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「受験が全てではない」と伝えたい。 #113


2021年が終わり、迎えた1月。日本では受験ムード真っただ中。私も例に漏れず、大学受験をした人の一人です。そんなことを思い出したら、少し自分語りがしたくなりました。私は受験をして良かったと思うと同時に、受験生だったことで十字架を背負うようになったとも思っています。そんな話を少しばかり。


いつも受験生だった私

小学校受験、いわゆる「お受験」から経験するほどの生粋の受験生だった私。ずっと受験勉強をし続けた子ども時代を過ごしていました。小学校に入学したら中学受験に備えて勉強をして、中学校に入学したら大学受験に備えて勉強。私が受験生でなかったのは小学校1年生の時くらいでした。

なぜ受験をしたのかと言われても理由はわかりません。自発的なものではなかった気がします。将来困らないようにという親の優しさ、学校や塾からのプレッシャー、名門校を崇める地域の雰囲気。そんな外的な理由が思いつきますが、そうした構造にいる子どもには受験以外の選択肢を選ぶなんてできません。受験をするのが当たり前な環境だったから、私もそのまま受験をしたという感じです。


「受験生シンドローム」

私には何もない。恵まれた容姿もなければ才能もない。音楽や芸術、スポーツの才能があれば、何か夢を追うこともできるだろうけれど、そんな分かりやすい才能は私にはない。だから、私はひたすら勉強して「いい大学」に合格するしかないんだと思っていました。

「テストの成績=自分の存在価値」だと思っていました。絶えず自分の存在価値を証明するために、全ての時間を勉強に費やしました。友達と遊ばず、部活にも入らず。家と学校と塾を行き来する毎日を過ごしました。

「学力=存在価値」なんてひねくれた考えを持つようになると、他人を見下すようにもなっていました。勉強ができない人は価値がないなんて思うようになっていた気がします(もちろん今はそんな過激なことは思っていません)。そうでもしないと、ちっぽけなプライドを保てなかったのでしょう。

そんな状態のことを、心理学用語では過剰適応と言ったりするのだそうです。もう受験生ではなくなった今でも、自分が優秀であることを証明しないと誰からも認められないという思い込みは拭いきれません。

「春休みに次の学年の予習を」「夏休みを制する者は受験を制する」「冬休みや直前が一番成績が伸びる」といった標語にあふれる受験業界。休むことは悪であるという価値観が私の潜在意識に深く刻み込まれているのは、きっと受験生だったからだと思います。

そんな生き方は長続きしません。私は体調を崩す機会が多くなり、しまいには鬱状態に陥り、考え方や生き方を見直すように迫られることに。受験生的な生活スタイルは短期間だから有効なのであって、人生を通してするものじゃありませんね。

それに、受験生は自分の好きなことを我慢することを強いられます。その結果、私は自分が何を好きなのかもわからなくてなっていました。周りの大人が「いい」という目標を目指すだけの存在でした。受験で結果を残すということを最適化すると、自分の好きという気持ちは邪魔でしかないのです。好きという気持ちに素直になれるようになったのもここ最近の話です。

受験生だったことによって私が抱くようになった思い込み、またそれによる生きづらさのことを、「受験生シンドローム」と勝手に呼んでいます。周囲は受験の手助けをしてくれるかもしれませんが、個人が本当に幸せになるかどうかまで考えてくれる人は珍しいかもしれません。学校や塾はどれだけ名門校に多くの合格者を輩出するかという「量」を追い求めてしまいますから。


受験も悪いことばかりじゃない

ここまでひたすらに受験を腐してきましたが、大学受験をして良かったこともあります。高校までに教わる知識がある程度身についているので、大学以降で新しく学ぶ内容でも理解ができます。学ぶことは積み重ねなので、高校生レベルとされる知識を漏れなく定着させる機会があったことには感謝しています。

また、今の私が海外留学をできているのは、受験を経験したからというのも事実です。大学受験のために覚えた英単語や文法は、私の英語学習をいつも助けてくれます。「学歴は必要なくなっていく」なんて聞くことがあるかもしれませんが、学歴があることで人生の選択肢が広がるという側面は否定できないと思います。フツーの私が海外の大学院でデザインを学べる環境にいるのは、アピールできるような一定の成果を挙げる機会を大学で与えられたという恵まれた環境のおかげでしかありません。

私のような人間が少しでも自分の選択肢を増やすために、最も効率の良い方法が受験だったのでしょう。何もすることがない、自分には何もないと思うならば、とりあえず学校の勉強を極めてみるというのは一つの選択肢としてアリだと思います。でも、それは他人がそう言うからという理由ではなくて、自分自身がそうしたいからという理由であることをオススメします。


受験のその先へ

最後に私が今の受験生に言いたいことは、「受験が全てではない」ということ。今の環境では「テストで良い点を取っているかどうか、そして有名校に合格できるかどうか」でしかあなたを見てくれないかもしれません。合格体験記に載る人たちは神様で不合格者は人にあらず、という世界に思えるかもしれません。

でもそれは、あなたが「受験」という世界に身を置いているというだけ。あなたの存在価値はあなたのテストの点数では測れません。あなたの存在価値は合格した大学の偏差値では決まりません。

あなたはあなたのままでいい。それだけは忘れないでいてほしいです。そんなことを老婆心ながら思ったというお話でした。受験を乗り越えたら、もっと楽しい世界が待っているから。

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