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大学授業一歩前(第127講)

はじめに

 今回はフランス文学がご専門の鹿島茂先生にインタビューを致しました。大変お忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございました。是非、今回もご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:フランス文学が専門の鹿島茂です。以前いた明治大学では集団の無意識に関心を持ち、授業などを行っていました。
 吉本隆明の「共同幻想論」をもう一度考え直すという連載をPR誌で続けています。また、今は「共同幻想」と「個人幻想」を繋ぐ場としての家族についても関心を持ち研究しております。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えて下さい。

A:大学で授業を持っていた時にいつも言っていたのですが、シラバスで紹介されている授業では、むしろつまらなそうな授業を取るべきだと考えています。なぜなら、まず先生を独占することが出来るからです。少人数の方が授業の内容をより身に付けることが出来るはずです。また、18歳前後の時の面白いという感情は一時的な関心に過ぎないものです。30歳や40歳になった時には異なる関心を抱いているでしょう。
 取った方が良い授業としては統計学を挙げることが出来ます。人文科学においても真理を求める際の一つのツールとして非常に有効ですし、統計学の基礎を身に付けておけばデータを用いて人が騙そうとしている際のトリックを見破ることが出来ます。
 これはあくまで仮定の話ですが私が大学生の頃に戻ったとしたら、図学の授業を取るだろうと思います。視覚を表現する手法として非常に魅力的だからです。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになりますか。

A:ルネ・デカルト以降の哲学においては理性とはどのようなものかが哲学の中心テーマになりました。私はこの理性を突き詰めれば、損得勘定であると考えてます。
 例えばフランス語には「理性結婚」という言葉がありますが、これは恋愛感情によらない結婚という概念です。ただ、この損得勘定というものは案外難しいものでもあります。
 何が一番自分にとって得かを考えると、「自分だけ得」というのからどんどん遠ざかることになります。このことを考え抜く力が大学生には求められるでしょう。

学ぶ意義

Q:ご自身にとっての学ぶ意義を教えて下さい。

A:一つの専攻を究めることと同時に、様々な分野の方法を学び取ることも重要です。もちろん、それぞれの分野によって方法は異なります。
 一つの分野を究める際に限界を感じる時に異なる分野の方法を用いて、自分の専攻する分野の壁を乗り越えることが出来ます。過去に独創的な研究をしてきた人達は、他分野の方法を常に意識していたと思います。

オススメの一冊

Q:オススメの一冊を教えて下さい。

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A:ルネ・デカルトの『方法序説』がオススメです。とても難しい本ですが、是非いちど読んでみて下さい。デカルトは理性が人間に平等に与えられたものだと考えており、その理性を如何に上手く使うのかについて説いたのが『方法序説』です。
 過去スコラ哲学において所与とされていた様々な前提を疑い、本当の真理を探究した一冊です。(画像はルネ・デカルト著・ 谷川多佳子訳(1997)『方法序説』岩波文庫です)

メッセージ

Q:最後に大学生へのメッセージをお願いします。

A:大学四年間は言わば最後のモラトリアムになります。長期休暇の制度のない日本では本当に最後のモラトリアムです。なので、出来る限り様々なことを勉強すべきです。その際に授業というのは効率が良くこれを使わない手はありません。過去の膨大な知を90分程度で先生が簡潔にまとめてくれるのですから、効率良く学ぶことが出来ます。
 また、何が本当に自分に得なのかは是非考え抜いてください。アルバイトを多くすることが得なのか、授業に出ることが得なのかなどを長期的な視点に立って考えてみて下さい。大学では損な授業は一つも有りません。

おわりに

 今回はフランス文学がご専門の鹿島茂先生にインタビューを致しました。大変お忙しい中お時間を割いて頂きありがとうございました。

大学で授業を持っていた時にいつも言っていたのですが、シラバスで紹介されている授業ではむしろつまらなそうな授業を取るべきだと考えています。

 その時の面白そうという感情に惑わされること無く、本当に面白い授業を見つけることが大事なのだと私も改めて考えました。次回もお楽しみに!!



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