マガジンのカバー画像

なにかが変わる弟子屈暮らし

31
北海道 阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
運営しているクリエイター

記事一覧

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.33

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.33

ひとりで気持ちをまとめようと思うことも少なくなった。人間は考える葦というけれど、私は喋る葦だと思う。
夫が私の話を聞いているのか聞き流しているのかはわからないが、今日は彼は先に寝ているので、今月あったことをまた振り返ってみる。

きょうは一日和琴半島でカヌー講習があったという。トイレに行くこともお昼を食べる間もなかったらしく、それはさぞ疲れただろうと思った。身体も冷え切ったので風呂に入ると言ってい

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らしvol.28

なにかが変わる弟子屈暮らしvol.28

忘年会後の走り書き編はぁ。凍れる。
さっきまで温かい店に居たはずなのに、肺に入った空気が身体を芯から冷やして凍らせてしまいそうだった。
今日はお世話になっているお花屋さんがご挨拶に来てくださって帰りにしめ飾りをくれた。
それで初めて「あ、年末なんだ」と実感する。
年々、一年の体感が短くなってきて常に師走状態みたいだった。
どれかひとつが狂えば、ひとたびバランスを崩してしまいそうな中で、毎日の丁寧な

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.32

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.32

南風。満開の福寿草。エゾアカガエルのたまご。オオジシギの鳴き声。カラマツの新芽。 

ふきのとうが採れた頃、友達は弟子屈を離れた。
桜前線はまだ遠く、芽吹きもまだ来ない森の中でやっとキタコブシの白い花が目立つ。
ここでは春はゆっくりと進んでいく。

節目4月。ひとり、弟子屈にやってきたのは3年前。
ちょうどこの時期に面接に来た。だから、雪が溶けて大地に緑が見えてくるこの頃、はじめて道東の春を訪れた

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.31

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.31

確実に春が近づいていることを感じるこの頃。
鹿や白鳥が畑に出てきて、真っ白なうさぎが慌てて道路を渡る。雪解け水は坂を走っていく。

帰省のタイミングで吹雪3月の後半、休みを頂いて地元横浜に帰省する予定だった。出発する日の天候がかなり悪く、前日の夜から吹雪。翌朝は峠を越えるのも危ない上、吹雪いていては飛行機が飛ばないかもしれない。帰るだけなのにまさかの試練。
2日前くらいからソワソワと天気予報を眺め

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.30

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.30

全然雪の降らない冬。
2月半ば、ようやく屈斜路湖が全面結氷して、それからは気温が10℃近くまで上がったり翌日には-15℃になったり(それでも例年より全然冷えていないと皆口を揃えて話す)、おかしな天気で除雪の入らないところはカチカチに凍っていた。

思い立って流氷お昼に予定があったけれども、ほんの少し後ろ倒しになったのでそれならば!と思いたって流氷を見に行った。

大好きな以久科原生花園。
いくしな

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.29

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.29

今年は暖冬。
そうは言ってもここは道東で。
連日の-15℃以下の低温で湖が凍りついた。
北北西の強風が吹くと、オホーツク海からじわじわと近づいてきていた流氷はいよいよ港をびっしり埋め尽くしているらしい。
かたや内陸、屈斜路湖の氷はみんな割れて、また釧路川を流れていった。例年1月末は凍っては割れるを繰り返している。

直下型地震のこととか1月。ドンっという音がした。雪が落ちた音にしては変だなと思うと

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.26

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.26

阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)での暮らしを綴ります。

10月。
てんとう虫が山から大群で押し寄せてきた。それを念頭に書くほど毎日信じられないほどの量を始末した。ある日、パタリとそれは収まる。
ちょうどその頃くらいに白鳥が来始めていた。

月の後半に差し掛かるといよいよ紅葉はピークを迎え、山々が黄色や橙、クリーム色に各々染まり、時々あるヤマウルシやモミジの赤が際立った。今度は鹿の

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.24

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.24

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。

8月半ば。
ある日、急に空が高くなった。気持ちのよい秋の風が吹いて、木々の緑は少し燻んだ。朝、窓際に死んでいる虫の種類が変わった。
スイッチをカチカチと回しているように小さな変化だが明らかに季節が変わる。
それでも月の下旬は本当に暑い日が数日あっ

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.23

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.23

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。

宿泊業の仕事に就いてから初のトップシーズンを迎えた。連日満室である。みんな涼しさを求めて北海道へやってくるが、一年で一番暑い日が続く。

それでもやっぱり夜には20℃を下回り、霧に包まれる。
いま目の前で揺れている樹々がもう2ヶ月もすると橙色に紅

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.22

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.22

一度も地方に住んだことがないのに、この土地が好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。

光陰矢の如し。
あっという間に6月が終わろうとしている。
ちょうど関東が梅雨入りする頃、こちらも霧と霧雨の間のような天気、いわゆる「じり」の日が出始め、その水分を得てなのか草木はぐんぐんと伸びて沢山の花が咲いた。

キムントーにて「オニ」退治キムントー(キ

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.21

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.21

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。

2023.05

「まだ桜咲いてるんですね」と言われることもあるが、ゴールデンウィークに桜が咲くのはこちらでは異例の早さらしく。
その花も散る頃、今度はスモモやエゾ

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.20

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.20

2023.04

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。

ホーホケキョ。
うぐいすが鳴き始めた。
やなぎの木がぽやぽやと芽吹き、じわりじわりと黄緑色が増えてきた。今年は例年よりもうんと暖かいらしく、大家さ

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.19

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.19

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。

冬から春へ。雪が降るのがぱたりと止むと、みるみる気温が上昇し、10℃を越える日が続いた。
すこし前まであたり一面が真っ白だったのに。アスファルトが乾いて車は走りやすくなり、じわりじわりと畑や牧草地の地面が見えてきた。
ほとんど雪のなくなった路肩で

もっとみる
なにかが変わる弟子屈暮らし vol.18

なにかが変わる弟子屈暮らし vol.18

東京都出身神奈川育ち一度も地方に住んだことがないのに、好きなだけで阿寒摩周国立公園の町 弟子屈町(てしかがちょう)に住んでみた感想や実体験を綴ります。
自分の心の変化の記録ですが、北海道への移住を検討中の方々の参考となれば幸いです。

山並みに雪雲が張り付いている。
通り雪といったらよいだろうか。こんな日はさぁと雪が舞うことが多い気がする。結晶のまま舞うのがとても綺麗だ。積もった雪をよく見ると雪の

もっとみる