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傘のプレゼント。

私は、朝から雨が降っていない限り、置き傘があるからと安心しきって出社する。
仕事を終え、電車に乗って初めて気づく。

〝あ、傘忘れた〟と。

私の会社は駅直結のため、仕事をしている間は、雨が降っていることは頭の片隅にあるものの、帰る頃にはすっかり忘れている。
電車に乗って、周りが傘を持っているのを見て初めて思い出す。雨が降っていること。傘が必要なこと。

電車に乗っている人の傘は、ほとんどがビニール袋だ。たまに、可愛らしい傘を持ってる人を見ると、こういう傘があれば持つことを忘れないだろう、と思う。


ふと急に、思い出した記憶。

学生の頃バイト先で、ある人の誕生日をお祝いした。梅雨になる前の5月が誕生日だったと思う。
みんなで傘のプレゼントとした。自分では買わない、ちょっといい金額の傘。雨の日特有のブルーな気分を吹き飛ばす、綺麗なミントカラーの傘。

雨の日にしか使えない、特別なプレゼント。
憂鬱な雨だけど、気分が晴れるプレゼント。


プレゼントに傘が選ばれることは少ない。
だけど私は、誰かに傘をプレゼントしたくてうずうずしている。そして誰かに、傘のプレゼントをしてもらいたいとも思っている。

そんな雨の日の記憶。
駅から家まで5分ちょっと。私は今日も、雨に濡れて帰る。


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