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日本庭園の側にいた青年

2023/11/5〜2023/11/6

コンヤ3日目。
宿の相部屋で一緒したパキスタン人男性からお菓子を頂く。

バクラヴァ
オスマン帝国発祥、現在のトルコでも伝統の焼菓子

フィロと呼ばれる生地に
ピスタチオやナッツを挟んで焼き上げ
濃いシロップをかける

高価なので一つだけ…


目的は昨夜で達成したので、この日は夜まで宿でゆっくり。
写真の整理や各方々との連絡、今後の予定を練る時間に充てる。

そして街に明かりが灯る時分を目掛け外へ。

カルチャーパーク
ISLAK BURGER
濡れバーガーとも訳される
トルコの代表的B級グルメ

といってもビショビショではなく
しっとりとバンズにトマトソースが染み込んでいる
中身はキョフテと呼ばれるハンバーグ

美味い
が、普通のハンバーガーでも良い気がする
20TL(約105円)


アラディン・モスク
街の中心部にある主要な礼拝所

コンヤは国内でも保守的な街として知られ
その為、モスクが数多く建てられている



軽めの夜散歩を楽しみ、翌朝。

観光地を検索していると
「Kyoto Japanese Park」なる場所を発見。
何やら京都とコンヤは姉妹都市らしく、その友好の証として日本庭園が造られたそうだ。


バスで片道1時間弱。
遠足気分で行ってみることに。

やはりクレジットカードも現金も使えず…
「しょうがないな…」
と無料で乗せてもらう

すみません、わかってましたすみません





無事に無◯乗車で到着



最寄りのバス停から徒歩数分。

いびつな「庭」の文字を見て不意に和む


思っていた以上に本格的な造り。
もちろん”京都の日本庭園そのもの”とはいかないが、それを感じるには十分だ。

奥に見える塔がカフェになっている
せっかくなので紅茶で一息

メニューはトルコ料理が中心
市民の憩いの場になっているようだ
これが入園無料だなんて素晴らしい

何よりトルコの方々から
日本への好意が感じられて嬉しかった


バス停でパンを食べていると
野良猫が近づいてきた
じっと欲しそうな顔をしている

なので、少し千切って目の前に置く


要らないんかい…!



せっかくなので周辺を散策。


この辺りは街の中心部から相当離れている事もあり、とても静かだ。
まさに閑静な住宅街。観光客も、ましてや日本人など全く見かけない。

だからなのか、商店で水を買うにも写真を誘われ、外を歩いているだけでも握手を求められた。

そしてまた、背後から声を掛けられる。

「§℉‰℃%!」

トルコ語なので聞き取れないが、呼ばれた事に気付き振り向くと、そこには若い青年が立っていた。

ほとんど英語が話せない彼だったが、それでも少し強引に

「カモンッ、マイホーム、カモンッ!」


……。
出会って1分足らずで「俺の家に来い」と。
もちろん警戒はする。が、冷静に状況を整理すると。

辺りは見晴らしが良く、駆け込む店もある。
そしてモスクのすぐ側だ。彼がムスリムなら尚更ここで悪さはしないはず。
脅し、暴力的な様子も感じられない。
仮に騙そうにも、その拙い英語では難しいだろう。

何よりその青年の一生懸命な様子は、今まで見てきた詐欺師の“不自然な笑顔と馴れ馴れしさ”からは程遠かったので、とりあえず付いて行くことにした。


すぐに「俺の家」と言うアパートに到着。
入口の門には電子ロックが掛けられているが、暗証番号は押さない。
曰く「壊れている」と。

彼は小指の爪ほどの小さな石を広い、それを2階の窓にコツンとぶつけた。
すると部屋から、弟なのだろうか、小学生くらいの子が降りてきて内側から門を開ける。

「ウェイト、ワンミニット」

そう言って私を置き、階段を駆け上る青年。
やはり悪さを働く気はなさそうだ。
もしそのつもりなら、こんな逃げる隙は与えない。
むしろ中に連れ込もうとするだろう。

黙って待つこと数分、彼はスマートフォンと袋に入った果物を持って来た。
洋梨と…見たことの無いドライフルーツ。
シルバーベリーというらしい。

「これは見たことがありますか?」

「いや、このドライフルーツは日本には無いと思います」

スマートフォンで翻訳した文字での会話。
それを確認すると、彼は少し喜んだ顔で私に果物をくれた。

「あなたは何故、コンヤのこの地域に来たのですか?」

「私は京都の公園が見たくて来ました」


なるほど、と嬉しそうな青年。

「どこから来ましたか?」
「どんな方法で帰りますか?」

「街の中心部から来て、これからトラムで帰ろうと思います」

それを見るや、再び
「カモンッ、カモンッ」
と、今度は車に乗るよう促す。

どうやらトラムの駅まで乗せて行ってくれるみたいだ。
私は財布に入れておいた日本硬貨を彼にあげる。
その珍しさに喜んでくれる顔を見て、車に乗ることを決めた。


フォルクスワーゲンのバンを運転する彼は、翻訳ではなく拙い英語で必死に話そうとするが、しかし言葉が出てこないようで、もどかしそうだ。
その気持ちは私もよくわかる。

そうこうするうちに車はトラムの駅へ。



「ハウマッチ?」



唐突にお金の話をしてきた青年。
もしかすると、とは思っていたが…。
財布を抱え、チップを渡そうか迷っていると



「ピッ」



彼はなんと、自分の乗車カードでトラム代を払ってくれた。

そして私に笑顔を見せ、颯爽と帰ろうとする。

一瞬あっけに取られたが、すぐに呼び止めて御礼を言い、握手で気持ちを伝えた。


今までも各地で沢山の優しさに助けられたが
トルコは一つ飛び抜けている



旅人をもてなすイスラムの教えもあるだろうしかし、それだけではない
これが彼らの持つ国民性なのだ

そう感じる

今後さらにトルコと日本の友好が深まる事を願うと同時に

『どこかで私も恩返しをしないとな』

そう思いながらトラムに揺られていた






2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。