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無名人インタビュー:思春期ママの救世主 海外在住約20年の人

もうかれこれ4か月前です。私、あなたとお話させていただいたの。
秋口でした。今はもう3月。三寒四温でこうして日和のいい日もあります。日本はコロナで右往左往して、学校にICT導入がようやく決まり、子供たちの手にPCが届くことになりました。
windowsではないんですってChromeOSですってよ。ClassRoomってアプリだったかな? そんなの使ったことないですけど。
ということで、アンデルセンのりこさん回です。名前のインパクト強すぎでタイトルに採用してしまいました。中野美紀子さんコミュニティ からのご参加です。ほんとうに個性が豊かなメンバーの方がたですね。しかも、同じくシンガポールで働いていたなおさんとはお友達だという。
アンデルセンさんは現在シンガポール在住。旦那さまはデンマーク人。学校を卒業してからずっと海外の方です。海外での出産、しかも20年前の深圳でのお産ということもあり、そこからバースコーディネーターとしてお仕事をされています。
編集してて、私も結婚しようかなって思っちゃった回でもあります!
アンデルセンのりこさん回、ご覧くださいませ!!

今回ご参加いただいたのはアンデルセンのりこさんです!

1、海運会社

のりこ:なおさんから今メッセージがきて。次、のりこさんて聞いて笑っちゃったって言ってました(笑)。

qbc:のりこさんとは、シンガポールつながりだったんですね。私も驚きました(笑)。
※今回インタビューののりこさんとなおさんはお友達!

のりこ:はい。

qbc1:それでは、どういうインタビューにしましょうか?

のりこ:私が勝手に決めちゃっても良いんですか? 

qbc:自由に話していただいて良いですよ。発散の場だと思ってもらってオッケーです。

のりこ:あー。そっかあ。じゃあ、そうですね。いろいろあるんですけれど、今話してみたいのは、去年1年、自分の人生最大、史上一番の危機を、私の家族が襲ったんですよね。それについて話そうかなあ。

qbc:ぜひぜひ。

のりこ:と言っても、qbcさんは私のバックグラウンドも何も知らないから。

qbc:そうですね。とりあえず今、何をされている方なのかを知りたいです。

のりこ:今はですね、主にオンラインで育児中のお母さんを対象に、思春期育児の関わり合い方とか、家庭で伝える性教育といったことをしています。
性教育のナビゲーターって勝手に名乗ってですね、お家で子供たちに命と性のお話をどうやって伝えれば良いのかっていう方法を、ママたちに教えたり、講座を開いたりしています。
以前は、バースコーディネーターをしていました。

qbc:おお。生まれるのbirthですよね。

のりこ:そうです。出産準備教育。妊娠中のマタニティのカップルに向けて、お産の準備を一緒に手伝っていく。
そういう子供の命の大切さを教えるところから、性教育の方にフォーカスが移って、今そこをやっていますね。
バースコーディネーターになったきっかけは、自分の長男の出産体験からですね。ものすごい経験だったんですよ。
私、30歳の時に彼を産んで、その子が今19歳になるんですけど、出産当時は、中国の深圳に住んでたんですね。深圳には、当時外国人が気軽に安心して受診できるような病院がなくて、香港に行って産みました。深圳と香港って隣同士なので、近いって言っちゃ近いんですけど、当時はまだトンネルとか電車がなくって、フェリーに乗っていきました。

qbc:え? そういう感じなんですね。

のりこ:そうそう、もう20年ぐらい前なんで、今の中国の発展からは考えられない状況でした。戦後の日本みたいな感じだったんですよ、その時の中国はまだ。

qbc:へええー。

のりこ:深圳も、まだコーヒーショップもないし、スーパーに行ってもひき肉とか売ってない。私、この国でミートソースも作れないって思ってたんですよ。

qbc:加工されたものが少ないわけですね。

のりこ:そうですね。たまごとかもパックで売ってなくて、そのまま直売りっていうか、ダーンって置かれていて。
スーパーに行って、どのたまごにしようって選んでいたら、日本人の奥さんが私のことを見つけてね、日本語を喋ってたから、日本人なの? って話しかけてきてくれて。そうなんですって言ったら、たまごの買い方教えてあげるって言われたんです。「たまごはね、こうやって1個ずつ振ってみるんだよ」って言われて。で、振った時にカシャカシャ音がするたまごは、古いやつだから買っちゃダメって言われて。あ、そうなんだ、とかね。

qbc:ああーなるほど。

のりこ:当時の深圳って、外国人からするとちょっと住みにくくって。住みにくいっていうよりも不便でね。そんなところに住んでたので、病院とか、もちろんあんまり外国人は気軽に行けないし。中国語も、私、当時喋れなかったので。それで香港で産もうってことになったんです。

qbc:お仕事は、商社だったんですか?

のりこ:当時はもう仕事辞めてたんですけど、大学を卒業してから、ずーっと海外に住みたくって、外資系の会社に入ったんですね。外資系の海運会社に入ったんですよ。

qbc:なるほど。

のりこ:シッピングカンパニーで、マースクっていうデンマークのおっきな船会社があるんですが、そこに勤めていました。
船会社って世界中にオフィスがあるんですよ。デンマークの会社だったから、デンマーク人がいろんな世界に派遣されてたんです。
でも、私が就職した1994年って、ちょうどグローバライゼーションみたいな流れがものすごく盛りあがっていて、デンマーク人だけでなく、それぞれの国でマネジメントできる人材を育てようみたいな流れが強くなったんですね。それで新しい研修プログラムがはじまって。今までデンマーク人だけがやってたトレーニングプログラムを、ローカルの人材にも広げていったんです。それの第一期生みたいな感じで、私は日本支社に就職しました。

qbc:なるほど。

のりこ:そのときの約束っていうのが、3年間の研修期間のうち、2年目は必ずみんなどこか違う国に研修に行くって話だったんですよ。これおいしいなって思って応募して、うまい具合に就職できました。
それで2年目に、アメリカのニュージャージーのマースクの北米本社で研修をさせてもらいました。その時に、今の夫である、デンマーク人の彼と出会って、それでのちのち結婚するって流れですね。

qbc:ハードそうですねえ、研修。

のりこ:私まだ入社したてはね、営業のおじさまのアシスタントみたいな感じで、商社さんに電話とかしたりしてました。ブッキングとか。アメリカでもアシスタント的な立場で、それで3年目が終わった時に、四年目からはみんな絶対、必ずまたどこか違う国に本赴任みたいな感じで、海外勤務が約束されてたんですね。
それで、私は1997年にシンガポールに来たんですよ。もう23年前なんですけど、その後、夫も同じマースクに勤めていて、後からシンガポールへやってきて、それで私たち一緒に住みはじめて。

qbc:あー、良かったです。夫さんはシンガポール赴任の希望を出してたんですか?

のりこ:そう、希望出してたの。彼はね、当時中国に住んでいて、ずっと遠距離だったんですけど、希望出して彼もシンガポールに来てくれて、同じオフィスで働くこともできて、一緒に住みはじめて。それでシンガポールで結婚しました。
私はもともと2年間っていう約束の赴任期間だったので、2年経ったら日本に戻んないといけなかったんですけど、でももう結婚してたし、もう帰るわけにいかないので、じゃあマースクでローカルコントラクトでいいので、ローカルでお仕事ないですか? って聞いたら、ちょうどアジアの通貨危機とかですごい大変な時期だったんですよね、首切って人員削減とかしてたので。

qbc:なるほどなるほど。

のりこ:だから、追加のポジションはないと言われて。じゃあ、もういいやって言って辞めて、私はまたシンガポールの違う会社にね、転職をして働きました。
そうこうしてるうちに妊娠をして、で夫が今度は深圳に転勤になっちゃったので、それで妊娠7ヶ月の時に深圳に行ったんですね。そこが、まあなんか始まりなんですけど。

qbc:ふーん。

のりこ:なので、シンガポールもその当時って、今と比べるともうちょっと田舎くさかったっていうか。

qbc:全然違うはずですよね。

のりこ:当時、日本の地方都市くらいな感じ? もうちょっとのんびりしてたっていうか、あんまりイケテナイっていうのもおかしいですけどね。今はすごく最先端の都市ですけど。
東京よりもすごいぐらい。テクノロジーとかも。

qbc:私、シンガポールに行ったことないのに言うのは気が引けますが、今の東京は最先端とかそういう路線には向かってないですね。

のりこ:当時の東京は、すごいイケてたんですけどね。

qbc:日本へはどれくらいの頻度で帰ってるんですか?

のりこ:ときどき帰ってますけど、もうずっと海外暮らしなので。東京はどんな風に変わってるんですか?

qbc:うーん、コロナでテレワークが進んだぐらいじゃないですかね。

2、シンガポール、深圳、香港(で出産)

のりこ:当時のシンガポールは、マリーナベイサンズとかもなかったし、今すごい高層ビルが建ってるビジネス地区みたいのも、その当時は今ほど発展してなかったし。
本当にもっとのんびりした、おっとりした地方都市みたいな感じだったんです。でもすごい暮らしやすかった。日本のものも手に入るし、英語でやりとりもできるし。
そんな便利な暮らしをしていたところから、いきなりの中国の、しかも深圳みたいな「ここどこですか?」「シンセンって漢字でどうやって書くんですか?」みたいなところに身重の体で着いていったわけなんですよね。
そしたら、さきほど言ったように、ひき肉とかハムとか、チーズとかの加工品がない。あと輸入の食品もない。

qbc:なるほど。

のりこ:唯一、デリみたいなところで、加工品を扱っているお店があったんですよ。でもそこも衝撃的で、ハムとかチーズを保存している冷蔵のケースが、夜になると電源切られるんです。24時間の冷蔵になってないんです。その事実を、私ある日知って、え? って。

qbc:それ、次の日も売るってこと?

のりこ:そうそう。

qbc:まじかー、大丈夫なんだ。

のりこ:次の日店員さんが来て、またコンセント入れて、電気つける。チーズとかハムって、常に冷蔵なんじゃない? って思ったんだけど。とにかくそういう感じ。
あとは生きた鶏をね、マーケットで買って、それを持ったままバスに乗ってるとか。なんかすごい。

qbc:確かに。なんかすごい。

のりこ:籠の中でね、鶏が「ツテー!」とかって言って、パタパタパタとかってしてるまま、みんなバス乗るとか。
中国語も本当にわからなかったし、若かったからできてたんだなと思います。何にも知らないで、若さと勢いだけで行ってたから。あー、すごい。

qbc:ほんとに。ただすごい。でも、好きなことができてる、海外で生活できてるって部分では、満足できていたわけですよね?

のりこ:なぜか子供のころから、ずーっと海外に住みたかったからね。そういった意味では、好きなことができてますかね。

qbc:で、香港に移動して出産をしていくと。

のりこ:出産をする病院の隣に宿があったんですけど、昔の修道院みたいなビルを改修して人が泊まれるようにしたところで、例えばユースホステルみたいな、なんかそういう場所だったんです。
中国の北京とか上海とか、いろんな他の都市に住んでる人たちが、香港に来て産めるように、そういう宿が用意されているんですよね。

qbc:あーなるほど。

のりこ:私もその一員として、そこの宿に泊まりながら産気づくのを待ちました。qbcさんは男性だから分からないと思いますけど、出産って本当、体の本能を、本能のまま産んだっていう感じなんですよね。人間もすごい、動物なんだなっていうか。
頭で考える思考とかが全部抜けて、体の感覚のまま痛みに耐えたりとか、あーなんか本能だなってすごい強烈だったんですよね。
お産自体も、私、時間かかって21時間もかかっちゃったんですけど。

qbc:すごいすごい。

のりこ:すごーく、もう、終わったときにはもう疲労困憊っていう感じで。
体力、精魂、すべて尽き果てたって感じだったんですけど、でもその時の体験っていうのが、自分が30年生きてた中で、一番、本当にがんばった経験だったと思います。あなたの人生で何を一番がんばりましたか? と聞かれたら、絶対にこのお産です、って答えます。それまでにもがんばった経験は、いろいろありましたよ。でも、もう、絶対にこれです。私自身を、心底褒めてあげたい気持ちだったんですよね。出産に関する仕事にたずさわるようになったのも、このお産の経験が強烈だったからですし。

qbc:強烈な経験ですよねえ。

のりこ:その出産から、深圳に2年弱住んだあと、上海に行き香港に行き、また上海に行ってまた香港に行って、それでまたシンガポールに戻ってきたのが、10年前です。
2年おきに転々としていたんですが、そのころは本当に育児メインでしたね。

qbc:なるほど。のりこさんのこと、勝手にお仕事をバチバチにされてる方って勝手に思ってたんですが、かなり子育てに集中してた感じなんですね。

のりこ:マースクで働いてた時は外資系でバリキャリみたいな感じで行くのかなって自分でも思ってたんですけど、子供産んだら、もうあっさりでしたね。母性に火がついたというか。キャリアとか全然興味がなくなっちゃって。

qbc:出産の時に人間の本能出た、みたいなお話がありましたけど、そこでスイッチが切り替わったんですかね。

のりこ:そう。だからもう、二人で話し合って、夫は稼ぐ人、私は家族のお世話をする人になりました。当然の結果ですよね。だって彼の方が、超お金稼いでいるわけですから。私がいまさらフルタイムで仕事に戻ったところで、全然彼の方が年収多いわけですよ。

qbc:はいはい。

のりこ:でもあの、なんかね、30代なかばくらいって、多くの女性もそうだと思うんだけど、私の人生、このままこれでいいのかな、と思いはじめるんですよね。
上の子が大きくなって小学校とか入りはじめたころになると、私は今度、何をしていったらいいんだろうって思いはじめるようになったんです。自分には何ができるんだろうって。

qbc:なるほどなるほど。

のりこ:あいかわらず夫は転勤を転々としていたから、それを見て、私も世界中どこに行っても使えるようなスキルを身につけるべきかなって思ったんですよね。
それで翻訳の勉強したりとか、日本語教師の勉強をしたりとかしてたんですけど、日本語教師の資格を上海で取った時、これから日本語を教えていこうとした矢先、また夫が転勤になったんです。
香港にまた戻ることになっちゃって。海外の引っ越しって、すごく時間を取られるんですね。新しい国に行ってそこで落ち着くまで、半年とか。

qbc:手続関係も大変そうですよねえ。

のりこ:事務処理とか家を探したりとか、あっという間に半年ぐらい経っちゃう。ようやく気持ちに余裕が出てくるのが半年。
それで、ようやく落ち着いてきてはじめて、日本語教師の資格取ったのに結局使ってないやって気がついたんです。香港にも日本語学校ってたくさんあるし、やろうと思ったらすぐ始められたのに、すぐ動かなかったのは、結局ここにパッションがなかったんだなって気づいて。

qbc:はい。

のりこ:あー、私、今まで今後の人生とか考えていった時に、自分にできることは何かっていう視点からでしか、ものを考えてなかったな、って。

qbc:そうですね。今までのお話、機能寄りの視点でしたね。

のりこ:でも、そういう視点だと、本当は自分が何がしたいのか? 自分の好きなことは何か? ていう部分が見つかんないじゃんって、その時にパって気づいたんですよ。私のパッションって、じゃあ何なんだろうって。
それで、たまたま入った美容院で読んだ雑誌に、バースコーディネーターのお仕事が載っていて、読んだ瞬間に「これだー」って思って。そうだ、私ってお産について話すことが好きなんだってことに気がついたんですね。

qbc:おおお。

のりこ:自分の出産体験があったじゃないですか。もう、人生の中で一番がんばったっていう。あの話が私、自分の中でとっても大好きで、いろんなお友達と出産どうだった? みたいな話になった時に、私は1時間でも2時間でも自分の出産について語れるんですよ。
それから、出産が私のキーワードになりました。
それでもう、お産の準備教育をするバースコーディネーターになりたいと思って、勉強をはじめたんですよ。

qbc:夢中になれるものを見つけたと。

のりこ:お産に関わる仕事って、助産師さんとかいるんですけど、助産師になるにはまず看護学校入って、またそこから助産学科に行って、と6年ぐらいかかったりするんですね。しかもフルタイムの勉強で。
海外に住んでて子供育てて、さらに6年間勉強はもう無理だなって思って。
でもバースコーディネーターは民間資格なんですけど、研修を受けたら取れる資格だったので、絶対これを取りたいと思いました。当時は香港に住んでたんですけど、2ヶ月おきぐらいに日本に行って勉強をしました。

qbc:あ、日本の資格なんですか。

のりこ:そうです。これ日本の資格。

qbc:ほほー。日本ぽくないっていうと失礼だけど、ひじょうにすてきな資格ですね。

のりこ:資格にはレベルがあって、そのレベルを一つずつクリアしていかないといけないんです。結局トータルで5年ぐらいかけて、最終的にバースコーディネーターの資格を取りました。それが45歳の時だったんですけど、そこから今妊娠中のカップルとか女性に対して、お産の講座を開いたりしていました。

qbc:カップルでするのいいですね。お母さんだけじゃないんだなっていうのがすごくいい。

のりこ:そうなんです。今は立ち会い出産が当たり前だし。qbcさんてご結婚されてます?

qbc:独身です!

のりこ:じゃあぜひ、将来的に結婚された時には!

3、旦那、会社の清算をするってよ

のりこ:私がそうやってバースコーディネーターの仕事を始める一方で、うちの旦那が、ミッドエイジクライシスじゃないけど、女性みたいに「俺の人生はこのままでいいのだろうか_」って悩むのか、いきなり会社を辞めちゃうんですね。

qbc:男性も悩みます。体は正直ですからね。

のりこ:それで、自分の部下が新しく立ちあげたスタートアップカンパニーに入りました。あ、ベンチャー?

qbc:今は日本でもスタートアップって言いますよ。

のりこ:それで、自分も出資をしてパートナーになりました。
お給料は今までよりも下がるけど、結局彼らの目的って、何年後かに本当にビジネスが成長してうまくいった時に、それ売るわけですよね。売り抜けて大金を手にしてミリオネアになる。そういうシナリオを私たちも描いていたわけです。
ところが、成功するスタートアップってね、本当に一握り。結局最後の方は、本当に資金がショートしちゃって全然まわらなくなっちゃって、彼も毎週のように行ってた出張が、なくなってきたんです。それで今度は、お給料が入って来なくなっちゃった。

qbc:怖いこわい。

のりこ:それでもなんとか貯金崩してやってても、さすがにビジネス自体がうまく行かないなって見えくると、このままじゃ家族共倒れになっちゃうなってなって、そのスタートアップを辞めたんですよ。それで大きな企業に入り直しました。
でもスタートアップのパートナーはそのままなので、会社を清算する仕事が残っているわけです。
そしたらある日、スタートアップの会社の登記は香港だったんですが、香港政府から手紙がきて、会社の負債額を返済しないとあなたは今すぐ刑務所に行きます、みたいな。
ダイレクトにそう書かれた手紙を受け取って「え? マジ?」みたいな。刑務所行っちゃったら、私たち路頭に迷うじゃんみたいな。で、その額っていうのも、いきなりポーンって払える額じゃなかったから、マジどうしようって。すごい本当に、その時に、借金を負うってこんなに怖いことなんだって、今まで味わったことのない怖さを初めて経験しました。
もうこれは返さないとしょうがないし、返すしかないよねって。ものすごく、さんざんものすごく泣いて、どうしようってどん底に陥ってたんですけど、借金返すと覚悟を決めて、宇宙に宣言をして。
額がね、それでも一千万ぐらいだったんですけど、はいじゃあ返しますポーンなんていう額でもないから。

qbc:共同代表ではなかったんですか?

のりこ:そうです。3人いました。でも、たまたまうちの旦那がその時に香港で働いてたんですね。最初に会社を作った彼は、会社を潰すってなった瞬間に香港から逃げて。

qbc:ああー。そういうことかー。

のりこ:もう逃げちゃったの。で、もう一人のパートナーは、もともとアメリカに住んでる人だから。だから、うちの旦那にすべて。

qbc:全部まるかぶりかー。大変ですね、国境って。

のりこ:自己破産とかして借金から逃れられないのかとか、いろいろ考えたんですけど、でもその負債額ってスタッフへのお給料とかね、そういうものだったんです。これ絶対返さないといけないやつだから、もう逃れられないから返さなきゃいけないからってことで、腹を括って、他の共同代表の分も立て替えたっていうか、返ってこないですけども、書類上そうして、返す覚悟をしました。

qbc:なるほど。

のりこ:そしたら、今度は、息子が学校でカウンセリングにかかってたっていうことが発覚したんです。メンタルをやられちゃってて、不安障害でした。全般性不安障害。
子供がそんなね、メンタルに問題を抱えてるって知らなかったんですよ、私。

qbc:おお。

のりこ:ある日、学校から電話があって呼び出されて。実はお宅の息子さんが昨晩、もうこの世から消え去りたいっていう思いで、家を抜け出して道の真ん中に立って、このまま車に轢かれたら誰の責任でもなく自分は死ねるって思ってた、そういうことをしていたと。
それでも死にきれなくって、自分が住んでるマンションの屋上に行って、そこでも飛び降りようかどうかって考えていた、みたいなことを言われて。もうなんかね、まさかっていう感じで。
それ聞いた時、この子本当に死んじゃってたのか、ある日突然気づいたら我が子を失ってたかもしれない、そういう人生初めて味わった恐怖があって、借金の恐怖と子供が死んでたかもしれない恐怖っていうのが一気にタイミングを同じにして私たち夫婦を襲ってきて、なんかね、すごく大変だったんですよ。

qbc:そりゃもう、大変でしょ!

のりこ:この時に私は、とにかくこの子を支え抜くと。最後まで諦めずに支える、どんなことをしてでも、この子を支え抜くって覚悟を決めたんです。
結局、早送りで話すと、借金はちゃんと返し終えちゃったし、転職で旦那の年収上がっちゃったし、息子もいろいろ途中大変だったんですけど、コロナのおかげで彼を苦しめていた問題が全部なくなっちゃったからすっかり回復したんです。
息子の不安症の原因は、大学受験の勉強や試験に対する不安と、学校での人間関係だったんですね。それがコロナで、まず学校行かなくてよくなっちゃったから人間関係の問題がなくなり、コロナのおかげで大学受験そのものがなくなっちゃったから、すっかりよくなっちゃったんです。えー? みたいな

qbc:コロナのおかげと。

のりこ:私たち家族にとっては、コロナで良かったよね、みたいな。

qbc:私もテレワークじゃなかったら、無名人インタビューをこんなにやってなかったですもん。
会社としては、スタートアップだから、コロナの投資冷えで資金調達はハードモードになったりして大変だし、死人も出てる。でも、何かを変えるきっかけになってますよね。

のりこ:それから、旦那本人も、スタートアップを一度やってみて、自分はコーポレートの中で働いた方が自分を生かせるんだなってことに気づいたみたいで。

qbc:それも才能ですよ。私はそれ向いてないし。

のりこ:すごく良かったのは、今ビッグコーポレートに戻ってきて、そうするとスタートアップをやったことある人が少ないから、そこでの経験と知識が、彼のものすごい強みになってるんですよね。

qbc:はいはいはい。そうなんですよ。ビッグコーポレートになると組織の動きが鈍くなるから、ベンチャーを新規事業部を作る感覚で買うんですよ。
硬直化した社内では生まれないイノベーションを、外に求める。それはもう世界的に変わんないですね。

4、もっと自由になっちゃえば?

qbc:残り10分。今後、どのようにして行きたいかといったお話をお伺いしていきたいです。

のりこ:今後は、育児とか人生で悩んでいるお母さんたちと、直接的に関わって、癒していってあげたいかなって思ってますね。

qbc:日本のママ向け?

のりこ:完全に日本のママが対象です。

qbc:どんな感じでしょう? 日本のお母さんたちは。

のりこ:日本のお母さんたちはね、いや私、素晴らしいなって思ってます。日本って、すごく子育てしにくいなって思うんですよね。

qbc:海外在住ママと何人かインタビューしてますが。みなさんそう言われますね。

のりこ:社会とか世間からの「母親とはこうあるべき」「育児はこうするべき」みたいなべきべき感がすごく強くて、だから、ママたちがそこにとらわれすぎちゃっているんです。
それで不要に自分を責めたり、軋轢を感じたりしている。
「そんなんじゃなくていいよ」ってことを言ってあげたい。

qbc:本当、そうです。それめちゃくちゃ言ってほしいです。

のりこ:そんな気にしなくていいよ! って。そういう価値観を打ち破っていきたい。私、海外に住んでるから気楽な立場で発言できるし。

qbc:本当、言ってほしい。

のりこ:男性のqbcさんから見ても、そういう風に思うんですか?

qbc:はい。めちゃくちゃおかしい。

のりこ:だってなんかさあ、電車に乗るのにベビーカー畳む畳まないとかって論争、そういう論争が出る時点で「はあ?」って思います。

qbc:意味が分かんないでしょ? 

のりこ:恐い。

qbc:インタビューでは引きこもりの方も応募してくれたりするんですけど、それはもう、日本のべきべきに捕まっちゃってる人ですね。いやいや、あなたちゃんとできてるし、外に出ればいいのに、でも繊細な子ほど、べきべきに捕まっちゃう。

のりこ:私なんか、シンガポールに住んでて超いいなと思うのは、短パン、Tシャツ、ビーサンで近所を歩きまわって買い物にも行けちゃう、なんだったらデパートにも行けちゃう。誰も気にしない。
でも日本はすごい人の目を気にするじゃないですか。ちょっとしたスーパーに行くにも、ちょっと小綺麗な格好してお化粧してとかしないと、どう思われるか。それがすごい。他人からどう思われるかをすごく気にする。そうすることを期待されている。
それしないと「あなたおかしくない?」みたいな。逆にね。

qbc:そうそうそうそう。

のりこ:だから、そういうのはね、ぶち破っていきたいなと。これからは。

qbc:もう、本当にそうしてください。
もちろん、日本の良いとこはものすごく良いですよ。その他人の目を気にするってことによって、綿密なサービスってのも生まれていると思うし。でも、常にそのサービスをみんなでやる必要はないよな、って。疲れちゃう。

のりこ:人のために何かするってエネルギーが必要で、だからそれに一生懸命になっちゃうと、自分を快適に保つっていうエネルギーまで使い切っちゃうんですよね。
でもやっぱり、自分が幸せでいてこそ、相手も幸せにできるから。

qbc:そうなんですよね。

のりこ:だからもう、いいよ。そんな周りのことなんか。

qbc:本当、そう。東京とかはね、さすがにそういう心性が変わってきてると思うんですけど、まだまだ地方はね。

のりこ:地方に住んでる人ほど、周りからの見えない圧力を肌で感じていますよね。

qbc:あ、でも海外でも一緒じゃないですか? 地方ほど周りの視線が強くなるって。

のりこ:地方はそうなんだと思う。夫はデンマーク人なんですけれど、彼はコペンハーゲンっていう都市に住んでた人だけど、田舎の人はものすごく保守的だし。それこそ外国人、アジア人の女の子と結婚してるような、カラードの奥さんなんか家に連れて帰った日には、すごく居心地悪くなると思う。特に年齢が上の方なんかは。

qbc:歳もかー。

のりこ:こういうSNSも使わないだろうし。

qbc:それでは、最後に言い残したこと、これだけは言いたい、ということはありますか?

のりこ:qbcさんと話してて気づいたのは、自分の中に、日本の古い価値観をぶっ壊したいっていう気持ちがあるんだってことですね。実は。
言語化したことがなくて、気づいていなかった。だから本当、みんなもっと自由になっちゃえばって。

qbc:うんうんうんうん。

のりこ:あ、ちょっとごめんね。あと2分、伸ばしていいですか?

qbc:もちろん!

のりこ:価値観をぶっ壊すって、小泉首相みたいだけどさ、もっと自由になっちゃえばっていうキャッチフレーズは、実は私、ある方からもらったものなんです。
2年くらい前にね、杉森絵美さんという方がいて、彼女がワンコインキャッチコピーっていうキャンペーンをやられていたんです。自分のプロフィール写真、セルフィーを送ると、彼女が考えたキャッチコピーと一緒に写真を戻してくれるってことを。
それで、私、その時に、自分がバニーガールになった写真を送ったんですよ。その時のキャッチが「もっと自由になっちゃえば」だったんですよ。それで、すごい今、それが蘇ってきたっていうか。それがここにつながるのかって思っちゃったんですよ。

qbc:おおお。なるほど。

のりこ:良かったら、ぜひ、そのキャッチのセルフィーを見てください、qbcさん! 後で勝手に送りつけるから、メールで。

あとがきのところで載せるよ!

qbc:お待ちしてます! 
ちなみに、10代のころから海外に行きたいという希望があったんですか?

のりこ:たぶんね。子供のころから。なんか日本の社会が窮屈だったんですよ。

qbc:おもしろいですね。

のりこ:生まれてくる前から決めてんですよ。qbcさんは、海外へ住みたいとか思ったことないですか?

qbc:私はね、たぶん、どこの国に住んでもあんまり変わらないと思う。私は、どこにも属していないって感じが、子供のころからあったんです。人と仲良くならないわけじゃないんですけど、アウトサイダーというか。
いつも砂場を外から眺めてるんです。

のりこ:日本社会の中で、男性であるプレッシャーとか期待とか、こうあらねばならないみたいなことは、感じますか?

qbc:あー。それはないですね。逆に、女性に対して助成でごめんねってちょっと思いますね。有利でごめんねって。

のりこ:じゃあ、ずっと自由なんだね。

qbc:若いころはありましたよ、20代とか。でも、歳をとるごとに、これって自分の思いこみじゃん、日本の常識なだけで世界標準ではないじゃんって。
だから、いろんな国のいろんな人の話を聞きたいんですよね。それで無名人インタビューやってるところもあって。でも、私は日本語しか喋れないから。それが今のひとつのネックですねえ。

のりこ:あーそうだよね。英語話せたらもっといろんな話が聞けるよね。

qbc:翻訳使えば行けると思うけど。

のりこ:その壁、超えられたらもっと面白いですよね。英語もできて中国語もできて、あとスペイン語もできたら、もう大丈夫って感じじゃない? 世界制覇できる。

qbc:でかい話だなあ。

のりこ:誰か通訳を雇っちゃえばいいんじゃないですか?

qbc:あーそれもいいですね。あ「無名人」ってなんて言います? not famous?

のりこ:有名人はfamous peopleだけど。なんだろ。ordinary people?

qbc:おっとそろそろ時間。すみません。ちょっとオーバーしてしまって。

のりこ:とんでもない。こちらこそ。最後にメッセージを引き出してもらって良かったです。

qbc:ありがとうございます!

のりこ:ありがとうございます。私から、最後にバニー姿のキャッチコピーをメールで送らせていただきますから。

qbc:お待ちしておりますので!

バニーがハマりすぎててびっくりしました!!

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あとがき

けっこう長丁場の原稿になりました。皆様、読むのお疲れさまです。
ありがとうございました。
qbcの海外経験がうすくて、それで多めに掲載した感じになってますかね。
直近で起きたというアンデルセン家の事件についてはかなありはしょってしまった感のあるインタビューではありましたが、結果印象に残ったとは日本における女性の立場問題というか、広く言うと日本文化論になったのかなと思っています。
私、さいきんは、価値観に新しい古いもないよなと思ってます。
たとえば戸籍制度についてもべつに古い制度だと思わなくなっています。単に、そういう制度で、それを維持して大切に思う価値観も古いとか思わないです。戸籍をいらないと考える価値観も新しいとは思わないし。新旧の問題ではなくて、現代の生活の中で、どちらがより人を幸せにするか、楽しくするか、自由にするか、っていう観点です。
そういう時に、新しいか古いか、は関係ない。
今回の日本のママたち、もっと自由になっちゃえば? というメッセージは、シンプルに、現代社会にフィットしていない感覚にとらわれることないよ、ということだと思っています。
そういう提言を、国内にはいない日本語話者が伝えてくれること、こーの外国語参入障壁の強い日本語社会ではちょう重要なんだよなって思ってます。
うとまれることもあるのかもしれないけれども、ご活躍をお祈りしおります!
って私もがんばりますが!!

編集協力:有島緋ナさん

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