最近の記事

確率的債務持続性分析(SDSA)

本稿では、IMFが近年始めた、Market Accessed Countries (MACs) のDebt Sustainability Analysis (DSA)を対象に行なっているStochastic DSAについて、自分なりにプログラムを回してみたという備忘録である。日本を例に取っているが、日本はMACsに含まれており、最新のDSAは2024年5月に公開されている。詳細はそちらを参照されたい。本稿はSDSAのデモンストレーションという要素が強い。 モチベーション通常

    • 円安に歯止めはかかるのか。

      4月29日(2024年)の為替市場では、34年ぶりの円安(1ドル=160円台)を記録した。その後、150円台に戻しているものの、今年に入ってからも特に円高に動く気配はあまり感じられない現状である。本稿では、円安の要因について考えていく。 Q1. なぜ円安が止まらないのか。A. 円が買われないから。では、なぜ円が買われないのか。 1. 日米の金利差が拡大している点。 米国の名目金利が日本よりも高いことが要因。米国資産で運用した方が、高い金利を得られるため、(円が売られ、)

      • 資金調達方法による公共投資の効果をシミュレーション(DSGEモデル)

        本稿では、公共投資の資金調達の違いによって、経済的帰結がどのように異なるかをDSGE(Dynamic Stochastic General Equilibrium)モデルを用いて検証する。 モチベーション 現在のマクロ経済政策分析において広く用いられているDSGEモデルを使用し、公共投資の資金調達の方法(増税、国内借入、対外借入)が、どのようにマクロ経済に影響を与えるかを調べる。マクロ動学モデルを使わなくとも、構造VAR等で公共投資ショックの効果を試みようとする研究も多い

        • 日米の労働生産性比較

          日本の労働生産性は他国と比較して低い。技術革新の更なる普及に力を入れるなどして生産性を向上させることが必要である。 モチベーション GDPの各国比較を行った論文が最近発表され、日本の労働者人口一人当たりGDPの伸びが他国と比較しても悪くないことが示された。しかし、実際本当にそうだったのか。本稿では、労働時間等も考慮した上で、労働生産性(労働1単位あたりの生産量)に焦点を当て、米国といったその他諸国と比べ、日本の位置はどこにあるのかを再考察するものである。 一人当たり/労

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          製造業牽引型の成長モデルはもう古い? ~東アジアの奇跡は繰り返されない~

          製造業を牽引役とする経済成長モデルは現在の途上国には当てはまらないだろう。理由はグローバル化、技術の進歩により、今日の製造業でのキャッチアップには膨大な資本と人的資本の蓄積が必要となるからである。よって、途上国の今後の成長はサービス分野の生産性向上にかかっている部分が大きい。 モチベーション日本をはじめとして東アジアの多くの国は製造業が経済成長を牽引し、そのスピードと持続期間は、それを奇跡と呼ぶまでに著しいものがあった(もちろん成長モデルは簡単に一般化できないものの)。未だ

          製造業牽引型の成長モデルはもう古い? ~東アジアの奇跡は繰り返されない~

          日本の財政政策は景気を安定化させているか

          財政政策には、景気安定化、成長促進、公平性の確保、気候変動への緩和と適応など、様々な目的があるが、本稿ではスコープを絞り込むため、財政政策による景気安定化の役割にのみ焦点を当てる。 概要 日本の財政政策は、景気変動とは逆に反応するカウンターシクリカル(景気が悪化した時に積極的財政出動を行う)であり、これは財政政策の景気安定化の目的に合致している。国際的にみても、アウトプットギャップ(実際のGDPと潜在的GDPの差)と財政拡大との間に比較的相関関係がある様子。 日本の財政

          日本の財政政策は景気を安定化させているか

          自作GPT:公的債務分析ツール(全世界)

          2023年11月6日のOpenAI DevDayでベータ版が紹介された「My GPTs」を早速作ってみました。各国の公的債務を分析するためのGPT(Public Debt Analyst 1.0)[1]です。 まだ荒削りですが、分析の叩き台として使うにはありなのかなと思っています。私の理解では、現段階ではChatGPTプラス会員のみアクセス可能になっているかと思いますが、分析ツールに興味ある方用にエクセルベースの公的債務分析ツールも添付します。 モチベーション·

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          混乱後の市場は誰のものか

          全体として企業の資金繰りは悪化新型コロナウイルスによる流動性不足は著しい。ダイアナ妃が愛用したライフスタイル関連の会社英ローラ・アシュレイは経営破綻。米ボーイング製造会社は138億ドルをクレジットラインで引き出し、流動性を確保した。ソフトバンクは4.5兆円の資産売却と現金化を決定した。また株価が急落する中で、自社株買いで株主への利益還元を確保する動きも見られる。営業停止や需要縮小から企業は一時的にキャッシュ獲得手段を欠いており、債券発行などで対処しようとしても、リスクフリーレ

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          政府による現金給付は得策か~ヘリコプターマネーの是非~

          現金給付は消費を刺激するか現在コロナウィルスの対応から、アメリカのトランプ大統領は2020年だけで8000億ドル(約84兆円)規模の大型減税を提案した(同大統領の中間選挙前のばら撒きの可能性も否定できないが)。日本でも、新型コロナ経済対策に30兆円超を検討しており現金支給も視野に入れている。果たしてこれは消費を刺激し、デフレを食い止めることができるのだろうか。 普通ライフサイクルモデルでは、将来の消費をならすため、一時的な所得増加は一期のみの消費に使われず、平均化される。消費

          政府による現金給付は得策か~ヘリコプターマネーの是非~

          コロナと債務、そしてMMT

          コロナ対策を目的とした政府支出大幅拡大への一般的な評価現在コロナ対策として、無尽蔵な財政出動が多くの国で行われている。アメリカではGDP 15%程度の政府支出の増加を招き、世界恐慌のときのレベルまで近づきつつある。ファイナンス先の多くは中銀である(コロナの影響を除外し、先進国全体の債務残高でみたときの中銀国債保有率は約30%程度でその他は自国居住者、非居住者で30%程度)。中銀が通貨を発行し、国債を購入している。これによって低金利が実現しているため、現在の借り入れが増える事は

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          note、始めました。

          はじめまして。経済が好きなので、利用してから変わるかもしれませんが、今のところ、同分野多めの投稿になる予定です。少しでも面白い・役にたつ と感じていただけるような内容にできればと思っております。

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