英語を話せないのは誰のせい?
「中高6年間英語を勉強してきたがペラペラにならなかった」
最近、いや長いこと聞いてきたセリフである。
ただこの定型文に、私は甚だ疑問がある。
もちろんその人がペラペラであるかどうかとういう点に関してではない。
きっとペラペラではないのだろうと彼、彼女らを信じている。
私が疑問を持っている点は「果たして学校教育とはどこまでの責任を持つのであろうか」という点だ。
戦後の日本教育は「平等」を起点として出発している。
職業の貴賎なく、すべての身分の子供を分け隔てなく教育する。
これは日本の高い識字率を見ても、ある程度は成功しているように思われる。
そしてその様々な身分から成る子供達は、彼らが成せることもまた様々である。
数学に活路を見出すものもいれば、英語を極めたいと思うものもいるだろう。
その意味では学校というのはある意味、物事の入り口を提供しているのではなかろうか。
「学校で習った数学なんて実生活では意味がなかった。だから意味がない」
こう言ってしまうことは簡単だが、現に今現在数学者や技術者など数学で食べている人はいる。これは英語や古典にも当てはまることではなかろうか。
学校で習ったことの全てを活かしながら生計を立てることのできる君子はそう多くなかろう。人にはそれぞれ向き不向き、得意不得意があるからだ。
それならばせめてその自分に何が合っていて、何が合っていないかの大まかな指標をくれた学校というのはある程度評価に値するのではないか。
つまり学校というのはその生徒のこれからの学びに助走をつけてやる程度のものではないか。
「6年間も学校で英語を学んでもペラペラにならなかった」
確かにその過ぎ去った月日を思い、肩を落とすのも無理はない。
6年というのは大層な時間だ。
ただいまひとつ考えてもらいたいのは、本当に6年間勉強をしていたのかということだ。
授業を受けていた=勉強していたではない。
なんとなく自分が教育によってペラペラにしてもらえると思っていてるのは傲慢である。
授業といっても週に数時間、6年続けたとしても高が知れている。
学校には時間制限がある。
学校以外での時間の使い方が全てを分けるのではなかろうか。
さあ俺を話せるようにしてみろという態度では成長しないのではないか。
日本人は軽率に国家という言葉を用いる傾向があるように思われる。
国家という大仰な主語を持ち出して批判をしている人はある意味それを批判しながらそれに依存しているという自己矛盾に陥っているのではないか。
結局は個人の器量によるものであろう。
国家のせいだと非難し喚いている人はその国家の持つ日本的な要素を忌み嫌っているのに、彼らは個人主義とは程遠いいわゆる日本人気質そのものであるのをお見受けするが卑しくも同情の念を隠しきれない。
そしてまた社会人になってから学ぶことを続けないのも問題ではないかと思われる。
英語とはナマモノのようだ。
常に水をやらねばならぬ。
学校教育を批判するという外に向けたエネルギーを、今まで受けた学校教育を活かしこれからどのように自分を高めていくかというような内側に向けてみてはどうだろうか。
また、学校教育は文法ばかりなのがいけないという人もいる。
しかし文法なしに英語を駆使しようとするのは、土台なく家を立てようとするのと同じであるとお見受けする。
ピアノを弾くことに例えると、文法とは楽譜のようなものである。
絶対音感のない大人が「某は理論など小賢しい真似はせん。耳とセンスのみによって習得したいのである」などとのたまい、ピアノの前で云々と唸っていたら滑稽ではなかろうか。
文法書は凡人に対する攻略本である。
これを使わない手はない。
世の中で確立された方法にはある程度の理がある。
それにはその道の専門家が相応の時間をかけ試行錯誤を繰り返し作り上げたものである。
しかし人はいとも簡単に「この教育方法は完全に間違っておる。英語教育に必要なのはセンスだ、シャイにならない心持ちだ」と憤慨する。
医者にああしなさいこうしなさいと言われれば「へエ、わかりやした」とふた返事で答える大人が、なぜ教育に話題が移るとこうも自説を信じて疑わないのであろうか。
また何よりも英字を解すことは日本の発展い大いに貢献してきた
英語に次ぎ日本語という言語で読める書籍は多いという
それにより人々の貴賎に関わらず日本語を解する庶民までもが英米、果ては世界の教養に通じることができた。
このように英語で教育を受けてきた貴族のみならず、一般庶民までもが教養に精通していたことは日本国の発展に少なからず寄与してきたといえよう。
和訳過多は日本人の英会話には害があったかも知れぬが、日本の近代文学、国力、教養の成立に多大な意味をなしたのではないか。
古きを温め新しきを知る。
英語ペラペラを目指していたのが、人間としてペラペラびならぬよう気をつけたいものだ。
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