申告漏れ記事のカラクリ

ソフトバンクグループが、400億円の申告漏れを指摘されたという記事が掲載されていた。「とんでもない」、「悪いことだ」と感じている人に、昔ぼくがある企業経営者に教えてもらった申告漏れの記事のカラクリを伝えたいと思う。

公表までの流れ

ある日、とある新聞の経済記事の担当記者が大手企業の広報担当に電話をかける。

「今年の国の税務調査で、申告漏れを指摘されたと聞きましたが詳細を教えてもらえますか」

電話を受けた真面目な広報担当が急いで財務担当に確認を取ったところ、事実であることが発覚する。

広報担当者は、すでに記者は情報をつかんでおり、隠しても追求が激しくなるだけと考え、取締役会に報告の上、当該事実を回答した。

タネも仕掛けもある電話

一見何の違和感もないやり取りのように思える。しかし、実はこの経済記事の担当記者、何の情報も掴んでいなかったのだ

例えば売上高が一兆円を超えるような大企業であれば、財務資料は膨大で、税金の計算も大変複雑なものになる。もちろん日本でもトップクラスの税理士法人に依頼をしているであろうが、基本的にはできるだけ(もちろん適法に)税金の支払額を少なくしたい法人側の意向で納税額をまとめる。一方の税務署側はできるだけ税金を大きく取りたい。

そのため、必ず売上高や利益の扱いにおいて、企業側と税務署で齟齬が生じ、その内容については、双方やり取りの上、基本的には当局側の主張に沿った形で修正がされることになる。法律を所管している税務署の法解釈を覆すことができることはほとんどないためだ。

つまり、税金申告の内容について一つも税務署から指摘されない大企業など一つもないと思う。だから、経済記者から電話がかかってきたら、みんな慌てて認めるしかないのだ。経済記者はそれを知ってわざと大企業に電話をしているのだ

しかし、これは税逃れではなく、あくまでも認識の相違であり、そもそも税務署の指摘によりそれを修正したのであれば何ら責められるものではないと思う。

実際、今回の記事の中でソフトバンクは「主なものは費用の計上時期の相違から生じたもので、修正申告済みです」と説明し、追徴課税も生じていない。

そもそも、記事にする必要のない記事なのだ。

応援する気はないが

ソフトバンクを応援する気はないし、今回の記事が同じかどうかはわからない。でも、こういった記事が出たときは、単なる企業と税務署の日常のやりとりを大袈裟に記事にしている場合も多いと知っておいた方がいい

今回、なぜソフトバンクを狙い撃ちにしたのかはわからない。単に、話題になる記事が欲しかっただけかもしれない。でも、弱っているものを見るとますます叩いてしまうのがメディアである。

今年大赤字となったソフトバンクをどうしても叩きたくなったのかなと疑ってしまった。

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