「楽しい」「できた」「嬉しい」「もう一回やりたい」の4つの体験こそが最速の学びを引き出す

毎週2時間。

これが、私と子どもたちとの時間。

この2時間の子どもたちの大切な人生を預かっています。

この時間にどれだけ、「楽しい」「できた」「嬉しい」「もう一回やりたい」を引き出せるかが、勝負。

この4つの体験こそが、子どもたちの「学びの獲得」を最速に最大限引き出すことに繋がります。

今日は、子どもたちにこの体験してもらうために、大切だと考えていることを書いていきます。


ひとつめ。 「課題の提示方法を工夫する」

課題の提示方法は、お子さんによって変わるもの。だから、わたしとの学習の時は学校の教科書のようなものは使いません。その子が心躍る「もの」や「こと」は何かを把握し、その心躍る「もの」や「こと」を最大限利用させてもらいます。

例えば、キャラクターや電車、スポーツ選手などの「心躍るもの」があれば、プリントの端にそのキャラクターからの応援メッセージなどが書いてあるだけで、勉強内容は同じでも、取り組み方が変わることはよくあります。

また、ひらがなの書きの練習をするにも、ひたすら何度も繰り返し書かせるだけでは、子どもにとってただの苦行。単純な繰り返し学習はゲームにしてしまうと楽しく取り組めたりします。例えば、文字しりとりゲームなど。絵を書くことが好きなら、そのしりとりに絵を組み合わせるものいいですね。学齢の小さいお子さんなら、課題提示の方法を少し変えてあげるだけで、勉強への取り組み方が変わることは珍しくありません。


ふたつめ。 「課題分析して、学習ステップを考える」

課題分析とは、「その行動を構成している個々の構成要素に分解すること」と言えます。でも、一体何をすれば良いのか、ピンとこない方も多いと思いますので、具体例をあげて説明させて頂きますね。

過去、私の教え子に、自分で食事を食べることができず、ずっと家族に食べさせてもらっている子がいました。その子は、小学4年生で、身体機能に障害があるわけでもなく、能力的には自分で食事を取ることができるにも関わらず、自力で食事を取ることに、頑なに拒否を示すのです。言葉での説得や、促しなんてなんの効果もありません。それらの声掛けは、彼の大パニックを引き起こす刺激としての機能しか果たしておらず、周りの家族は途方にくれている状態でした。

ここで、私は説得などの言葉は用いずに、「自分で食事を食べる」行動を獲得させました。その際とても重要だったのが、課題分析です。

「自分で食事を食べる」行動は一見、ひとつの行動に見えます。でも実は、そうではないことが、課題分析をするとわかります。

では、「自分で食事を食べる」行動の課題分析をしてみましょう。

1、机の上のフォークを握る

2、握ったフォークを持ち上げる

3、持ち上げたフォークを食べ物に刺す

4、刺した食べ物を口元へ持ち上げる

5、持ち上げた食べ物を口に入れる

6、フォークを口から抜く

7、食べ物を噛む

8、噛んだ食べ物を飲み込む

いかがでしょう。一見ひとつの行動に見えた「自分で食事を食べる」行動は、課題分析をしてみると、8つもの行動で構成されていることがわかります。

ここで言いたいことは、自分で食事を取ることが難しい子に、最初から自分で食べさせようとすることは、8つのステップを一気にクリアさせようとしていることと同じなのです。ひらがなが書けない子に作文を書けと言っているようなものです。そんなの無茶ですよね。

まずは、この課題分析を踏まえて、本人の学習ステップを考えます。

学習ステップ1は、「食事の横に置かれたフォークをとってもらう」です。「フォーク取って」と言い、フォークが取れたら「ありがとう」と言ってフォークを受け取り、私が食事を一口食べさせます。そしたら再度フォークを机に置いて、同様に5回ほど繰り返します。

学習ステップの2は、「持ち上げたフォークを食べ物に刺す」です。ステップ1に慣れたら、「フォーク取って」と言って、本人がフォークを持ち上げた瞬間に「〜〜(食べ物)に刺して」と言います。これまでと違う流れに少し戸惑いを示すので、軽くフォークを持っている手に私が手を添えて、食べ物に刺すように誘導します。刺さったら、また「ありがとう」といい、フォークごと受け取り、私が食べさせます。また、数回繰り返します。

学習ステップの3は「フォークに刺した食べ物を持ち上げて口に入れる」です。フォークに刺すまではステップ2で抵抗なく行えるようになっているので、次は、食べ物を刺したところで、「口まで持ち上げて」といい、持ち上げたところで、私が手を添え、本人と私が一緒に口に運ぶようにしました。ここで少し抵抗を示しましたが、口に運んだ食べ物から、素早く私がフォークを抜き、食べ物は本人の口の中へ残ります。


このお子さんの場合は、ここまでのステップを1回の食事の時間に繰り返し行うことで、その時間内で、一人で食べることができるようになりました。10歳まで毎食食事を家族に食べさせてもらってた子が、目の前で一人でごはんを食べる姿を見て、ご家族は涙していました。4年生の子どもとって「一人で食事を取る」ことは、当たり前にできることと、思うかもしれません。でもこの子にとってはそうではありませんでした。

できないことは、本人にとって最大の困難事項であることを周りは理解する必要があります。自分の経験や、他の子どもと比べて、ある物事の難しさを推測することは誰のメリットにもなりません。お子さんを学習の獲得から遠ざけてしまうだけです。

本人のレベルにあった介入を行うことで、物事はずっと簡単にスムーズに解決することができます。課題分析は、その本人のレベルにあった介入を考える上で欠かせない方法です。


みっつめ。 「行動にメリットを随伴させる」

お子さんをよく観察してみてください。「何をしているときが楽しそうですか?」「お母さんやお父さんに、どのようなスキンシップを求めますか?』「なんのおやつが大好きですか?」「夕飯のメニューで喜ぶものはなんですか?」「どこにお出かけするのが好きですか?」「仲良しのお友達は、どんな子でしょうか?」そこに、学習を獲得させるための最大のヒントがあります。つまり、その子にとっての「だいすき」を把握することが学習の獲得に最も重要なことです。

そして、獲得させたい行動の直後に、これらの「だいすき」を随伴させます。

「〜したら、〜あげるよ」など、エサで子どもをつるようなことを言って、何かをさせるということではなく、単純にお子さんに獲得させたい行動が生起したら、その直後に本人にとってのメリットとなり得る「だいすき」が毎回出現するようにしてあげるのです。

ここに関しては、次回の「勉強もお絵かきもサッカーも同じ。 好きも嫌いも環境次第。 勉強は辛いものと思わせない教え方が鍵。」も読んでいただけると、より理解が深まると思います。


以上の3つが、お子さんの「楽しい」「できた」「嬉しい」「もう一回やりたい」の4つを体験させるために大切だと考えています。

お子さんの学びを最速に、最大限引き出すために、ご活用頂けたら幸いです。



おわり




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?