ』 『何なの?』 『いまいち』 実際に行って暮らしてみたら楽しい毎日だった。 まず何よりも空気がいい。休日を東京で過ごした後に電車で下今市の駅に到着すると待ってましたとばかりに息を吸い込んだものだ。 そして雄大な

          【追記】今市回想録

          #6 たきた(栃木県日光市)

          2015年10月2日 豪雨被害のあと、しばらく日光を離れて北関東を転々とし、作業の区切りをつけるためにまた戻ってきた。 また来月来る予定とはいえイレギュラーな状況なので先のことなどわからない。 お世話になったお店にはとりあえず顔を出そうと挨拶回り。 今市の市街地にある定食『たきた』 昨年亡くなったお母様の後を継いで家族が切り盛りする町の食堂。 ここの餃子は日本一美味い。 今夜も瓶ビールと一緒に頂いて、うんうんと頷いた。 煮込みハンバーグも絶品なのだが隣の客が食べて

          #6 たきた(栃木県日光市)

          平成27年9月関東・東北豪雨

          2015年9月11日 雨音に恐怖を感じてほとんど眠れなかった。 『極めて強い雨』が『12時間以上』降り続き 日光市今市の降り始めからの雨量は600ミリを計測した。 ハザードマップを調べると隣の家の半分までが土砂災害警戒区域になっていて、夜が開けるまでは不安でいっぱいだった。 9月9日~11日に渡り激しく降り続けた雨は関東・東北の各地に大きな被害をもたらした。 鬼怒川中流域の氾濫のニュースが大きく取り上げられていたが、上流域も決して無傷だったわけではない。 天気が回復し

          平成27年9月関東・東北豪雨

          おかえりなさい

          2015年9月7日 週末のライブを終えて今市に帰ってきた。 いつもの居酒屋の扉を開けると 『あら、お帰りなさい。 荷物増えたんじゃないかい?』 『長袖持ってきたんで……』 『いつまでいるんだっけ?』 『10月いっぱいですかね、たぶん……』 瓶ビールとぜんまいの煮物 オクラのかき揚げ セロリの浅漬け 秋刀魚の塩焼き定食 (マグロブツ、サラダ、味噌汁、大盛りごはん) 『ごはんまだ食べるかい?たらこもあるし納豆もあるよ~』 ほろ酔い。満腹。満足。いつも通り、不明朗な低

          人生道楽

          2015年8月31日 熊本行きのチケットの支払いに出掛けて ジョニーさんの店で一杯。 他に客が居なかったので二人で色々な話をした。 先日宇都宮で見つけた珈琲屋『おーるどびーんず』はジョニーさんも古くから通っていると聞き嬉しくなり、お互いに卒業した大学も同じだった。 年齢は倍離れているからジョニーさんは70歳。 それでも文化的でユーモアのある言葉を投げ交わすことができる。アナログとデジタルのはざまについて話し、街の佇まいや政治の話もした。もちろんスケベな話もした。 帰

          暮らす

          2015年8月20日 お盆が過ぎたらぐっと涼しくなるから と居酒屋で会ったおばちゃんが言っていたけれど 本当にその通りだ。 現場から眺める空の雲の形が変わり、日中もかなり凌ぎやすくなった。 朝は鳥の声で目覚め、夜は虫の音を聞きながら眠る。鳥や虫は天気の変化も知らせてくれる。部屋の灯りを消して床に入り、窓の外が明るければ月夜だと気づく。 お日様と共に目覚め昼間は黙々と働き、 日が暮れる頃には家に戻り地の物を有り難く頂いて眠りを待つ。 暮らすとは本来どういうことなのか よくわか

          盆休み

          2015年8月13日 今日から現場はお盆休みということで 同じアパートに滞在している人たちはそれぞれの家に帰って行ったが、自分は1人だけ今市に残ることにした。 昨日は仕事から戻ったあとに208号室から205号室へ自分の荷物を移動して、よそのチームが使っていた部屋の片付けやら何やらに2時間以上費やしたあと、呑みに出かけた。 いつもの居酒屋『華まる』でカウンターに並んだ顔馴染みと時折言葉を交わしながら日本酒。姫鱈の一夜干しと〆に頂いたおろし蕎麦が美味かった。 閉店まで呑んで

          #5 ジョニーズカフェ638(栃木県日光市)

          2015年7月28日 部屋で一杯呑んでから 雨上がりの月夜を散歩しようと外に出た。 いつものカフェが閉まっていたので帰ろうとしたが ふと踵を返していつもは歩かない道に入ってみた。 シャッターの閉まった店が並ぶうら寂しい路地に一軒のバーを見つけて ジョニーさんというマスターと一緒に酒を呑み、驚くほど話が弾んだ。 東京でコピーライターをしていたというジョニーさんは舌癌の手術のあとで滑舌に苦労していたものの、一つ一つの話が実に興味深かった。 端っからこちらが言葉と関わりのある

          #5 ジョニーズカフェ638(栃木県日光市)