【ショートショート】M男のダイエット
「もしもし。もう帰ってる? 今から俺も帰るから、夕飯、なんか買って帰ろうか?」
「じゃあ、ケンタッキーのオリジナルチキンセットをお願い」
「わかった。じゃあ後で」
ナオシは同棲しているケイコにかけた電話を切ると、心の中で(ヤッター!)と叫んだ。
少し太っているナオシは、いつもケイコにダイエットしろと言われている。でも今日はナオシが大好きなケンタッキーを許されたのである。
ナオシはケイコに頼まれたオリジナルチキンセットと自分のチキンフィレサンドセットをテイクアウトし、ケイコが待つマンションへ帰宅した。
ナオシはリビングのテーブルに買って来たものを出し広げ、ケイコと一緒に食べ始めた。ナオシが美味しそうにチキンフィレサンドを食べるのをケイコがずっと見つめていた。それを察知したナオシは、
「俺、間違って買って来たかな? オリジナルチキンセットって言ってなかったっけ?」
「うん。オリジナルチキンセットで合ってるよ」
「じゃあ何?」
「じゃあ何って。あんた、何食べてるの?」
「えっ? 何食べてるのって、チキンフィレサンドだよ」
「そうじゃないわよ。何で勝手に食べてるの?」
「勝手に? 俺はこれが好きだから」
「だから、なんでケンタッキーを勝手に食べてるの?」
「ケイコがケンタッキー買って来てって言ったじゃん!」
「言ったよ。ケンタッキーって。でもそれは私の分。あなたはケンタッキーはダメだよ。太るじゃん!」
「でも普通は一緒のを買って来るでしょう?」
「あなたわかってないわ。私の気持ちを」
「わかったよ。じゃあどうすればいいんだよ?」
「レタスだけ食べて」
「レタスって、このバーガーの中のレタス?」
「そうよ、それだけ。マヨネーズもダメよ」
「えーっ! それは勘弁してくれよ」
「食べてもいいよ。でも食べたら今晩は一人でソファで寝ること」
ナオシの顔が綻び徐々に笑顔になり、
「はい、レタスだけを食べさせていただきます」
と言って、レタスだけを食べた。
女王様の今晩のお許しが出たからだった。
(完)
ありがとうございます♪嬉しいです♪