見出し画像

文庫版「三体(Ⅰ)」 ―読書感想文

応答するな!
応答するな!!
応答するな!!!

「三体」 第三部 人類の落日  劉慈欣

中国SFの隆盛が伝えられて久しいですが、中でも傑作と名高いのがこの「三体」だと思います。っと言いますか、もはや「中国SF」として括ってしまうのも勿体ないっ!
2024年6月現在、文庫版としては「三体Ⅱ 暗黒森林」までが発行されています(読了済みです)が、まずは物語の始まりになる「三体」について感想を残したいと思います。

読了後の第一感

久しぶりに「ザ・SF」を読んだな〜という感じです!
10代で初めてグレッグ・イーガンの「ディアスポラ」や「順列都市」を読んだ時のような、「???」と「!!!」が混じったような、これまで使ってなかった脳領域を刺激されたような、そんな感想です。


どんな話?

(まだ、最終巻の「三体Ⅲ 死神永生」を読んでないので、全体感を捉えきれてなかったら申し訳ないです)
物語は1967年、文化大革命下の中国から始まります。
「三体」の主人公格である葉文潔イエ・ウェンジェは、文化大革命の最中、大学教授であった父親を「反動的学術権威」として紅衛兵に殺害されます。
その後、大学で天文物理学を専攻していた葉文潔イエ・ウェンジェは、宇宙からの電波信号を探知し、地球外知的生命体の存在を調査する目的で設立された極秘の科学計画「紅岸基地」に半ば強制的に従事することになります。

文化大革命における狂乱とその後沈黙により人類への絶望を深めた葉文潔イエ・ウェンジェはこの「紅岸基地」のプロジェクトにおいて太陽の”エネルギー鏡面”を研究し太陽が強力な電波増幅器になり得ることを発見します。
物語は、この特性を利用して、主人公 葉文潔イエ・ウェンジェがその絶望を全宇宙に向かって送信するところから動き出します・・・

地球文明が宇宙に向かってはじめて発した、だれかが聞きとることのできる叫び声は、太陽から光速で宇宙空間へと広がりはじめていた。
恒星によって増幅された電波は、潮が満ちるように進みつづけ、すでに木星軌道を超えていた。

ここまでの所感

全3部となる三体の第1部は、文化大革命の混乱と絶望、三体世界の苦難、三体世界とのコンタクト(『おまえたちは虫けらだ』)をベースに、SF的な理論・技術をうまく組み合わせた”本格SF”の風格を醸し出しています。

冒頭にグレッグ・イーガンを挙げましたが、イーガンに限らず、SF的な刺激を持つ作品は、現代の物理理論を”それっぽく”かつ”違和感なく”発展させて、物語の核とうまく整合させていると感じます。
(このバランスが悪いと、「???」が多すぎて「虫けら」並の頭が悲鳴をあげたり、逆にSFでもなんでもないじゃん!みたいな感じを受けてしまいます。)

この「三体」もまさに、太陽の”エネルギー鏡面”や、智子(ソフォン)の11次元展開と”量子もつれ”による通信、粒子加速実験の阻害による人類の科学的ブレークスルーの妨害・・・などなどのSF技術と、それらが物語の目的やシナリオに上手く活用されている本格SFだと感嘆させられます。


・・・なかなかまとめきれなかったので、また次回!
ここまでお読みくださりありがとうございました。

この記事が参加している募集

#読書感想文

190,781件

#SF小説が好き

3,169件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?