社協で写経

私は社協をはじめとする福祉系の職場の独特の馴れ合いの雰囲気、「アットホーム」感がものすごく苦手で、だからこそ地域だの福祉だのボランティアだのなんとなく曖昧で個人の受け取り方次第みたいなところがあるワードがものすごく嫌いだった。

数ヶ月前に社協に行った。長めのインターンだったかその後に何度か行った短めのインターンだったか、何回も行きすぎて忘れるレベルだけども、そこはあえて個人情報的な面もあるからぼかそうと思う。これから語ることは7割ぐらいが事実で、3割ぐらいが脚色込みの事実って感じです。

社協で体験したのはボランティア団体の方がボランティア活動を行うための準備の手伝いとか、ちょっとした空き時間にボランティアの人の話を伺うとか、そんな軽いことだった。社協の職員からは「若い子と一緒にいるだけでボランティアさんはみんな元気出るからー!」とのほほんと語っていたけど、私は腑に落ちないままにぼんやりとボランティアの人たちの話を聞いていた。「ボランティアの人」って言うとどんな人か分かりにくいかもしれないし想像する人物像は人それぞれかもしれないけど、私がお世話になった社協に来てたボランティアの人はみんな年寄りばっかりだった。元気なおじいさんおばあさんだけじゃなく、腰骨の曲がったおじいさん、歩くのが大変そうなおばあさんとか、耳が聞こえづらくなってきてコロナ禍での生活が大変になったと語るご夫婦とか、多種多様なおじいさんおばあさんがそこにいた。でもみんな共通してたのは、身体的な面で健康的かどうかは置いておいて精神的な面ではものすごく活発で健康だったってこと。本当にみんなエネルギッシュで「コロナ禍での活動をどうしようか」「インターネットを使えばいいんじゃないか」とかいろんなことを試行錯誤していらっしゃって、その目標志向性の高さに驚いた。なんて言っても、私自身はボランティアのことをよく思っていない。だって、なんで誰かのためになることをする人に対して対価になるものを払わないの?と思うから。なんで?なんでボランティアの人は無償なのに、そのボランティアの人の活動を支える社協の人間は金もらってんの?なんで?なんで?って思ってたし、それを職員さんに尋ねたらギョッとされてしまったけれども。

私は気になったことはすぐに人に聞きたいタイプなので、明確な答えをくれなかった職員さんに聞かずにボランティアのおじいさんに「なんでボランティアなんか無償でやってるんですか?」って聞いた。おじいさんは、「社協に来てそうやって尋ねてくる子、珍しいねぇ」なんて言って笑ってから、「歳をとるとね、お金よりも大事だなって思うものが増えてくるんだよ。お金では得られないものを得たい、得なければ元気にやっていけないって思うんだよ。だってね、60歳、人によっては65歳とかで定年退職して、そこからなーんもすることなくて、仕事を辞めるってことは、社会から自分の地位とか立場がなくなるってことでしょ。退職金を得た、年金も入ってくる、老後のためにと備えた金がある。でもそれは恵まれてることで、そうじゃない人もいる。じゃあ、そうじゃない人のためにボランティアしたら、『ボランティア団体』って団体に所属できて、社会的な地位も確保できるし、誰かのためにもなるよね。だからボランティアサークルってみんな高齢者が多いでしょ。でも、それでいいんじゃないかなとも思う。お嬢ちゃんみたいな若い子が学校で『行きなさい!』って言われてボランティアやって、そういうエネルギーが有り余った高齢者に出会って、『あー自分もこんなふうに年取りたいな』って思ってくれたら、例え若い子のボランティア活動が急激に増えなくとも、それはもう最高だと思うんだよね。」って、言ってくれた。

私は、この言葉を、本当に鮮明に覚えている。この言葉のどこが自分にとってよかったかとか、何が刺さったとか、何が衝撃的だったとか、よくわからなかったけど、この言葉が私の長年の悩みをなんとなーく解決してくれたような、少なくともボランティアをやってる人を見て「この人お金もらわずにやってて可哀想」なんて思うことがなくなるきっかけになったことは、間違いないと思う。

学生さん、学生さんと呼ばれたインターン期間、新たに出会うおじいさんおばあさんは何度も私の方を見ては「勉強頑張って」と言ってくれたり、「LINEの使い方を教えて欲しい」と言ってきたり、パワーがすごかった。社協の職員はそれを見守ってるだけで、何やってんだよ職員!って思わないことはなかったけど、っていうかそんな職員は給料しっかりもらってボランティアさんに謝金が1ミリも発生しないのはなぜ?と思わないこともなかったけど、まぁ、なんとなーく、私の中で「福祉」とか「ボランティア」とかの見方が変わったきっかけにはなった。

余談だけど、帰り道、たまたまボランティアのおばあさんに出会って駅に一緒に歩いて行ったんだけど、マップ通りの道じゃなくてちゃんと着けるのか不安になってたらマップで表示されてた予定時刻よりも数分早く駅についてびっくりした。

地域とか福祉とか、曖昧すぎて訳がわからない言葉、それを扱う仕事、その施設にやってくる人たち、その全てがよくわからなくてなんとなく敬遠してたし今でもなんとなく苦手意識は残る。でも、苦手意識を持ったままにしても、自分の知らない世界を覗けたのは間違いなくて、そこで生き生きと活動してる人を見て、「ああいう年の取り方をしたい」と思ったのも事実だった。

私の投稿なんかを見る人はほとんどいないと思うけど、もしこれを読んだ人で私みたいに「ボランティアとかやるやつの気が知れねー!」と思ってる人がいたら、是非とも社協にインターンとか見学に行って欲しい。「ボランティアとかやるやつの気が知れねー!」って思いは変わらなくても、「そういう世界があるんだな」と知ることができると思う。で、その気づきが、意外と視野を広げるきっかけになるかも知れない、と私は思う。



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