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大学授業一歩前(第137講)

はじめに

 今回は予備校で現代文を教えてらっしゃる安達雄大先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中の作成ありがとうございました。是非、ご一読下さいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えてください。

A:安達雄大です。東海地方をあちこち回って、現代文を教えております。大学生・大学院生とズルズルお勉強(?)をしていたら30歳になってしまい、「こりゃいかん!」ということで、とにかくその時に食っていける手段として手元に残っていた「受験教育」を選びました。従いまして、社会に出てからこの方、塾・予備校の講師しかやったことがありません。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。

A:自分にふさわしい過ごし方に自覚的であることです。
 皆さんは多感な時期ですから、人から「ああいう生き方」「こういう生き方」を言われると、それに動揺してしまうかもしてません。
 でも、世の中には、「良いやり方」と、「悪いやり方」と、「自分のやり方」があります。
 皆さんは今までに、自分の特性に応じてそれぞれに「自分の性に合った過ごし方」を会得してきているはずです。その「自分が一番呼吸しやすい過ごし方」をそのまま実践なさればよいのです。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力を教えてください。

A:上の「オススメの過ごし方」と連動するのですが、「締め切りを自分で設定する能力」です。
 僕にはこの能力が致命的に欠落していたので、世界の方から必然的にやって来る締め切りの直前ギリギリまで無為に日々を楽しんで、その結果「クソのヘにもならないものを出して大目玉」か、「締め切りを守れず提出ならず」かのどちらかに終わるということを、何度も繰り返していました。
 何度も先延ばしにできる部類の締め切りもあるにはあります。でも、人生には絶対に延ばせない締め切りもあるんです。僕はそこを見誤り、30歳まで人生を棒に振りました(今、取返し中です)。
 大学では(特に大学院では)、高校までに比べて短期スパンでの締め切りが減り、長期スパンでの大きな課題が多くなります。だからこそ、自分自身の意志で締め切りをちゃんと設定し、それを順守することで、長~いスパンの締め切りを自分の設けた締め切りで区切っていける力が必要になります。

学ぶことの意義

Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えてください。

A:将来出会う他者と意見が合わなくなった時、相手がどういう世界観に立脚してそういう意見を言っているのかが、見えやすくなることです。
 大学で勉強すると、学者先生それぞれの仕方で世の常識をひっくり返しています(僕に言わせれば、世に有名な思想家・研究者はみんな変人です)。そういう先生方の、世の常識をひっくり返す思考をたくさん知っていると、自分と違う世界の見方を何層にも持つことになります。将来社会に出てから、自分と何をどうしても意見が合わない人が出てきた時、この層が厚いと、「ああ、こいつはこういう見地に立っているんだな」というのが見えやすくなります。逆にそれが薄いと、ただの「他者蔑視」「他者排斥」しかできない人間になります。
 大学(院)というのは、他人の思考を想像する幅を「思想」レベルで広げる最後のチャンスなんじゃないでしょうか。

オススメの一冊

Q:今だからこそ大学生に読んでおいてほしい一冊を教えてください。

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A:渡部昇一(1976)『知的生活の方法』(講談社現代新書)です。
 どんな「内容」の本を読みたいか、読むべきかは、人それぞれに、ご自身の抱えている人生の業によって違ってくるだろうから、特定の内容に特化しないで、何でもいいから「とにかく本を読みたくなるような本」を紹介します。…とすると、僕が紹介するのはこれです。
 著者ご自身の人並外れた精神力に由来する、あるいは時代に由来する、一部極端な論説も含まれますが、これを読んだ時は、僕はとにかく本を読みたくて仕方なくなりました。
 本から遠い生活をなさっている方も、既に近い方も、これをお読みになって、ご自身の糧となる本に出会っていただければと思います。

メッセージ

Q:最後に学生に向けてのメッセージをお願いします。

A:大学生のうちに、何でもいいから一度でいいから、大失敗して酷い目に遭ってください。
 君たち若者は、人によってモノは違うでしょうが、若さゆえに、世界について何かしらの根本的な勘違いをしています。それが何なのかは失敗して酷い目に遭って悩みに悩む中で分かってきます。分かればそれが自分の社会に出てからの行動指針の目安になります。そういう一本の「柱」がある人間の人生は、ブレません。
 幸か不幸か、僕は酷い目に遭うのが遅くなったので、ちゃんとした指針を持った人生を歩み始めるのも遅くなりました。願わくば、君たちにおいては、大学卒業までにそれが来ますように。

おわりに

 今回は予備校で現代文を教えてらっしゃる安達雄大先生に記事を寄稿して頂きました。大変お忙しい中の作成ありがとうございました。

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 先生の著書『大学入試対策 初歩の初歩 安達雄大のゼロから始める現代文』KADOKAWAには私自身も現代文を学び直す時にお世話になりました。こちらも是非、ご一読下さいませ。

世の常識をひっくり返す思考をたくさん知っていると、自分と違う世界の見方を何層にも持つことになります。将来社会に出てから、諸君と何をどうしても意見が合わない人が出てきた時、この層が厚いと、「ああ、こいつはこういう見地に立っているんだな」というのが見えやすくなります。

 学ぶことで視野が広がるとはまさにこのことを指しているように思います。他者の立場を理解出来る。そのツールとしても学問はとても有効なはずです。次回もお楽しみに!!



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