小綴 仄

短い詩を書きます。最近はとてもゆっくりペースですが、書きます。

小綴 仄

短い詩を書きます。最近はとてもゆっくりペースですが、書きます。

マガジン

  • 詩集 あいうえお

    タイトルあいうえお順に詩を作っていきます。

  • 詩以外、すきなものを集めるところ

    ブログみたいな感じです。

  • 詩集 ガール

    過去に書いたものを整理中です。 だいたい20代までの詩。

最近の記事

木綿豆腐

豆腐を手でつぶす こんな姿になっても 豆腐は豆腐で 豆腐ハンバーグは ちゃんと豆腐でできている 渾然一体のそれはもう別ものでも 豆として生まれ 木綿豆腐として世に出たことは 私の身体になる

    • メロンソーダ

      わかんないよね。 メロンソーダにあかいさくらんぼの染み 水滴でふよふよのコースターと みじん切りのストローの袋 喫茶店には何で男の子のマンガしかないの 午前が過ぎてゆく うつろな午後がくるだけなのに 幹線道路沿いの窓から見える車は みんなきらきらして見える あの頃からずっと遠くに行きたくて 今はない喫茶店に帰りたい

      • むらさき色のスープ

        午後のテレビをつけたまま うたたねから目覚めると ちょうど私の口にスープが運ばれているところだった 輝くむらさき色のスープ スプーンの上で澱がさざめく まだ人体で試したことのない材料でできてる あつあつのきらきらの 喉を伝う熱の味

        • 満ち潮

          海藻だらけの砂浜で、 満ち潮を待つ 太陽は気づかれない速さで 影の位置を変え 私は風に吹かれ たしかな速さで 疲れていく

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        • 詩集 あいうえお
          33本
        • 詩以外、すきなものを集めるところ
          4本
        • 詩集 ガール
          16本

        記事

          回り道

          木蓮が咲いているよ レンゲソウを摘んだ田んぼには 立派なお宅が建ったね 回り道のあいだ手をつなぐ つくしを取った話をする 何回も 何回も 振り返り笑う 何回も 何回も この春に帰ってこれたと 思ってしまうから

          午後の日差しにきらきらと 揺れて、 PM12:00のまま動かないラジカセ 毛布から裸足の爪先 閉じ込められていると、感じていた たった5年の人生に。

          辺鄙なところ

          昔々 あなたのおばあさんの そのまたおばあさんが住んでいた おおかみのいる森のむこう 今はもうおおかみもいない 小さな生き物のかさこそ動く音だけが聞こえる そんなところ 私はそこにいる だれにも気に留められない 小さな生き物の一つに なって 森のひとかけらに なって 身体の重さと軽さを 一辺に手放して

          辺鄙なところ

          深爪

          1ミリ足らずの指先が お前は弱い人間だと知らせる ちょっとした不注意で 守られなくなった 爪の先は 洋服の繊維に痛めつけられ クリップに傷つけられ 二日もすれば 忘れられる

          遠くの本屋さん

          一人でどこかへ行こうとするとき、主な目的地は本屋さんであることが多い。 今回はお休みの2日前くらいに突然思い立って、恵那市にある庭文庫さんへ行ってきた。 車がないと無理かなと思っていたけど、調べてみると何とか公共交通機関で行けそう。 5月の晴れた日に有休が取れてるなんて、この先何度あるか分からないし、行くしかないかも。 暑いかもしれないから、濡らすとひんやりするタオルを100円ショップで買ったり、携帯用の扇風機を充電したり。本ももちろん買いたいので、荷物は重くなり過ぎないよ

          遠くの本屋さん

          光る人

          暗くなるのが早くなって 冬がやってくるね 窓の向こう 車に気をつけて 駆け出す ちょうちょ結びを直されて むっとする あなたの光が 瞼を巡る

          うるさいくらいの血流が いつか海になると 夢見る胚は まだ眠る力がない こだまする声は まだよろこびもかなしみも 乗せていない 名前のない胚を すこし揺らす がたがた ごとん たらり ぷつり 生きているだけで 絶え間なく鳴る音

          のこり

          明日になったらね 朝ご飯もちゃんと食べて お洗濯をして 人となりを整えて 薄く積もった無気力を すこし掃除機で吸って そうして はがしたままの掛け布団の 間に挟まっていたひと欠けの 雑音を ビニール袋に詰めて 詩とラベルを貼って 「どうぞご自由に」と 書かれた箱に入れて 次の日のこったものと また続きの世界を暮らすのだ

          いつか今日を思い出すための

          温泉にいます。 夏休みに浜松に行きそびれ、 9月の連休に犬山に行きそびれ、 ようやく岐阜の温泉にいます。 今はひとしきり大浴場を満喫して、お部屋で晩ご飯を待ってるところ。 読みかけの本を3冊も持ってきて、ゆるゆる眠気を感じながら、読んでいます。 昼間は金華山に行ってきました。最近、岸田奈美さんが幡野広志さんに写真の撮り方を教わったnoteを読んだので、とにかく見たものをiPhoneで撮りまくってみました。なかなかたのしい写真が撮れたので、よかったら見てください。 夫の

          いつか今日を思い出すための

          また言い訳をしよう。

          書ける。書き上がることが、うれしくてすこし泣けてくる。 かたちの定まらないもやもやを少しだけ、固めて並べることができるということに安心する。 固まっていないもやもやが、とても大切なものだということも、 何もかも固めればいいという訳ではないということも、わかってる。 でも、私には言葉という固まりが大切で、重くて、苦しい。 読むことと書くことの違いに愕然とする。 また言い訳をしよう。こんなの書いちゃったよって。面倒な人間だよって。 昔から好きな人にはあまり好かれないことの

          また言い訳をしよう。

          ねむりねずみ

          ねむりねずみは喋り続ける 喋りながらねむっている 頭の中のいちばん真ん中の 馬の手綱をにぎったまま 私の考えもしない何かを うろんなねずみが喋る 喋る 今の言葉はねむりねずみの 私じゃなくて 寝言 寝言

          ねむりねずみ

          ぬかるみ

          私はぬかるみになりたい ぬかるみとしての矜持 ぬかるみとしての責任を持って 人様の靴を泥まみれにし 心の隙間をつつき その足首から決して手を離さず いつか底無し沼と呼ばれたい

          ぬかるみ