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メタバースとは何か?なぜ注目されるか?今後の行く末と挑戦について考察

1. メタバースとは何か?

1.1. メタバースの起源

拡張現実・仮想アバター・永遠の存在…「メタバース」というワードを聞くと、神秘的で近未来的な世界が思い浮かびます。

30年前のSF小説『スノウ・クラッシュ』は、現実世界と平行している仮想空間ーメタバース(Metaverse)を描き出しました。その仮想空間の中で、主人公は本人とよく似たアバターを使い、自らの王国を築くことができました。

そして30年後の今は、小説のストーリーで登場してきた架空のメタバースは、ついに現実味を帯びつつあります。Robloxは初めての「メタバース銘柄」として2021年3月にナスダックに上場して、初日の時価総額は450億ドルに達しました。これをきっかけに、メタバースという概念はVC/Startup/Tech界隈で一気にブームになりました。

そして、Facebookも自社の社名を「Meta」に変更し、本格的にメタバース領域に進出しました。今後1兆ドル(約110兆円)のビジネスチャンスがあると見込んで、直近10年間は収益が見込めないとしても、年間100億ドルほど巨大な投資を行う予定です。

1.2. メタバースの定義

メタバースに明確な定義はありませんが、一言でいうと、XR/ブロックチェーンなど最先端なテクノロジーによって支えられる、現実世界と平行しながらもインタラクティヴに交流できる仮想空間です。

メタバースは単なるゲームプラットフォームでも、ソーシャルプラットフォームでもありません。確かにRoblox社もゲームを作る会社であって、現段階で最もメタバースを体感できるのはゲームです。また、Facebookの参入はSNSを連想させやすいです。しかし、メタバースの本質は、今まで人類が築いてきた社会文明を、デジタルの仮想空間で再構築することだと思います。そのため、メタバースは仮想空間でありつつも、実は経済・政治・文化・テクノロジーなど様々な領域に渡っており、より高度化されたデジタル社会だと言えます。

従って、メタバースは幾つかの要素を包含しています。

  • ユーザーは無差別的に参加可能:最先端のテクノロジーによって、ユーザーは物理的な制限がなく、誰でもメタバースという社会エコシステムに参加できます。

  • 現実世界を軸にした社会の再構築:現実世界に住む人間は、自分の意思を持ってメタバースで仮想アバターを操作して生産活動を行い、現実世界ともインタラクティヴに交流する。

  • 現実世界を超えた「リアル」な存在:メタバースでよりリアルな没入体験をしつつ、現実世界で起きるイベント/事件もリアルタイムで把握することが可能である。

  • 人類の社会文明の進歩:テクノロジーと社会文明の進歩がメタバースの出現をもたらした。メタバースはより高度化されたデジタル社会である(しかし、まだ究極の最終形とは言えない)。

1.3. メタバースの特徴

メタバースの特徴について、様々な業界人が各々の見解を示しています。メタバースについて詳しい米ベンチャー投資家のMatthew Ball氏は、2020年にメタバースの7つの条件を示しています。

  1. Persistent(永続的である) ⇒ 一時停止やリセットなどは存在しない

  2. Synchronous and live(同時性&ライブ性) ⇒ 実社会と同じようなリアルタイム性

  3. No cap to concurrent participants(同時参加人数無制限) ⇒ 同時参加人数に制限はないが、ユーザーそれぞれが存在感を持つ

  4. Fully functioning economy(完全に機能した経済) ⇒ 個人や企業がモノの制作・保有・投資・売買などの活動が可能

  5. Both digital & physical worlds(デジタルと物理、両方の世界にまたがる体験) ⇒ オフライン/オンライン、オープン/クローズ、プライベート/パブリックに跨る

  6. Unprecedented interoperability(今までにない相互運用性) ⇒ プラットフォームの垣根がない

  7. Wide range of contributors(あふれるコンテンツと体験) ⇒ 数多くの企業/個人が大量なコンテンツや体験を生み出す

また、RobloxのCEOであるBaszucki氏は、メタバースの特徴を8つにまとめています。

  1. Identity(アイデンティティ)

  2. Friends(友達)

  3. Immersive(没入感)

  4. Low Friction(軋轢が少ない)

  5. Variety(多様性)

  6. Anywhere(地理的な制限なし)

  7. Economy(経済システム)

  8. Civility(社会的規範)

1.4. メタバースを構成する7つのレイヤー

メタバースはどのような技術やサービスが組み合わさることで作られていますか?その構造を理解する上で参考になるのは、ゲームプラットフォームを提供する米BeamableのCEOであるJon Radoff氏の「7つのレイヤー」という分類方法です

■メタバースを構成する7つのレイヤー(バリューチェーン)

  • Experience(体験)

  • Discovery(発見)

  • Creator Economy(クリエイターエコノミー)

  • Spatial Computing(空間コンピューティング)

  • Decentralization(非中央集権)

  • Human Interface(ヒューマンインターフェース)

  • Infrastructure(インフラ)

メタバースの7つのレイヤー
メタバースの各レイヤー(サプライチェーン)に該当する企業/サービス

2. メタバースの成長要因は?

なぜメタバースが注目されるようになったのでしょう?その成長要因について、テクノロジー・消費者ニーズ・投資環境の面で分析してみたいと思います。

テクノロジー面では、メタバースを支える以下六つのコア技術が成熟しつつあります。AI・ブロックチェーン・IoT・5Gは比較的急速に発展しており、製造業・フィンテック・オンライン医療などでの活用が増えています。ゲームも産業として非常に稼ぐ能力が高いため、早いスピードで技術が進歩し続けています。一方、仮想現実(XR)は他の技術に比べてペースが遅く、一般消費者への普及にまだ時間がかかりそうです。

  • ブロックチェーン:ハッシュ関数・コンセンサスメカニズム・分散型台帳・スマートコントラクトなどのブロックチェーン技術の発展により、安全で機密性の高いデータ保管・追跡ができるようになり、ユーザーの権益とトランザクションの透明性を担保できるようになりました。

  • IoT:すべてのモノがインターネットに繋がることにより、効率的にデータやコマンドを管理することができ、リアルタイムで仮想と現実のインタラクティブな交流と共存を実現します。

  • 5G・6G・クラウド・エッジコンピューティング:より効率的でスムーズな大量データ送信を担保することで、エンドデバイスの軽量化と低遅延を実現します。

  • AI:システムの自己学習能力は、ユーザーとシステム間のインタラクティブな交流と、メタバースの運営効率の向上に大きな影響を与えます。

  • ゲーム:ゲームエンジン・3Dモデリング・リアルタイムレンダリングなどの技術は、 様々なシナリオで高品質なデジタルコンテンツと素材の製作をサポートします。

  • 仮想現実(XR):VR・AR・MRなどの技術は現実とリアルの境界線を打破し、簡単によりインタラクティブでリアル感の強い没入体験を提供できるようになりました。

消費者ニーズの面でいうと、インターネット・モバイルゲーム・電子決済・ソーシャルコマースなどのサービスの一般消費者への普及は、メタバースの構築にも拍車をかけています。人々は、デジタル化によって便利なライフスタイルを実現しようとする意欲が高まっています。また、Z世代を筆頭とする若者にとって、デジタル社会はすでに当たり前の日常であり、その上で彼らはメタバースのような新しい概念にも強い関心を持っています。

投資環境もメタバースに追い風を吹かせています。この数十年はIT業界も徐々に安定期に入り、成長率が鈍化する傾向にあります。投資家たちも次の成長の起爆剤になるネタを探している中で、メタバースが出現する途端に、一気に巨額な資本が動いてバブリーな形になっています。

3. メタバースはどこに向かっていくか?

  • ゲームはメタバースの原型であり、現実世界の延長として、メタバースは人々の娯楽ニーズを満たすことから始まります。さらにソーシャル機能を充実させることで、感情と帰属ニーズを満たすようにしています。そして、メタバースは今後自己啓発・自己実現ニーズも満たせるようになるはずです。したがって、今後も以下のサービス領域はメタバースの普及ポテンシャルが高いと思われます。

    • ゲーム:メタバースの原型として、娯楽ニーズを満たします。

    • SNS・恋活・婚活:ソーシャル機能により、感情と帰属ニーズを満たします。

    • ショッピング・決済・取引:取引の安全性と透明性を担保することにより、フェアで効率的な経済環境とデジタル社会を実現します。

    • 創作・プロダクト開発:消費者はメタバースの中で、現実で実現できないことを達成し、自らの世界を築き上げることにより、自己実現のニーズを満たします。

    • 教育・トレーニング:メタバースの中でスキルアップ図ったり、自分の存在意義を追求することに、自己啓発のニーズを満たします。

  • メタバースの概念が知られるようになってまだ間もないですが、インターネット業界の発展の軌跡を踏まえると、将来的に本当の意味でのメタバースが形になるまでは、三つのフェーズを通過しなければならないかと思います

    • 【~5年】戦国時代のように各プラットフォームが乱立

      • 直近5年以内は、メタバースに進出する各企業は、SNSか、ゲームか、もしくはデジタルコンテンツのどちらかに重きを置いて、先ずは独立したプラットフォームを構築することに注力するでしょう。それと同時に、VR/ARデバイスのバージョンアップと体験の向上も一つ重要な課題になります

    • 【5~15年】多機能を備えるエコシステムが形成

      • この段階においては、5GとVR/ARがすでに一般消費者に普及しています。そして競争に勝ち残った各メタバースのプラットフォームは、協業やM&Aなどを通じて、SNS + エンタメ + デジタルコンテンツ + 決済・取引などの多機能がワンストップに統合されたエコシステムを構築し、さらに消費者を自分たちのエコシステムに囲い込もうとします

    • 【15年~】本当の意味でのメタバースへの進化

      • この段階から、それそれのエコシステムが相互の通信を実現するための標準プロトコルを整備して、協定を結ぶことによって、全体として本当の意味でのメタバースに進化していきます

  • メタバースの最終形態として、全ての人/モノがデジタル化され、唯一無二のラベルが張られるようになるでしょう。しかし、メタバースは決して現実世界を置き換えられるのではなく、むしろ現実世界に生きる人々がより楽しく、便利に勉強・仕事・生活できるようにすることこそが、メタバースの存在意義だ思います。

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参考文献

https://www.businessinsider.jp/post-245039

https://www.moguravr.com/future-tech-meetup-6-report/

https://blog.members.co.jp/article/47760

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00596/00001/

https://venturebeat.com/2021/01/27/roblox-ceo-dave-baszucki-believes-users-will-create-the-metaverse/

https://medium.com/building-the-metaverse/the-metaverse-value-chain-afcf9e09e3a7