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un-T design! Blog

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ブランディング、デザインコンサルティングを行うアンティー・デザインのメンバーが、今気になるデザインや美しさ、気づきなどを綴るブログです。 http://www.un-tdesig もっと読む
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記事一覧

美しさとAIと割れた皿

先日、名古屋で開催された骨董祭に行ってきた。 古くて美しいものが大好物な自分なので、何時間でもいられる雑多な空間、久しぶりに心底面白いと思ったイベントだった。そこで最も興味を惹かれたのは、割れた皿。正確に表現すると、高台の周辺を残して意図的に割った、失敗作の皿。である。 その皿には失敗作と認定されるいくつかの条件が備わっている。だが、歪みや傾きやざらつきなど、成功品としては不向きな難点が、より一層趣を醸し出していて、これが完璧な形の成功作だったら、こんなに面白いアイテムには

なぜパーパスよりビジョンが上位であるべきなのか?

前回の記事で、アップルコンピュータの96年の広告キャンペーン、Think Different を題材に、企業理念におけるパーパスとビジョンの違いや、その重要性について私たちアンティー・デザインとしての考え方を綴った。 ではなぜ、ビジョンがそれほどまでに大切なのか?という理由について、この記事で解説していきたい。 【ビジョンが大切な理由 1. つくりたい社会を描く】前回の記事でも述べたように、私たちアンティー・デザインは、企業理念のセットを上からビジョン/ミッション/バリュ

アップルのThink different.キャンペーンに見る、理想の企業ブランディング

クレイジーな人たちがいる。 というフレーズから始まる、apple が1997年に公開したTVCM。Think different. キャンペーンと呼ばれる伝説の企業広告キャンペーンだ。当時Appleが低迷した業績の起死回生をかけて行ったのは、新製品の打ち出しでも無ければ、お得な販促広告でもなく、自分たちが何のためにパソコンを作っているのか?という、原点に回帰し、その志を世に伝える施策だった。 ・見たことない方、ぜひ、当時のCMがyoutubeで見れます。ジョブスの声のバージ

OMO事例に見る、新しい提供価値の探求

企業や事業のブランディングにおいて、企業が顧客に対して提供する価値を指す「顧客提供価値(USP:Unique Selling Proposition)」を考えることは大切なことです。 なぜなら、自社の独自性・強みや、競合他社との差別性・優位性を認識し、顧客に提供する価値を明確にすることで、自社が提供する価値を内外に示し、その価値に共感する顧客との関係性を強固に築き上げることができるからです。 しかし、業界が成熟していくにつれて技術が進歩し、競合他社が増えることで、性能やコ

生活者という賢者たち

行政や企業ではなく地域住民が自ら発案し、街や場を作っていく。そんな2つのプロジェクトを通して、ひとりの生活者としての自分と、クリエイティブディレクターやコンサルタントとしてデザインを提供する役割の自分、という目線で得た学びを綴ってみたいと思います。 ●始まりは自宅の隣に公園ができる不安からだった 私の自宅は世田谷区の玉川野毛町公園に、もしかしたら世界一近い場所にあります。隣の空き地が公園の拡張エリアになるという噂を聞いた時は、正直不安が先走り、区の職員の方にクレームを伝える

ヴィンテージマガジンから考えるクリエイティブとサステナブル

最近の私の遊びは、90年代リバイバルの波を楽しむために、秘蔵の古い雑誌棚から、当時のファッション雑誌を持ち出して(しかも今の季節に合う号をピックアップ)、明日着ていく服のインスピレーションを得ること。あまりにも夢中になってガン見するうちに、もう新しい雑誌を読む気にならなくなる。そして、なんだかタイムスリップしてるみたいな感覚になり、今が何年代か?わからなくなってくる。それぐらい、トレンドはリバイバルして、30年前のスタイルは色褪せない魅力を放つ。それどころか、今年のコレクショ

ブランディングというクリエイティブワーク

新年一発目の記事は、私たちアンティー・デザインが行なっているブランディング事業にまつわるお話について、1人のコンサルタントとして、そのやりがいや面白さ、こだわりなどを綴りたいと思います。最後の方でアシスタント募集についてもお知らせいたしますので、ご一読いただけたら嬉しいです。 千差万別なクライアントの魅力を次々と旅していくような体験私たちは普段、様々な企業やサービス、商品のブランドを、ご依頼いただくクライアントと一緒に形作る仕事をしています。これがもうめちゃくちゃ面白くて、

うどんとそばとカレーの話

言葉にまだ力はあるか 素直でいるのは怖いですか? こんにちは。 コピーライターの堀田です。 13年と半年ぐらい、言葉を書いて電気代を払っています。 (注:ご無沙汰の期間を足してみました) 少し前になりますが、 雨上がり決死隊が解散しましたね。 そのこと自体については (ご本人も話していましたが) 熟年離婚のようなもので、 思い出せないほどの時間を ともにした当人にしか 理解できない話のはずなので 僕の想いはありません。 ただ、 人がささいな嘘をつく、ことや 真

ウェビナーを終えて「作らないデザイン」の追求

2/25の再放送をもって、全3回のウェビナーが完了した。ウェビナー自体の企画は昨年夏頃から始まったものだが、その背景にある、ニュービジネススクールSTRAMDのテキスト執筆という活動は、実は2014年から粛々と行っていた。 果たして中西氏の講義の記録をお伝えする最適な人材は自分だったのだろうか?という疑問をどこかで抱えながら、長い間このプロジェクトを続けてきたように思う。 戦略経営人材育成講座STRAMDには、様々な職業の受講生が集っていたが、MBAホルダーや現役の経営者も

正しいことより、うれしいこと

どうやって、言葉を磨くのか? 「うれしい言葉」ってどんな言葉ですか? こんにちは。 コピーライターの堀田です。 13年ぐらい、言葉を書いて電気代を払っています。 (勝手に定着したと思っています) 珍獣を愛でるように ひそかに「コラム楽しみにしています」という めずらしい方もいて(失礼) 「自分の話をもっとしてほしい」と言われたので 今回は、 正しいことより、うれしいこと を書く時の信条にしている、 自分の話をしてみようかなと思います。 さて、 仕事柄、コピー

クリエイティビティと美しさのアップデート Vol.2/3

前回の記事「クリエイティビティと美しさのアップデート Vol.1/3」で、アジャイル化を余儀無くされる制作現場の状況から、価値観のアップデートが必要だと記した。それをキーワードで探っていくべく、年始に自分のFacebookに投稿した記事で、価値観のシフトを表現してみた。 ・世の中の流れから思う、わたし的IN&OUT (今の気分と、時代遅れな気分、みたいな) ーーーーーーーーーーーーー 【IN ← OUT】 ネットワーク ← ヒエラルキー ワクワク軽々と ← すんげーー必

クリエイティビティと美しさのアップデート Vol.1/3

2020年のコロナ禍を境に、それ以前になんとなく感じていた時代の変化が、まるで念押しのように背中を押してきた昨年末。特にクリエイティブ制作の現場視点で、この変化を強く感じ、ザワザワしちゃって落ち着かないので、全3回に渡って、このnoteにぶつけてみようと思う。笑 ・価値観のアジャイル化一言で表現するなら、「価値観のアジャイル化」ということになるのだが、まずは自分が毎日身を置く制作現場の変遷から話を始めていこうと思う。 とにかく受託制作のスピードが早まる一方で、その理由を辿っ

余白を愛する

言葉と、言葉の間 余白の少ないこの頃です。 いかがお過ごしでしょうか。 こんにちは。 コピーライターの堀田です。 13年ぐらい、言葉を書いて電気代を払っています。 (だんだん違和感がなくなってきました) 今回は少しまじめに(?) 「余白」についてのお話です。 急になんのこっちゃですが 言葉と言葉の間が、狭くなっています。 毎日のように、 僕と同業の人が書いたであろう文章が燃え SNSでは、言葉が凶器にもなりうる そんな話をよく目にしますね。 「ガチ」とかっていう

企業のビジョンは次代を連れてくる

「やっちゃえ、日産」のコピーが耳に残る日産のCMが、矢沢永吉からキムタクになって、おおお。。!と目を見張ったワタシ。同時にロゴマークも新しくなって、久々に企業が描く新たな時代の姿にワクワクする広告だと思いました。 ・アイコンタレントの代替わり矢沢永吉やキムタクの好き嫌いは一旦置いといて、(私は2人とも嫌いじゃないですヨ。。)タレントとしての位置付けや存在感で見ると、この代替わりは上手いなぁと思うのです。何をやってもその個性が際立って、唯一無二。賛否両論ありつつも、ナショナル