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読書感想文 『火狩りの王』1

日向理恵子『火狩りの王』〈一〉春ノ火
を読み終わった。

感想文を書くのはどうも苦手。

なら、川柳はどうだ!
と思って作ってみた。

あの夜の 恩を抱えて 生きていく
月の鎌持ち かなたを連れて

怒涛の1巻目だった(4巻ある)。の割に、読むのが遅すぎるけど……。

何がなにやらよく分からない不気味さの中で、主人公たちは、仲間たちが次々死んでいく中、必死に生き抜こうとする。

主人公たちが生きている世界はどうやら、「火」が使えなくなった世界らしい。人間は近くで火が燃えると、体内で自然発火して、焼死する。

魔獣と呼ばれる人を襲う獣を、火狩りという狩人が狩り、その魔獣の血液がどういう仕組みでか、火の代わりになる。

その世界で異変が起きている。魔獣を恐れ、結界の中で小さく生きていた人間たち。その生活が何が理由か分からないけれども、壊れ始めている。

主人公の灯子は、村の結界の外で魔獣に襲われたところを、ある火狩りに命を救われる。

しかし火狩りは、灯子の代わりに命を落としてしまう。灯子は火狩りの鎌と狩り犬を火狩りの家族に返すべく、旅を始める。

死んだ誰かを思う時、誰かが殺される時、それは別の誰かが完璧に悪だと言える時もあれば、そうでない時もある。

誰かの命を救った。だけど、代わりに何かを失う。例えば、灯子を救った火狩り。例えば、村の守り神の龍。例えば、〈蜘蛛〉の家族。

痛みと痛みがぶつかり合って、憎しみが倍増する直前。

「なんで、あの人が死ななければならなかったのか」
「だけど、この人は守られた」

「良かった、命が助かった」
「だけど、火狩りは死んだ」

憎しみや悲しみがループして膨らんでいくバブル。そこに、つんと爪楊枝を刺すように、現実を示す公平な存在。

誰しもが、誰かの大切な人。

どちらかだけの悲しみ、どちらかだけの怒り、喜びだけを見ていては分からないもの。

それを、いつもどんなシーンでも、表し続ける作品だった。まだ1巻しか読めてないけど。

見たいものを見て、見たくないものはシャットアウト。そういう時代で、世の中だから、この本の凄みは、圧巻だった。死んでいい人、傷ついていい人なんていないのだ。

次の2巻が楽しみ。

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