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文庫版「三体(Ⅰ)」 ―読書感想文 2

前回のこと

** 前回の投稿はこちらからどうぞ

noteへの初投稿として、最近読んだ小説のなかで感銘を受けた文庫版「三体(Ⅰ)」について読書感想文を書きました。
あらためてnoteに書いてみると「あれ?あの人物はどんな役割(/用語/イベント)で登場したんだっけ?」と記憶をたどることになっていいですね!
(老後の趣味を見つけたような気がします)

今回のお話


エンタメ小説としての「三体(Ⅰ)」

(文庫本の背面紹介文に「エンタメ小説の最高峰」とあったので引用してみましたが、三体ってエンタメ小説のジャンルなんでしょうか・・・。確かに「本格SF」や「重厚な異星人侵略もの」とかでは人気が出ないのかもしれないですが・・・)


小説「三体」はSF小説でありながら、登場する人物が魅力的なところも良い部分です。

ただ・・・登場人物が中国名の方が多いので、頭の中でストーリーと人物を紐づけるのは苦労しました。同じように苦労した方は多いのでは?
まあ、文庫版の場合、登場人物の「人物表」が付きますし、各見開きで登場する人物名にはルビが振っているので、突っかかりながらも読むことができました。

(日本語の音読みでもいい気がするのですが、やっぱり雰囲気的に中国語で読みたいですよね)

主人公 葉文潔イエ・ウェンジエの絶望

「三体」第一部の主人公である葉文潔イエ・ウェンジエが、中国の文化大革命による実父の惨殺を経て、その後の「紅岸基地」での迫害的扱い、”外世界”での冷戦、名誉回復での掌返し、父を殺害した紅衛兵との邂逅を通じて、人類に対する絶望をどん底まで深めていく様は、その後三体世界へ救いを求める行動とそれに付随する冷酷な行動への納得感を読者に与えることになります。
それは、楊衛寧ヤン・ウェイニンとの結婚や、娘 楊冬ヤン・ドンの誕生(その後の死)、斉家屯さいかむらでの村民との触れ合いを経ても、何も変わることがない「決意」となっているのでした。

この絶望の過程を丁寧に描いているところも多くのSFにない特徴かなっと思います。どうしてもSF小説はその技術や世界観に引きづられて人物描写が少ない著作が多いので、そういう意味で新鮮でした。

VRゲーム「三体」

地球三体運動(ETO)のメンバー勧誘を目的に三体世界の「3つの太陽」による恒紀・乱紀をシミュレートしたVRゲームが登場します。

正直に言うと、パートが長かった割に個人的にはあまりピンときてない部分です。この小説のもとになっている「三体問題」をベースにした三体世界の過酷さを、人類史の偉人を登場させることでわかりやすく説明してはいるのですが、このゲームとETOの理念の繋がりがイマイチ頭のなかで結合せず・・・
わたしはETOに加入することはできないようです!

まあ、ETOの主要派閥である「降臨派」は人類文明を滅ぼすことを理想にしているので、三体世界の過酷さを生き抜いた三体人の無慈悲な「金属のごとき三体精神」に納得性をもたせ、その後の人類文明終焉のイメージを強固にする目的があったのかなっと考えることにしています。

** 「三体問題」についてはGIGAZINEの記事がわかりやすかったです。

警察官 史強シー・チアン (通称:大史ダーシー

「三体」を読んだ方なら、みんな大好き大史ダーシーです。
過去〜現在にわたって絶望的な状況のなかで展開するこの小説において、この史強シー・チアンはとても異質な人物として役割を発揮します。

”7連勤のなかの栄養ドリンク”、”連敗チームのムードメーカー”(あまり例えが上手くないっすね・・・)のような輝きを放つ好漢として描かれています。

地球人を虫けら扱いする三体人は、どうやら、ひとつの事実を忘れちまっているらしい。
すなわち、虫けらはいままで一度も敗北したことがないって事実をな

この最終盤の言葉によって救われたのは、絶望に打ちひしがれていた科学者 ワンミャオ(ワンは氵に王)と丁儀ディン・イーだけではなかったと思います!


感想文まとめ

文章をまとめる力がなく、2回に分けて感想を書いた「三体(Ⅰ)」ですが、これまで自分が読んだSF小説のなかでも、その背景となっている技術要素、納得性かつ魅力のある人物像など大変に優れた著作でした。
3部全てになるとだいぶ長編の部類に入る小説ですが、少なくとも現在文庫本として読了した第1部と続く第2部「暗黒森林」は読む手が止まらずガンガン進めることができました。
SF初心者でも十分に楽しめる作品だと思いますので、未読の方はぜひ手にとってはいかがでしょうか。

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