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#性別知ってどうするの?  採用活動の当たり前を変えた、ラックス ソーシャルダメージケア プロジェクト

-採用応募の際の履歴書に、顔写真を貼って、フルネームと性別を記入する-

それって当たり前なの? 
改めて考えてみませんか?

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#性別知ってどうするの ? 
2020年3月に始動した「LUX Social Damage Care Project(ラックス ソーシャルダメージケア プロジェクト)」
このプロジェクトの第1弾として、2020年度の採用活動より、ユニリーバ・ジャパンの全ての採用選考の過程で、顔写真の提出や性別に関する一切の項目をなくし、個人の適性や能力のみに焦点を当てた採用選考をスタート。

「採用の履歴書から性別表記をなくす」
今まで当たり前だったことを変えるのは、リスクのある試みでもあり、一度始めたら簡単にやめることはできないというプレッシャーもありました。
それでも「この活動で、無意識にある性別に関する固定観念について気づきを与え、日本がより性別に関係なく輝ける社会になってほしい」
そんな思いを持ってプロジェクトを遂行してきた河田瑶子。

今回は、この取り組みの背景や、今どんな問題があるのか?そして今後の展望についてお伝えしていきます!

■「採用の履歴書から性別表記をなくす」ってどういうこと?

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ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社
ラックス マーケティング 河田瑶子
担当業務内容:ブランドキャンペーン戦略
趣味:散歩、ピクニック

――まずは、今回のプロジェクトの内容について教えてください。

ユニリーバ・ジャパンでは「LUX Social Damage Care Project」プロジェクトの第一弾として、全ての採用選考で、顔写真の提出や応募者への性別に関する一切の項目をカット。個人の適性や能力のみに焦点を当てた採用活動に変えました。社会で無意識に起こっている性別や容姿への先入観を取り払うべく、活動に賛同いただいたパートナー企業さんと一緒に、アクションを起こしています。

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――なかなかチャレンジングなプロジェクトですよね!なぜ今、この取り組みに至ったんですか? 

ラックスは去年でちょうど31周年を迎えたんですね。当時の日本と言えば、ちょうど男女雇用機会均等法が法律として整い、働く女性が出始めた時期。そこにラックスはビューティブランドとしてこれから社会進出をしていく女性に「髪からあなたに自信を与えます」と応援の意味を込めて誕生しました。

現在は、女性活躍、女性のキャリアといったワードが度々話題になるように、女性が働いたり、自分がやりたいことをより実現しやすい世の中にはなりましたが、グローバルで見ると日本はジェンダーランキングでもまだまだ下位。女性の役割についても、こうあるべきという形が無意識レベルで社会に擦り込まれているのではないかと思っています。

そんな現状で、まずどういうふうに社会に気付きを与えられるの? ラックスとして女性が輝ける社会にするために何ができるの?を考えるところからスタート。特に女性のキャリアについては、職業選択の時点から結婚、出産のタイミングでの働き方の変化など、職を通じた人生のターニングポイントが多いですが、今回はその中でも一番のスタートである”採用”において画期的な取り組みができないかと思ったのがきっかけになりました。

――そのなかでも特に、書類選考時の履歴書を変えることに絞ったのは、何か意味があったんですか?


PR_調査結果

ユニリーバでは、採用で焦点を当てるべきことは個人の適正や能力だと考えています。そこに性別は関係ない。でも、今の社会って、性別に関係なく輝けるような環境だと言い切れますかね? ラックスが、採用の書類審査を担当することがある会社員、会社経営者424名にアンケート調査をしたところ、4人に1人は「採用過程において、男性と女性が平等に扱われていない」、さらに44%の人が「写真の映り方の印象が、採用の有無に影響する」と回答しているんです。

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だからこそ、最初の入り口である履歴書の様式を変え、もっと個人の能力や志望動機など、見るべきところに注目した方がいいということは伝えたいメッセージでした。

■思いを実現するまでには数々のハードルが……

――当たり前を変えるという大胆な取り組み。企画から実行までは大変なことも多そうです……(汗)。

この取り組みを最初に提案した際には「コンセプトは素晴らしい」と社内でもすごくいい反応を得られて、内容に反対する人はいませんでした。ただ、実現までのハードルはかなりありましたね。現実的にこれを進めるには、採用に支障が出るんじゃないかという懸念も多くあり、人事の担当部署と何度も話し合いました。

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例えば中途採用では、応募者はエージェントごとに用意された共通の履歴書と職務経歴書を使用するのが一般的。そのためユニリーバだけ性別や顔写真の記載を禁止することで、エージェントから敬遠されるのではないか、紹介してもらう人材が減ってしまうのではないか。そういうリスクに対して見合う取り組みなのか?など、懸念点に関して、何度も何度も議論を重ねました。

最終的に、この取り組みをやる意義、これを通してどういう社会を創っていきたいか、今あるジェンダーの問題に対して、ラックスだからこそできることをしていきたいと訴え続け、社内を説得。社会にインパクトを出し、メッセージ性を高めるためにも、今のタイミングでローンチするという決断に至りました。

――実行までの粘り強さと情熱……さすがです!こういった取り組みは、世界各国のユニリーバの中でも日本だけとか?

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そうですね。世界各国のユニリーバの中でも、性別によるバイアスをなくすことを理由に、名字だけの記入という方法に踏み切ったのはユニリーバ・ジャパンだけです。

グローバルカンパニーであるユニリーバは、新卒採用の際に使用するフォーマットは全世界で共通のもの。そのため日本だけ独自の変更をすることは当初難しいと言われていました。ただ、ここでもコンセプトや思いを丁寧に伝えていき、グローバル本社と根気よく交渉。結果、性別の選択欄を廃止できたほか、氏名を記入する欄への名字だけの記入も認められることに。私たちが実現したいこと、今やりたいという思いが伝わったのはうれしかったですね。

■ローンチ後は、想像以上にポジティブな反応が多数

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――実際に運用してみて、周りの反応ってどうでしたか?

既に取引のある人材紹介のエージェントには、性別の分かる項目を除いた履歴書を作ってもらうことになるので、手間が増える分敬遠されるかなと不安ではあったのですが。実際はラックス側の想いを前向きにとらえていただけたので、安心しました。

エージェントを集めて取り組みの説明をさせていただいた際にも「とってもいい取り組みですね」「ぜひぜひやりましょう!」とポジティブな反応の声が多かったです。マイナスにとらえるのではなく、どうやったらスムーズに運用できるかを共に考えていただけたこともうれしかったですね。結果的に現在は、エージェント側が顔写真のないフォーマットに変更することにご理解とご協力をいただけているので、当初想定していたような問題は起こりませんでした。

その他、様々な会社の人事担当者さんからも反響をいただき「どうやって実現したんですか?」「どのように運用するんですか」と興味をもっていただいています。反応があった会社さんに向けてはセミナーも開催。現在はラックスの取り組みに国内22の企業が賛同し、三井化学、堂島麦酒醸造所、インターワークスなど様々な会社さんで、選考時に性別の記入や顔写真が不要となっています。

今までの常識を変えることは、すごく勇気のある一歩。それでも私たちの取り組みが気づきになり、採用時のジェンダーをなくすアクションを起こしてくれる会社が増えているのは本当にうれしいですね。この動きは今後もどんどん増やしていきたいと思っています。

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賛同企業の一部。今後も増やしていくことが目標。

――ハッシュタグ#性別知ってどうするの?もSNSで話題になりましたよね。

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「#性別知ってどうするの」は、採用時の履歴書についての意見だけでなく、今まで気づかずに持っていた固定観念やジェンダーギャップに関する投稿も多く、ポジティブな反応がほとんどだったことも手ごたえを感じました。特にTwitterは若い層が多く「そもそもなんで写真が必要だったんだろう」と、今回の取り組みに気付きを示してくれる声も多数あり、うれしかったですね。

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■履歴書を変えることがゴールではない!

――ぜひぜひ今後の野望について教えてください。


今回の「LUX Social Damage Care Project」の目的は、履歴書のフォーマットを変えることでなく、あくまで誰もが性別に関係なく自分らしく輝ける社会を創ること。今回の履歴書のフォーマット変更は、あくまで、みなさんが無意識に持っていた性別の固定観念に対して、気づきを与えるための第一歩です。

現状、日本ではまだまだ女性だからこう、男性だからこう、という無意識LEVELの固定観念が存在しています。今回、顔写真、性別欄やフルネームの記入などを取り除いたことで、みなさんの心の中にあった「当たり前」を疑うきっかけをつくることができたのではと考えています。この活動を知っていただくことで、無意識のジェンダー・バイアスに気づき、会社や家庭で話し合ったり議論をするきっかけになればうれしいですね。

そして最終的なゴールは、男女平等、女性活躍という言葉さえもなくなり、一人一人が自らの能力を生かして自由に活動ができること。そんな社会に変えていくために、これからもラックスとして何ができるのかを考え、発信し続けていきたいです。