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54字の物語(38)『お弁当』(ショートストーリー付き)

54(38)お弁当



☆『お弁当』/Roco☆

「あのさぁ、
お弁当作ってきてあげようか?」
きのう唐突に君はそう言った。
僕は君を見つめたまま何も言えなかった。


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「おなかすいたー。」
お弁当の蓋を開ける君と目が合った。

コンビニの袋から取り出す菓子パンの袋。

「あのさぁ、
お弁当作ってきてあげようか?」

きのう、唐突に君はそう言った。

僕は君を見つめたまま何も言えなかった。というのも、話らしい話をしたことがなかったからだ。さっさと食べ終わった君も、何も言わずにいなくなってしまった。


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昼休みは、いつもなんとなくそばにいて、いろどりのいい手作りのお弁当を、僕はなんとなくちらちらと見ていた。美味しそうに食べている君を、微笑ましく思っていたのも事実だ。もしかすると、そばにいると、ほっとするような気持ちになっていたのかもしれない。

しかし、そんな気持ちを見透かされていたのだろうか?菓子パンとジュースだけの昼食が味気なく見えたのだろうが、本当のところ僕は、君の真意を測りかねていた。


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今日、本当にお弁当を作ってきてくれるのだろうか?僕が何も言わなかったせいで、気を悪くしたのではないか?ちゃんと話したわけじゃないから、忘れてしまっている可能性もある。うっかり期待でもして、がっかりしたくないという防御反応も働いた。

でも、もし作ってきてくれたらどうしよう。どんな態度をとったらいいのか?なんて言ったらいいだろう?反応が薄いと失礼なような気もするし、はたまた、素直な気持ちを表現するのも意外と難しいと気付いた。そのお返しに、食事にでも誘ったらいいのか?いやいや、作ってくるかもわからないのにと、僕の頭の中は堂々巡りになっていた。


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その夜、シミュレーションを繰り返した結果、僕は睡眠不足になっていた。昼休みが近づいてきていた。「どうしよう。どうしたらいいんだ。昼休みはどっかいなくなろうかな。」どうしたらいいかと思案して、仕事が手につかなかった。こんなにも動揺してしまう自分が情けなかった。例え作ってきてくれたとしても、喉に通らないかもしれない。黙って食べるわけにもいかないし、どんな話をしたらいいんだ。


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作ってきてくれても、忘れられていたとしても、どちらの結果でも、いい結果にならない事だけはわかっていた。(了)

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