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Rie fu

たぶん人生で、一番長いあいだ好きな歌手。

りえ ふぅと読む。

出会いは「ガンダム」のエンディングソングだった。「I Wanna Go To A Place...」という曲。

伸びやかな歌声と、優しいまろやかな英語の発音。

"Is it really OK? It's never going to be''
(それは本当に大丈夫なの? 絶対そうならないのに)

という歌詞があって、この歌を聞いていた時の私の気持ちに、とても刺さった。

本当に大丈夫?

そうはならない。私はOKじゃない。

誰にも言えないことが悪いことのように思っていたけど、心の中では叫んでいたこと。

私はOKじゃない。

この曲のMVでは、Rie fuがブランコを漕いでうたっている。

とても自由で、伸びやかに。

殺伐とした毎日に、Rie fuの歌は癒しだった。

学校でも家でも話をする人がいなくて、体育の度に貧血で倒れて、保健室で寝るのが、本当に休憩時間だった。

ストレスの発散方法は、真夜中まで読書をすること。

読書のあとに、山ほどの宿題や課題や毎日ある小テストの勉強をしていた。から、今じゃ考えられないけど、夜中の3時4時なんて、普通に起きていた。

新聞配達のバイクの音を聞いて、布団に入る。睡眠時間は毎日2-3時間。

ぎりぎりで苦しかった。

OKにならない。私はOKじゃない。

Rie fuの歌は、私が欲しい自由の象徴のようだった。親元を離れ、イギリスの美術大学に通っていることも、そこで得られたと思われる異文化な歌の世界も。

「本なんか読むのやめなさい。

無駄なことをせずに勉強をして、さっさと寝なさい」

耳にタコができそうなくらい親には言われていたけど、誰とも口をきかず学校で孤立して過ごすのは、自由だったけど、とても孤独で辛かった。

オーラルコミュニケーション(英会話)の授業でペアも作れないし、体育の時間のペアも見つからない。

こっそりみんなが英会話の授業してる中で、机の影に隠れて座っていたら、教師は目ざとく見ていて、

"Miss.Mori, What did your partner tell you?''

と練習後には、毎回みんなの前で聞く。公開処刑のようだった。

(サボってんじゃないよ。英会話の練習のペアくらい作れ)

その教師の決めゼリフは、

"Keep standing!!''
(立ってなさい!)

毎度、他の生徒が発表するのを、教室の中でぽつんとひとり立って聞いていた。

たまたまペアになってくれる人ができて、やれやれと思っていた時もまた同じ質問。

答えることができたときの教師の顔は、意外というか、めちゃくちゃ悔しそうだった。舌打ちしそうだった。

私はその教師に嫌われていたんだと思う。

ペーパーテストのできは良かったから、私の弱点を見つけて、毎回いじるのが楽しかったに違いない。と、今でも思えて仕方がない。

Rie fuの歌は、自由だった。

当時は、まだまだ英語力がたりなくて、なにを歌っているのか分からなかったけど、その分からなさもよかった。

分からない歌、自分だけの歌。

トップチャートに入ることもないし、大ヒットになることもない歌手だけど、私はRie fuに救われて、生きていた。

Rie fuは今独立して個人で活動している。大きなレーベルを離れてからは、辛口な歌詞、皮肉な歌詞が増えた。優しさだけじゃなくて、物事の違う側面を彼女の視点でみつめ、うたう。

ありがとうと思って、あの時の苦しみや寂しさを忘れない。

忘れた方がいいのかなと思った時もあるけど、私は忘れないことにした。

私はその後、Rie fuの影響で英文科のある学校に通うことになる。

そんな理由で進路決めたの?

と言われたこともあるけど、そんな理由だろうと、なんだろうと、Rie fuに救われた気持ちも、苦しさもそのまま私の財産だと思っている。英文科を選んだことも、その後の人生も。

OKじゃなかった私に、OKじゃないって言っていいんだよ。と言ってあげたい。

Rie fuも独立してから変わったように、私も変わって、乗り越えていける。

最後に皮肉たっぷりの曲で。今日はおしまい。

Rie fu(Rié)「FAMOUS」

「有名になったら、会いに来てね」。(イギリスのプロモーション会社に言われた台詞らしい)。

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