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謎の扉?画廊やギャラリーってどんなところ?ーArtとTalk㉙ー

皆さまこんにちは、宇佐江です。
最近エッセイ記事が続いたので、久々の「ArtとTalk」になります。
はじめましての方もいらっしゃるかもしれませんので、あらためて。

「ArtとTalk」では、学生時代から(ブランクも経て)現在までずっと美術とともに生きてきた宇佐江が、美術に親しみを持っていただきたい想いで、一般的にあまり馴染みのないアートの話題をゆる~くしていく、トークです。

内容に関してはどこの施設や関係者にかかわるものでもなく、すべて宇佐江みつこ個人の経験による見解であることを、どうぞご了承の上お進みください。

さて今回は、いつもの「美術館」ではなく、街中などで見かける「画廊・ギャラリー」ってどんなところ?という謎を、来場者目線でお話します。

それでは、参りましょう~。



美術館とは何が違う?


まず美術館と、画廊やギャラリーとの違いについてのお話です。

わかりやすく見た目からいうと、美術館はたいていある程度大きな建物である場合が多く、展示室も広々しています。それに対し、画廊やギャラリーはもっとコンパクトで、街中のビルや、デパートや複合施設の中に含まれていることも。

ちなみに過去、私がいちばん入るのにドキドキしたギャラリーがマンションの一室です。インターフォンを鳴らし、スリッパに履き替えて鑑賞するギャラリーだったのですが、DM観ながら「ほんとにここだよね?!」と、何回も周辺をウロウロしました(笑)。

また、美術館はあくまで作品を「鑑賞」する場所。
それに対し、画廊やギャラリーの一番の目的は「作品の販売」。作家の作品を画廊やギャラリーの人が来場者に紹介し、気に入った作品を購入してもらう。それによって得られた収益を作家と分け合うことで成り立っています。
とはいえ、必ず購入する必要はもちろんないですし、ただ作品を観るためだけに訪れてもまったく問題ありません。

ちなみに、画廊やギャラリーには「企画」と「貸し」があり、ざっくり言うと前者はオーナーさんが作家に声をかけ展示を企画するもの、後者は作家側が賃料を払い、画廊やギャラリーのスペースを借りて展示するものになります。
ですので、貸しギャラリーの場合は、美大生など駆け出しの表現者や、趣味としてアートを楽しまれている方の発表の場としても使われます。そういう場合、プライスカードをつけないことも多いです。
私も大学時代2度グループ展を行いましたが、販売はしませんでした。

入るのがなんか怖い…。

しかしながら、ですよ。

「アートに興味があって、美術館に行くのも好き!」
という方でも、いきなり知らない画廊やギャラリーの扉を開けるのは、実際、ちょっと勇気が要るのではないでしょうか?

かくいう私も、実はまだまだ画廊・ギャラリーには詳しくありません。いつも行くところはたいてい決まっていますし、通りすがりに「あ、ここ面白そう。こんにちは~」と前情報なく入っていくことは、稀です。

画廊やギャラリーははっきり言ってピンキリ。
言葉は悪いですが、「最初から『観るだけ』の人にアピールするつもりはない」ところも正直あると思いますし、商売っ気の多いオーナーさんが、常連さんと赤裸々な業界話をしている場面に居合わせてしまうと、
(私は純粋に、作品が…観たいのですが…。)
と、狭い空間で気まずくなることもあります。

鑑賞に集中できる環境の美術館と違い、画廊やギャラリーはもっとオープンな雰囲気。むしろ、活発な会話や情報をやりとりする場であることがある意味その本質ともいえます。
だからこそ、「何だか疎外感…」と一見さんがコソコソしてしまう光景も画廊・ギャラリーではあるあるなのですが、私がよくお邪魔する某ギャラリーのオーナーさんは、電気メーターの検針員さんにも
「今日暑いでしょー!?ちょっと作品観ながら休んでいったらーっ?」
などと誘い込んでしまうような、そんな親しみやすいギャラリーもあります。


画廊やギャラリーには「出会い」がある。

では具体的に、美術館とは違うどんな魅力が画廊やギャラリーにはあるのか?
私のおすすめポイントを3つご紹介します。

①入場料がかからない
基本的に、画廊やギャラリーは入場無料です。美術館はたいてい有料ですので、「お金をかけずにアートを楽しみたいな~」という人には断然、画廊やギャラリーがおすすめ。
ただし、カフェギャラリーなどはワンオーダー制のところもありますので、DMなどの案内をよく読んで、出かけましょう。

②有名作家の、いつもと違った作品が楽しめる
美術館で展示されるような有名作家でも、小規模な画廊やギャラリーで展示をされる機会は意外と、あります。
美術館だと壁が大きいぶん大作が多いですが、画廊やギャラリーではお部屋に飾ることを想定したサイズが多く出品されていますので、ご自分の好きな作家さんのちょっと珍しい作品が見られるかも。
作品のサイズが小さければ、その分お値段も手頃になりますから、
「えっ!?もしかして、これなら私でも買えちゃう……!?」
という生涯の宝物との出会いがあるかもしれません。

また、それを期待するのは良くないですが、画廊やギャラリーではご本人が滞在されていることもあるので、タイミングがあえば憧れの作家さんのお姿を拝めるかもしれません。
でもあまり、興奮して距離感を縮め過ぎないよう、ご迷惑のないように気をつけましょう。

③まだ一般的に知られていない若手作家を知れる
余程並外れた才能の作家でない限り、展示デビューがいきなり美術館(※市民ギャラリーを除く)などということはあり得ません。
どんな作家でも、まずは地元や、美大生ならその街の画廊やギャラリーなどから発表をスタートし、徐々に展示範囲を広げて各地で展示をするようになる流れが一般的です。

ひとつの展覧会に際し、それなりに開催理由と具体的説明が必要な美術館とは異なり、画廊やギャラリーはもっとフットワーク軽く、新しい表現や作家をオーナーの意志でどんどん紹介できます。

まだ世間に知られていない才能を画廊やギャラリーで見つけ、ひそかに応援し続けて、いずれ大きな美術館で展示されるまでの人気作家になっていくかも……!
画廊やギャラリーには、そんな出会いの可能性がたくさん眠っているのです。


実際に行くと、どんな感じ?

ここまで読んで、「ちょっと画廊やギャラリーに行ってみたいかも」と思ってくださった方へ、最後に、どのように展示を見つけて、現地ではどう過ごすかのイメージを簡単にご案内します。

まず、行きたい展示を探す方法としてSNSはもちろんですが、やっぱり「DM」が未だに王道です。美術館や画材屋さんに行くと、その近場の画廊やギャラリーで開催される個展またはグループ展のDMがズラリと置いてあります。
作品の画像を見て決めるのもいいですが、
「あれ、こっちもこっちも、同じ画廊(またはギャラリー)だな」
というように、よく名前を見かける画廊やギャラリーならば、空白期間なく展示が開催されている=活発に活動していることになるので、作家に人気がある、信頼されている場所である可能性が高く、一見さんでも優しく迎えてくれるでしょう。
あと、新聞をとっている方なら、市民版ページに現在開催中の展示が紹介されることが多いですよ。

ではいざ、到着したら。
画廊やギャラリーはたまに無人(奥の部屋で待機されている)で気後れすることもありますが、「こんにちは~」と声をかけながら入っていけば、失礼にはなりません。作家かスタッフさんが出て来てくれたら、「観ていいですか?」と尋ねれば「どうぞ」とニコッとしてくれるはず。

美術館同様、画廊やギャラリーの作品も基本、手を触れてはいけません。写真撮影も無断でするのはNG。希望する場合は、必ずスタッフさんに尋ねましょう。
もし、「作家さんのお知り合いですか?」と尋ねられても
(やばい、関係者じゃないと入れない?)
と焦らず、
「いえ、DMが素敵だったので来ちゃいました」
と素直に答えたら、きっと喜んでくれると思います。

本来は、知り合いじゃない方に観てもらう方が作家も嬉しいのです。

そして、無理に長居する必要はないので、鑑賞に満足したら自分のタイミングで「ありがとうございました」と、服屋を出る時みたいに立ち去ればOK。

ちなみに、入り口あたりに置いてある芳名帳。
展示を訪れた方が名前を書くためのものです。住所まで書けば、次回その作家さんがまた展示をされる際にお知らせが届くかもしれませんが、個人情報なので、心配なら名前や苗字だけでも大丈夫。
作家は、会場を訪れるたび芳名帳を見て「ああ、色んな人が観に来てくれたんだなあ」とか、「今日はお客さん少なかったんだな…」と落ち込んだりもするので、観ましたよという証と応援の気持ちで、良かったら記名してあげてください。


時間的にも、美術館に行くより手軽な画廊やギャラリー。

「待ち合わせまで少し時間が余るな、どこか近くのギャラリーでも覗いてこっかな?」

そんな素敵な時間の過ごし方にも、ぜひおすすめです。





今週もお読みいただきありがとうございました。
私のまわりは駆け出しの作家さんがたくさんいますし、中々集客にも苦労されていたりするので、もっと気軽に画廊やギャラリーを訪れる人が増えたらいいなあと思い記事にしてみました。
でも、本文にも書きましたが世の中には本当に色んな画廊・ギャラリーがありますので、入った瞬間、
「ん?」
と怪しい雰囲気を感じたら迷わず速攻立ち去りましょうね!!!

こんなこと、わざわざ言いたくはないですし、たいていは安全で親切なところですけれど……。

◆次回予告◆
『美大時代の日記帳⑰』夏キャンの話。

それではまた、次の月曜に。


*クセ強画廊オーナー&初めてギャラリーで、絵を購入したときのお話。↓

*宇佐江みつこの紹介するアートのワールド。その他のお話はこちら↓


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