芝刈り作業の危険を取り除き、人手不足を補う。自立走行型芝刈りロボット「Scythe」への期待
夏は草がよく生い茂る季節です。稲や野菜がよく育つ一方で、芝や雑草など伸びてほしくない草まで伸びてしまいます。筆者も夏になると、学校や公園などで芝のお手入れをする人をよく見かけていました。暑い中芝刈りをするのは大変そうです。
そんな作業を自動化しようと、アメリカのScythe Robotics社は芝刈りロボット「Scythe」を開発しました。
電動芝刈りロボット「Scythe」の強み
Scytheは自立走行で芝刈りを行うロボットです。芝の状態によってカットパターンを自動で調整し、草の太さに応じて刈り取り速度を変えます。そのため草が詰まりにくく、芝を綺麗に整えることができます。
Scytheには360°センサーが搭載されています。このセンサーによって芝の状態を把握して刈り残しを防いだり、障害物を避けることができます。下の動画でも、きちんと樹木を避けて動いています。
▲Scytheの紹介動画 Scythe Robotics社公式YouTubeチャンネルより
Scytheは電気で動くため騒音が抑えられており、ガスの匂いを気にする必要もありません。バッテリーも一晩の充電で1日もつようになっています。個人的には騒音は結構気になるところなので、それが軽減されるのは嬉しいです。
電気で動くことのメリットとして、Scythe Robotics社はエネルギーコストとメンテナンスコストの削減などを挙げています。
Scythe Robotics社の公式サイトによると、Scytheを使うためのエネルギーコストはガスで動く芝刈り機よりも80%以上安いそうです。さらに電力はガスよりも価格の変動が安定しているため、コストの予想もしやすいとのことです。
また、Scytheの可動部品数はガス式芝刈り機の10分の1です。そのため、部品ごとに起きるトラブルが少なくなり、手入れやメンテナンスが楽に済むといいます。電力で動くおかげで様々なメリットが生まれているんですね。
日本の家庭では手動式や電動式の小型の芝刈り機が人気のようです。一方、ゴルフ場やサッカー場などではパワーのあるガス式の芝刈り機が使われています。日本でScytheを使うとしたら、家庭用というよりは施設などの広い敷地の芝刈りの方が活躍の場が多そうですね。
芝刈りに関する2つの課題
人が運転するタイプの芝刈り機では、使用中に事故が起きるケースがあります。実際に起きた事故として、ゴルフ場で芝刈り機を移動させていた男性が運転席から転落し、下敷きになって亡くなるといった事例があります。芝刈り機に関する事故は他にもあり、人が芝刈り機を運転することは危険を伴うと言えるでしょう。
さらに、人口減少・少子高齢化に伴い、こういった作業を行う人材が減っていくことも予想されます。内閣府によると、2065年には日本の総人口は9,000万人を割り込み、約3.9人に1人が75歳以上の人となると推計されています。
暑い夏に芝刈りをすることは大きな負担になりますし、芝刈りを行う人材の高齢化が進むと、年齢によって注意力が下がるため、刈払機(※)や芝刈り機を使った作業がより危険になりそうです。
無人で芝刈りを行うScytheは、これらの課題を解決する手段となるのではないでしょうか。Scytheが芝刈りを行うことで、人が芝刈り機を動かすことによる危険を排除し、人手不足を補うことが期待されます。
冒頭で述べた通り、Scythe Robotics社はアメリカの会社です。2018年に創設された同社は、1860万ドル(日本円で約25億5043万円)の資金を調達するなど、注目を集めているようです。公式サイトによると、Scytheの予約は2022年5月時点で5,000を超えたとのことです。これからの活躍が楽しみですね!