見出し画像

中編からの続き。

この星の各人種には、地球の人間と同じく、目があり、各人種毎に特徴的な髪もあり、その容姿は個体毎に多様である。その点においては人間と同じと言える。

地球と同じく国の概念があることも確認されている。文明が発達するにつれて物資を巡るための争いはどうやら少なからず存在はしているようだ。それにこの星だけが唯一神から贔屓されているかのような恩恵を受けているわけではなさそうなことも分かった。
地球と同じく、この星の社会も、不条理で不完全だ。
これだけ協調性の高い生命体であっても、悲しいかな完全なる平等は未だ存在せず、議論は続いている様子だ。

現在の地球に目を移せば。
人間の歴史と文明は、明確な事実として、争いの歴史であると言っても過言ではない。この星の生命体同士の協調性につい違和感を覚えてしまうほど、協調性の裏には密かな狙いが潜んでいるものだ。時には争いそのものが目的となる。ふと、地球の外に目を向けると、当たり前だったそんな認識が急に空虚なものに思えてくる。

狙いや目的がないと、手を取り合うことすら憚られる。

そんな地球の"当たり前"がバカバカしく思えてくるほど、この星の人種間同士の争いの形跡は、地球の歴史と比べて、圧倒的に少ないことが分かった。
驚くべきほど。

この星のどの文献と照合してみても、争った記録よりも、協力して、種同士が混合することで、技術革新や文明の発展に大きく寄与している。発展のスピードも地球のそれをはるかに凌いでいる。
驚くべき協調性である。

居住地域に人種による趣向性は多少見られるものの、前述した通り文明の多様性は人種に帰属するものではなく、各地の独自性を協力して生み出している。母国語が違っていても、だ。
それは地球の人間にも決してできないことではない。

しかし本当に、この差は何なのか。

事実、地球に目を向けると、人間同士の争いは絶えることがない。ここまで生命体としての類似性を持っているのに。互いに文明を発達させようとしているにもかかわらず。
何よりも本質的に「他者と好んで争いたいわけではない」という思いは共通して持っているはずなのに。

研究に研究を重ねて。たった1つ。

たった1つだけ、

唯一地球人と全く違う性質があることが分かった。
この事実に気づくまで膨大な時間を要したことに自ら驚いた。
逆にここまで調べ尽くさないとその違いが浮かび上がってこなかったほど、単純すぎるこの差異に気付くことができなかった。

それは地球人からの”視点"と、
その地球人たる価値観がじゃまをしたために気づけなかったことを悔いるほどに単純だった。

たったこれだけの違いで、地球の人間は、人種間同士の、不毛な、文明の発達と平等性を、自ら阻害してき続けてきたわけだ。
この事実を発見した時、ようやく地球の人間の方にひとつ優位性を感じはしたものの。
この星の中に息づく人種間の協調性と、その多様さが生み出している"地球にはない価値”に、嫉妬すら覚えた。


この星の生命体は、肌の色を見分けることをしない。


なぜならその目に映る世界には、色が存在しないからだ。


完。


この記事が参加している募集

貴重なお時間を使ってお読み頂きありがとうございました。全て無料で書いています。フォロー、スキ、コメント(賛否どちらも)はすごく励みになります!でわまたふらりとお会いしましょう:)