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この世に小説があって、涙が出るほどうれしい。


あなたには、かけがえのない大切なものがありますか。
寝食を忘れて没頭できる大切で大好きなものが、わたしにはあります。

小説です。

なぜ読書が大好きなのか、そのきっかけはよくわかりません。
物心ついたころからずっとそばにあるものでした。
母の証言によれば、むしろ、物心つくまえから言葉がつむぐ物語と一緒にいたようでした。というのも、2歳だったわたしは、兄が幼稚園で借りてくる絵本を奪い取って何度も何度もページをめくっていたらしいのです。

ある曲を聴くと、当時のことを思い出すという話をよく聞きます。
わたしは小説でも同じことがあります。むしろ、小説のほうが鮮明に思い出されることがたくさんあるのです。

小さい頃に買った児童文学から、昨日買った直木賞受賞作まで、
本棚で仲良く肩を並べて、私に親しみを持って語りかけてくる背表紙がどこまでも愛おしいなと思う。

小説は、
わたしを不思議な世界へと連れて行ってくれた。
わたしが何にでもなれることを教えてくれた。
わたしの間違いを叱ってくれた。
わたしと一緒に悩んで、希望を見出してくれた。
わたしのもやもやした感情に共感して、言葉にしてくれた。
わたしにわたしの世界の美しさを気づかせてくれた。

小説は所詮フィクション。現実逃避でしかない。
「リアル」じゃないものに心を動かされるほど、もう夢を見られない。

誰かがそう言った。

わたしもいつかそうなるのだろうか。歳を重ねて、自分自身が「リアル」を経験して、物語の世界をシニカルに見つめる日が来るのだろうか。

どうだろう、やっぱりそうはならない気がします。
たしかに、いくらか歳を重ねて、小説の読み方が少しずつ変わってきたかもしれません。
初期の読書体験では、小説は完全なる異世界へ連れて行ってくれる魔法のような存在だったけれど、少し成長してこんなに胸が高鳴るのは現実の世界と地続きに小説があるからだと気づいた。
さらに時を経て、現実での葛藤の答えを小説に求めるようになったし、これまで出会ったすべての小説によって蓄積された世界の観方が、いまのわたしをつくりあげ、現実への捉え方に大きな影響を与えています。

これから先も、わたしの読書体験はさらなる変化を遂げていくのだと思います。その瞬間瞬間を、世界中にあふれるたくさんの小説と一緒に歩んでいけるだろうと思うと、心の底から歓びがあふれて止まりません。

たまーに、自分でも小説を書いてみよう!と挑戦してみては挫折しているので、そういう意味でも素敵な物語を生み出してくれているすべての作家さんに敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。


わたしが小説を生み出すことはできないけれど、
小説のすばらしさを伝えることになら、微力ながら貢献できるかもしれません。

小説が大好き。そう思えることを、心から感謝して、今日も愛を語ります。


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