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遠くの本屋さん

一人でどこかへ行こうとするとき、主な目的地は本屋さんであることが多い。
今回はお休みの2日前くらいに突然思い立って、恵那市にある庭文庫さんへ行ってきた。

車がないと無理かなと思っていたけど、調べてみると何とか公共交通機関で行けそう。
5月の晴れた日に有休が取れてるなんて、この先何度あるか分からないし、行くしかないかも。
暑いかもしれないから、濡らすとひんやりするタオルを100円ショップで買ったり、携帯用の扇風機を充電したり。本ももちろん買いたいので、荷物は重くなり過ぎないように。
たぶんそんなに長く滞在できないけど、楽しみすぎてめちゃめちゃいろいろ想定して準備した。

電車に乗って約1時間。
旅のお供は「じゃむパンの日」にした。通勤時間帯を少し過ぎて電車は空いていたけど、ちょっと笑いそうになり、マスクしてきてよかったと思う。
駅の近くの食堂でかっぱの置物と向かい合わせでオムライスを食べた。おいしすぎて、ちょっと衝撃を受ける。おいしいものを食べると、どうも夫のことを思い出してしまう。いつか一緒に食べて、ぜひ私が発見したものとして自慢したい。

開店の時間より早く着いてしまうけど、本数が少ないのでバスに乗る。
途中で乗ってきたおばあちゃんは次のバス停で乗ってきたおばあちゃんとナチュラルに天気の話だけして別々に降りて行った。
バスは緊張する。お金の払い方、ちゃんと自分の降りる停留所の手前でボタンを押すこと。

しっかりクリアしてバスを降りる。
全然人がいないので、ここぞとばかりに独り言が増える。「やった。来れたじゃん。」
少し歩くとバス停と同じ「笠置峡」という所があって、少し休憩できそうだな、というのはGoogleマップ先生が教えてくれていたので、とりあえずそこを目指す。
もちろん100円ショップで買ったピクニックシートも持参している。
バス停は中学校の前で、山側にはきちんとした歩道になっていて、少し行くと道の反対側に川の方に降りられる所があった。
こんな所で過ごせたら素敵だなあ想像してた場所がそのままあった。
バイクで来た雰囲気の男性が一人だけいた。私と違って、ゆったりした折りたたみの椅子を持ってきていた。いいな椅子。電車バス勢にはちょっと難しいけど、うらやましい。
私の方はピクニックシートを使わなかった。私が座る用みたいなまあるい岩がちょうど木陰にあるのを見つけて、そこで開店までの1時間弱を過ごした。
本を読んだり、読むのをやめたりした。川の音と鳥の声がずっとしていた。
鳥ってこんなに喋るのか。ちゃぷんと鳴るたびに川面を探したけど、お魚は見えなかった。途中で気づいたけど、お魚じゃなくて岩に波が当たってただけっぽかった。
外だと音楽を聴きながら本を読むことが多いけど、イヤホンは使わなかった。
私は人の音を避けたかったんだなと思った。人以外の音、おもしろいな。
すごく良い時間だったけど、ちょっとお尻が痛くなってきたところで、庭文庫さんに出発。

道路に上がったら、歩道はすぐに終わって、片足幅くらいの歩道しかなくなった。
さすがに日傘も怖くなって、さすのをやめた。時々通る車はすごく速く感じられた。
歩いている人はいなかったので、最終的にはぽそぽそ歌いながら歩いていた。

庭文庫さんは山の方に坂を少し登った所にあった。
初めての人と会うのはとても緊張する。そんなに暑かったわけじゃないけど、歩いて来たから、急に汗かいてきた。たぶんメールを返信してくださった店主さんがいらっしゃったけど、「こんにちは」しか言えなかった。上がらせてもらって本棚の間にいたら、汗も引いて少し落ち着いてきた。
落ち着いてきたら、読みたい本がすごくいろいろあってどうしようかと思った。またあの道のりを帰るので、そんなにたくさん買えないから2冊だけ買った。
1冊は大きな書店でも、セレクト書店でも見つけられなかった前田エマさんの小説。もうネットで買ってしまおうかと思っていたけど、ここで出会えてよかった。もう1冊は古書で蟲師の特別編を買った。何となく、ここにぴったりな感じがして。

お会計をして、バスの時間まで店内で待たせてもらった。畳とざぶとんのところで本の続きを読んでいたけど、少しうとうとしてしまった。
目が覚めたら、黄色いちょうちょが来ていた。縁に止まっていて、とてもおとなしかったので写真を撮らせてもらった。

アラームもかけていたけど、結構ギリギリの時間までいてしまった。お礼を言ってお暇しようと声をかけたら、ずっと流れていた音楽はレコードじゃなくて店主さんのギターだった。驚いて、とてもうれしかったのに一切リアクションできず。反省。
バスちゃんと乗れるかなという気持ちと、うれしさと、まだちょっとぼんやり夢だったのかなみたいな気持ちで来た道を歩いた。

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