見出し画像

妻がブレンドコーヒーの違いに気づくかどうかで遊ぶ

クリスマスですね。

陽キャでもないしパーティめいたことをしてきたわけでもなんでもないし特別に思い出があるわけでも無いしお金持ちでもないし友達が多いわけでも無いのだけれど、私はクリスマスが異様に好きだ。年間のすべてのイベントの中で最も好きと言っても過言ではないくらいに好きだ。

冬が完全に始まりきった12月末の寒さと、日の落ちるのが年間で最も早い時期のイルミネーションの賑やかさと、お祝いでもないのにスペシャルなメニューが出てくるダイニングが、どれもこれも特別で、ただそれだけでとても幸せな気持ちになれる。

私は日常の変化の延長線みたいなものでかなり幸せになってしまうので、それ以上のことを求めようとしない傾向がある。海外旅行にガンガン行くとか、見たことのないものを見てみたいとか、そういう欲求が薄い。見知った川の土手を歩いて日々植物の変化を楽しむとか、机の上の小物を少し可愛いものに変えたとか、今朝の寝癖は最高に面白かったとか、そういうので十分幸せなのである。


と言いつつもまあ、クリスマスの非日常感が好きなのは間違いなく、もはやダイニングでスペシャルなメニューを出すのは私自身なので、しっかりとはしゃいだ。

ストックしてあった高そうなワインのラインナップからどれを開けるかで楽しみにしながら目が覚め、所縁のあるレストランで注文したケーキを回収しつつ、商業ビルの地下でチキン半身と素敵な総菜とチーズと生ハムとバゲットを買って、ついでに無印良品で無香料のロウソクと台を買って帰宅して、家にある小さなクリスマスツリーを点灯して、買ってきたままでもいいのにわざわざ総菜をお皿に盛りつけて、実家の母がクリスマスだと言って送ってきた高そうなスパークリングワインを開けて、誰かからもらったシャンパングラスで酒を飲み、白ラベルで可愛いブルゴーニュの赤ワインを選び、二人でほとんど飲み干してしまった。


今朝も余韻が残っている。ケーキは食べきれていないし、チキン半身も多かった。少しずつ残っているので、きっと午後の適当な時間と夜の合間に食べるだろう。

余韻をそのままに、今日は新しいブレンドのコーヒーを開封した。近所で買っている焙煎屋のシーズンモノで、冬ブレンドが並んでいたのだ。そろそろ起きてくるだろう妻は、気づくだろうか。多分、気づかない。私はブレンドを伝えずにひっそり眺める。性格の悪い、スケールの小さいサンタクロースである。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?