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大学授業一歩前(第138講)

はじめに

 今回は法哲学がご専門の吉良貴之先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございました。是非、今回もご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えてください。

A:法哲学という分野を専攻しています。法学部でやっている哲学で、「法とは何か」「正義とは何か」みたいなことを考えています。もっというと世代間正義論といって、まだ存在しない将来世代になぜ配慮しないといけないかとか、あと最近はいわゆる「ナッジ」の何が悪いのかとか、そんなことがテーマです。
 出身は高知市で、法学部に進学して弁護士を目指していたんですが、もともと哲学や文学が好きなこともあって、こういう分野に落ち着きました。いまは愛知大学というところで教えています。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。

A:好きなことすればいいと思うので別にないんですが、あえていえば、仕事をし始めると驚くほど時間がなくなります。なので時間のかかることをやるのがいいでしょう。私はひたすら映画を観ていました。以下の記事をご覧ください。


 一言だけ説教臭いことをいうと、アルバイトはしすぎないほうがいいです。やっているときには嫌なことも含めて充実感があってのめりこみやすいんですが、後に生かせる経験かどうかは考えてほしいです。もちろんお金の問題はあるんですが。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになりますか。

A:授業をしっかり受けることです。ちゃんと毎回出て、ノート取って、予習復習をして、というのをこなせば、現実的にもうそんなに他のことはできないでしょう。大学のカリキュラムって案外よく作られていて、一通りちゃんと打ち返せば単に学問的なことだけでなく、仕事での調査とか事務処理とかコミュニケーションとか、いろんなことが身につきます。最近は就活で「ガクチカ」という言い方がありますけど、普通に「勉強」でいいんですよ。それを評価しないのは勉強しなかったからだし、今もインプットしていないということです。そんな会社はつぶれるので行かないほうがいい。

学ぶことの意義

Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えてください。

A:「話題作り」だと思っています。インプットし続けていないと同じ話ばかりするようになるし、それは相手にとってつまらないだけじゃなく、何より自分が嫌いになるんですよね。もちろん単に雑学的につまみ食いするのも楽しいんですが、学問というのは膨大な積み重ねのうえにちょっとでも新しいことを言うための仕組みなので、一度乗ってしまえば本当に効率がいいし、他のことにも応用が効きやすいんです。

オススメの一冊

Q:オススメの一冊を教えてください。

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A:つい最近出た本から紹介すると、横大道聡・吉田俊弘『憲法のリテラシー:問いから始める15のレッスン』(有斐閣、2022年5月)が、分野を問わずおすすめです。
 大学だと一年生で一般教養の憲法の授業を受けることが多いと思いますが、その後にこの本を読むと、憲法というのがもっと他の形でもありうるという、憲法的想像力といったものが身につきます。単純に憲法改正ということじゃなくて、制度をうまく生かす力ですね。私たちの生活はあらゆるところで制度にがんじがらめになっていますが、そんな世界を自分にとってちょっとでも生きやすい場所にしていくアイデアが詰まっています。

メッセージ

Q:最後に学生へのメッセージをお願いします。

A:これからいろんな人に出会っていくでしょうが、学ぶべき相手を見定めてほしいと思います。基準はわりと簡単で、勉強し続けているかどうかです。自分が学生だったころの数十年前の常識で説教してくる大人は有害なので、すぐ逃げてください。新しい話題を追いかけているように見えても、単にネットで仕入れたり、飲み会で聞いたことの受け売りだったりでは仕方ありません。知識をちゃんと統合できるだけの芯があるのかどうか、というのが大切です。というか、自分自身もそれを身につけてください。

おわりに

 今回は法哲学がご専門の吉良貴之先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございました。

 大学のカリキュラムって案外よく作られていて、一通りちゃんと打ち返せば単に学問的なことだけでなく、仕事での調査とか事務処理とかコミュニケーションとか、いろんなことが身につきます。 

 基本的なことかもしれませんが、授業が基礎の基礎でありとても大事だと私自身も再認識しました。授業が学びの水先案内人だと思います。次回もお楽しみに!!

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