54字の物語①(10編)
54字の物語
瞬時に切り取った、心の機微。
心模様。9×6の世界。
ショートストーリー。
季節の移り変わり。
懐かしい出来事など。
紫陽花/Roco
雨に打たれ、咲きこぼれる
紫陽花。生滅流転の定め故、
儚きは、人もまた同じ。
君からの短い便り。
まずは、鎌倉にて。
七夕/Roco
告知「私たちは、
偽りの関係を解消し、
それぞれにとっての
真実の愛を求める
ことを誓います。」
7月7日。彦星、織姫
予感/Roco
素足に履くハイヒールのミュール。
着崩した白いシャツで隙を作る。
真紅のルージュ。
この抜け感は、私の心そのもの。
恋の行方/Roco
「ねぇ、また会えるよね。」と
咄嗟に叫んだ。
交通量の多い道路の反対側。
あなたは両腕で、
大きな円を描いて見せた。
君を見つめる/Roco
少し離れたところで、
丸眼鏡のサングラスを
ひょいとカチューシャ
代わりにした君。
見つめているのは
僕だけなのかな?
クロスステッチ/Roco
花糸で、
ひと針ひと針想いを込めて。
クロスステッチ、麻の手触り。
夢へのいざない。
ピローケースをあなたのために。
本心/Roco
「ご自愛下さい。」と
遠回りの言葉。
こんな季節の便りなど
何の意味も無い。
本心は「君に会いたい。」
ただそれだけ。
君の存在/Roco
響という名前の君。
音のない世界に住む僕にとって、
君の存在は旋律そのもの。
君が奏でた曲を、
僕だけが聴いている。
押し入れ/Roco
真っ暗な押し入れに入って
懐中電灯をつける。
その明かりでひとり漫画を読む
胸躍る時間。
いつの間にか眠ってしまう。
日の出前/Roco
早朝の遊歩道。
朝霧で湿った板を
踏みしめて歩く。
日の出前、
蒸発する水分が
冷えた風を起こして
するりと通り抜ける。
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