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Transdisciplinary Designのカリキュラム紹介(選択科目編) #307

2023年5月にパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Design(略称はTD)を修了し、日々の出来事や学びを記録し続けてきた『パーソンズ美術大学留学記』の毎週更新も終わりました。この企画で生まれたつながりもあり、十分に役目を果たしてくれたと思っています。

でも、この流れを断ち切ってしまうのはもったいない。というわけで、これからは『パーソンズ美術大学回想録』と題したマガジンを立ち上げて、TDでの学びを振り返る企画を始めようと思います。できれば毎週更新といきたいところですが、ひとまずは不定期更新としておきます。

『パーソンズ美術大学回想録』の第一回にあたる前回の記事では、TDの必修科目を中心に紹介し、TDでは何を学べるのかをご紹介しました。

私が受講した選択科目

今回は選択科目について書いてみます。TDのカリキュラムでは、1年生の春学期に3つ、2年生の秋学期に1つの選択科目を取る必要があります。以下では、私が実際に受講した授業をご紹介していきます。

Global Mental Health

授業名のとおり、世界中の人のメンタルヘルスを考える授業です。一番の学びは、"Cultural Adaptation"でした。医療は科学的で普遍的な現象であると思っていましたが、症状も治療法も文化に依存しているというのが印象的でした。

Designing in Dark Times

ハンナアーレントの哲学をもとにデザインを考える授業でした。哲学者の思想からデザインを始めるというアイデアがインスピレーションとなり、卒業制作での「禅をデザインに取り入れる」というテーマが生まれたのかもしれません。

Intersecting Mobilities

政治学と人類学の視点からMobilitiy(移動、移動する能力)を考える授業でした。最終レポートでは、ミニマリストとMobilityの関係性を取り上げ、ミニマリストである私は日本からアメリカに移住しやすかったという実体験や、資本主義経済によってどこでも同じ物が購入できることがミニマリストを促進しているという仮説を書きました。

Mindfulness and Contemplative Engagement

マインドフルネスがデザインやビジネスに良い影響を及ぼすというテーマの授業でした。西洋文化や科学的根拠で説明する姿勢が参考になる一方で、仏教や禅などを直接参照することに私自身の興味があることに気づけました。

Anthropology and Design

人類学とデザインをどのように掛け合わせるのか、いわゆるデザイン人類学がテーマの授業でした。フィールドワークでの学びをもとにZine(小冊子)を作るという課題では、『パーソンズ美術大学留学記』の要点を抜粋して、『What is TD?』『How to TD?』を作成しました。


個人的テーマ:「心とは何か?」

心理学、哲学、社会学、マインドフルネス、人類学を選択科目で学びました。これらに共通点を見出すならば、「人の心を理解したい」となるでしょうか? 「私とは何か?」「他者とは何か?」という漠然として答えの出ない問い、しかしながら人生を通して直面し続ける問いの答えに少しでも迫るべく、学問という視点を借りたかったのです。

私はこれらの中で特に人類学に惹かれました。なぜなら、人類学は他者の理解によって自己の変容を促すものだからです。多くの学問が「神の視点」からの客観的な記述に努めるのに対し、人類学はフィールドワークを行う人類学者自身の視点という主観が必然的に入る点が興味深かったのです。この人類学ならではの姿勢が、「私とは何か?」「他者とは何か?」の答えに迫りたいという私のテーマと共鳴する気がしました。

そのため、基準を満たした授業を3つ受講すればminor(副専攻)を取得できるという制度では"Anthropology and Design"を選び、人類学に少し足を踏み入れてみました。人類学について学び始めたばかりの素人ですが、「私とは何か?」「他者とは何か?」について考える手助けになる予感がしています。


まとめ

私が受講した科目以外にもグラフィックデザインや起業などの実践的な内容を学ぶ授業もあり、個人の興味に合わせて受講できます。選択科目を通して生まれた先生とのつながりが卒業制作で活きてくることもあるようです。選択科目や副専攻によってTDの卒業制作の多様性が促されているのでしょう。

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