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圧倒的にハマるブランディングの作り方

カルトブランディング。カルトというと新興宗教のイメージがつきまとうが、語源は「カルチャー」に通じると言われるとグッとブランディングとの相性がよくなる。。企業文化に対する圧倒的な支持。多様性、ニーズの細分化、多くの人から共通の支持を得ることが難しい世の中。だからこそ、ユーザーの心を強く掴むブランディングが重要なのだ。

こんな読後感を持ったのが本書「カルトブランディングー顧客を熱狂させる技法」。著者の田中森士さんとはYahoo!コンテンツマーケティング時代に知り合った。熊本出身で産経新聞の記者を経て、地元熊本でコンテンツマーケティングの専門代理店クマベイスを立ち上げて活躍される方だ。熊本のオフィスにも1度お邪魔させてもらったことがある。こぢんまりしたオフィスだが、地元熊本はもちろん、福岡、東京、そして海外のマーケティングも手掛けるスーパーエージェンシー。

そんな田中さんが久々上京するとの連絡もらい、お会いすることに。本書のことはFacebookの投稿で知り興味を持っていた。お会いしてすぐ

「ぜひ読んでAmazonのレビューに投稿して欲しい。好き勝手書いていいので」

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そんな嬉しい言葉とともに献本いただいた。これで目的は達せられたと嬉しそうにされている。こういうところに田中さんの人間性が垣間見える。私もコンテンツマーケティングの主戦場を離れてから2年半が経過しているが、コロナ禍の前はコンテンツマーケティングのセミナーやイベントに通うコンテンツマーケティングのカルトユーザーだ。早速仕事の合間に読み進めた。あっという間の時間だった。

カルトブランディングは身近にある

カルトブランディングとは企業文化に共感する熱狂的なファンを創り出す持続的な活動だと解釈できた。企業文化はイデオロギーと広義に捉え、その活動のカギはコミュニティーの形成だという軸で企業のケーススタディを交えながら具体的に解説している。もちろん、実際にブランドづくりのプロセスのヒントもたくさん書かれている。

私の身近なところで言えば水曜どうでしょうや次郎系ラーメンが身近なカルトブランディングの事例として浮かんだ。もちろん、作り手が仕掛ける部分もあるが、その多くはユーザー同士のコミュニティーの形成によりその持続性が担保される仕掛けだ。オフ会のようなわかりやすいコミュニティーだけではない。掲示板のような不特定多数のコミュニティーであったり、車の後ろにステッカーを貼っていることもある種のコミュニティーともいえる。海外ではタトゥーでその愛を表現するユーザーもいる。不退転の決意だ。従来のコミュニティーマーケティングよりも熱狂的なのがカルトブランディングの特色だ。

ユーザーの能動的なブランド寄与を生み出すことの重要性

カルトブランディングのノウハウ自体は本書を読んでいただきたいが、カルトブランディングがどういったユーザーを生み出しているかは前述の通りだ。マーケティングにかかわる人間にとって、この共創とも呼べる能動的かつポジティブなユーザー参加をどう起こすことができるのか?それが本書のメインテーマだ。技法と銘打ってはいるものの、運用型広告の技法とは違い、即KPIにヒットするものではない。この原則はコンテンツマーケティングを源流とする考え方に共通する。その代わり、1度築き上げた関係値は自ら壊さない限り永遠と続いていくのがこのカルトブランディングの最大の強みだ。中長期的な関係構築に腹を括れるか?いや、腹を括るというと嫌々やっているようだが、そうではない。実際カルトブランディングに成功している企業はそのプロダクト愛をイデオロギーに変え、自然体で成し遂げている。自ら熱狂し、それを伝えている。

身近に感じている水曜どうでしょうなんてレギュラー放送は今から20年近く前、2002年に終了している。新作の誕生なんてオリンピックよりも長いスパンだったりする。それでも10代20代のファンも多い。作り手はそんな掘り起こしを積極的にやっていない。親から子へ。すべてユーザー同士で完結している。出したDVDは必ずランキング1位、HTBはリーマンショック時代、TVCMの出稿量が減る中、DVDの爆売れにより北海道で唯一勝ち組となったテレビ局だ。

この強さをどう創り出すか?多様性、オンリーワンの時代。呼び方は様々あれどカルトブランディングの技法は企業だけでなく我々ユーザーの楽しみを増やす活動でもある。企業とともにブランドを楽しむ。ワクワクするアプローチじゃないか!そんな想いが溢れた一冊だった。


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