うみを泳ぐ

モラトリアム日和な22歳が、それでもこの人生を泳ぎきろうとした記録。新大陸で地に足つけ…

うみを泳ぐ

モラトリアム日和な22歳が、それでもこの人生を泳ぎきろうとした記録。新大陸で地に足つけるまでの軌跡。

最近の記事

この世に小説があって、涙が出るほどうれしい。

あなたには、かけがえのない大切なものがありますか。 寝食を忘れて没頭できる大切で大好きなものが、わたしにはあります。 小説です。 なぜ読書が大好きなのか、そのきっかけはよくわかりません。 物心ついたころからずっとそばにあるものでした。 母の証言によれば、むしろ、物心つくまえから言葉がつむぐ物語と一緒にいたようでした。というのも、2歳だったわたしは、兄が幼稚園で借りてくる絵本を奪い取って何度も何度もページをめくっていたらしいのです。 ある曲を聴くと、当時のことを思い出すと

    • アンナチュラルで描かれた女性差別について

      年末年始の一挙放送ではじめて拝見した、ドラマ『アンナチュラル』。 今さら私が言うまでもないが、一応ストーリーは以下の通り。 石原さとみ演じる三澄ミコトが法医学を通して、死者からの最後のメッセージを受け取り、死因究明をするミステリードラマ。 各話のクオリティが全て高く、1話の中で展開が二転三転するたのしさがある。なおかつミコトを含む同僚たちの抱える問題がドラマを通じて明かされていくハラハラといったら、エンターテイメントとして一級品である。 『アンナチュラル』がいま2018

      • 物語のある声をきかせて

        世の中には、溢れんばかりのコンテンツ。 けっきょくのところ、人間が考えることは似たり寄ったりで、今この瞬間にも同じことを発信する人が存在しているだろう。 世の中は、誰かの声で溢れかえっている。 誰ともわからない声で溢れかえっている。 階級、身分、人種、性別、あらゆる枠をこえて、世界中の人々が声を上げる手段を手に入れたこと(もちろん完全にではない)それ自体はたいへんに素晴らしいことだと思う。これは本心だ。 一方で、あげた声が拾われないという苦しさを知ったことも、また事実。

        • 「お茶にしよっか。」

          自分の好きなところをあげるとすれば、ささやかなことに幸福やときめきを感じるところと真っ先に答える。 つい3,4年前までは、震えるような情動や激しいうねりに心惹かれる習性があったのだが、そんな瞬間だって日々のささやかな幸福を基盤としていたはずだ。私はささやかで幸福なときめく営みのうえに立っているということを、無意識に認知し、当然のこととして享受していた。あえて着目するようなものではないと判断するほどには当然に。 そんな私も、たくさんのアイデンティティを揺るがすことに直面し、私

        この世に小説があって、涙が出るほどうれしい。

          誰かのために生きるということ:アイドルとファンの場合

          世の中には、名前のない関係性というものがある。 アイドルとファン。明確なようでその関係性にも名前はない。 親子、家族、友達、恋人。 相関図があればこの言葉の下には、双方向の矢印が描かれている。 一方で「ファン」というのはアイドルに向けられる一方向の矢印。 じゃあ、「アイドル」は誰にむかって矢印を向けているんだろう。 かつて私は、あるジャニーズグループのファンだった。 小学4年生から高校2年生の夏まで追いかけた彼らは、私の青春のど真ん中を堂々たる面持ちで陣取っている。 生活

          誰かのために生きるということ:アイドルとファンの場合

          だってほかに言葉がないんだから恋って呼ぶしかない。

          初デートなんて、清いもんじゃない。 下心にもとづく戦略的な食事会だった。 彼の好意は十分すぎるほどわかっていた。 わたしが思いを伝えれば、どうにかなってしまうこともわかっていた。 わかっていて、食事の誘いにのった。 年末はなんとなく、みんな早足。 わたしはスターバックスの窓際の席で、その様子をぼんやり眺めていた。 待ってる、と連絡をしたけれど、彼はたぶんこんなふうに早足では来ないと思う。その顔を思い浮かべて、すこし息が詰まったところをソイラテで流し込んだ。思考もアイボリ

          だってほかに言葉がないんだから恋って呼ぶしかない。

          持て余すモラトリアム

          モラトリアム Moratorium 社会的責任を一時的に免除あるいは猶予されている青年期をさす。生きがいや働きがいを求め,発見するための準備を整える一方,自分の正体,アイデンティティを確定できず,無気力,無責任,無関心など消極的な生活に傾きながら,自我の同一性を確立してゆく。 (コトバンクより引用) いつからか、心の中に焦燥感が居候するようになった。このままでは、私の人生が私のものではなくなってしまうという焦燥。 我が物顔で居座るもんだから、もはや特段注意を払うこともなくな

          持て余すモラトリアム