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二つの旅 ーSydneyと岩手県大槌町ー

2018年から2019年、二つの地域を訪れる機会に恵まれた。

一つは、オーストラリアのシドニー。もう一つは岩手県の大槌町。

どちらもあっという間の旅であったが、私の人生にとって大きな存在だ。

どちらの土地も海がそばにあって、そこで暮らす方たちの生活は、海と共にあることを感じた。


ー初めてのSydneyー
2018年の9月から10月にかけて過ごさせて頂いたシドニーでは、美しい街と自然、オージー(オーストラリア人)の方たちの優しさとおおらかさに触れ、毎日ウキウキしていた。


カフェで紙ストローが当たり前に使われていたり、地元の子どもたちが作成した「海を守ろう」というメッセージのポスターをよく見かけたり、食べ物を包むラップが、可愛い柄付きの「蜜蝋ラップ」だったり…など、

環境問題への意識が高く、無理なく楽しく生活に取り入れていることも、その時の私にとって新鮮だった。

それから、自分が普段住んでいる地域は田舎であるせいか、

シドニーの街並みの重厚感や、様々な設備が充実してるところに、「日本は、(それか私の住む町は)世界の中でもあまり裕福でないところなのかな」という感覚を持った。

もちろんこの感覚は、いつか、まだ一度も訪れたことの無いほかの地域へ出かける機会があったら、必ず塗り替えられるだろうと思っている。

でも、何となく自分の住む国の、地域の、強く触れたら壊れてしまいそうなもろさのようなものを感じた。



それから、「人生を本気で楽しみ、前進し続ける日本人」との出会いが沢山あった。シドニーで出会った日本人の方々は、慣れない土地で何も自力で出来ない私を、温かい心で助けて下さった。

数え切れないほどの素晴らしい思い出と、学ぶ機会を与えてもらえたことがずっと忘れられない。


例えば、子育て中で本当にお忙しい中、シドニーでの生活や教育についてお話を頂いたり、イベントの準備から片付けまでサポートして頂いたり(私が持ちきれなくなった荷物も運んで頂いた…)、見学学習のための送迎を引き受けて下さったり…。

パンにつけて食べる、オーストラリア名物Vegemite(ベジマイト)を「食べてみたいけどまだ試していない」と私が何気なく話した事を覚えていてくれた方もいた。次に会う際、買って私のところに届けて下さった…。とても嬉しかった。

ここには書ききれないくらいの沢山の優しさを、初めて訪れた土地で受け取ることができて本当に幸せだ。


ーSydneyから東北を想い続ける方たちー

遠く離れた土地から、東北を想い、行動を続ける方たちとの出会いがたくさんあった。(その中の一人の女性について ご紹介します。)


到着してから初めの1週間、ある日本人女性(Mさん)のお家にホームステイさせて頂いた。その方は、留学後に国際結婚し、フルタイムのお仕事をしながらも、ボランティア活動に積極的に取り組んでいらっしゃった。


 私にとってこの出会いは衝撃だった。

少し年上のお姉さんで、考え方、行動力、包容力、また、計画する力、周囲への配慮も、未熟な私とは、かなり かけ離れていた。

年齢が近いことが信じられないほどだった。そして、しなやかさ、内面からの美しさがあふれていてた。単純に人に優しいだけでない、まさに「本物の思いやり」とは、こういうことなんだと感じた。

Mさんは、大学時代は関東在住だったが、東日本大震災で被災した子どもたちの支援を続け、被災地に何度も足を運んでくれていた。
また、大学で被災地の様子を「伝える」活動もされていた。


当時、私は被災地と呼ばれる地域に住んでいながら何も出来なかった。
しかし、震災直後も、現在までも 被災地のことを思って行動し続けている人がオーストラリアにいらっしゃって、驚きだった。

もっと驚きだったのは、「やらなくちゃ」という縛りや義務感のようなものは一切無くボランティアをされてらっしゃること。

海外生活をしながら、ボランティア活動を継続するのは、決して簡単ではないはずだ。

Mさんから、 生きられなかった人たちの分まで本気で生きる、 という決心が感じられた。

その姿に胸を打たれた。


Mさんが帰国する2019年の2月、私は初めて岩手県大槌町を 一緒に訪れることができた。

ー岩手県大槌町ー

海側の地域の冬は、かなり寒いだろうと厚着をして向かったが、大槌町を訪れた2日間、天気に恵まれたからか、そこまで寒くなかった。

「新しいお家」「新しい駅」が並び、綺麗な町だった。2019年の2月。


大槌町は、伝統芸能が盛んで、虎の舞やお神輿の行列が行われる「大槌まつり」で有名だ。

「ひょっこりひょうたん島」のモデルとなったと言われる島があり、町のシンボルになっている。

町の中に、虎やひょっこりひょうたん島のキャラクターのオブジェやイラストがあって、とても可愛らしく、何度も写真を撮った。

シドニーでお世話になったMさん、Mさんの大学時代のお友達のRさん(Mさんとボランティア活動を一緒にされてらっしゃる)、シドニーから一時帰国しているお友達と4人で、大槌町を周った。

漁師さんのお家や、鮭をモチーフにした手作り品を製作されている「大槌町おばちゃんくらぶ」、駅前、文化交流センター「おしゃっち」などを周った。

Mさん・Rさんたちは、長く活動を続けているため、高校生くらいに成長した震災当時の「子どもたち」と仲が良く、将来の夢や目標の話、思い出の話も楽しそうにされていた。


大槌町の方たちは、明るくて優しかった。


大槌町を訪れる前は、「大きな津波で被災して、傷ついた町」というイメージしか持てなかった。でも実際に足を運んだことで、そのイメージは大きく変わった。

最もインパクトが強かったのは、大槌町のごはんの美味しさ!

私は海から離れた地域に住んでいるので、とれたての海産物の美味しさを知らなかった。ぷりっぷりの貝を味わい、これまでこんなに美味しい貝は食べたことがない! と感動した。

宿泊させて頂いた「小川旅館」での食事も最高だった。

全てのお料理が美味しくて、量もボリューミーだったが、完食した。さらに帰りに「手作りおやつ」も頂き、そのおやつも ほっとする味でとっても美味しかった!


—二つの旅から学んだものー

私は、東日本大震災から目をそらして過ごしてきてしまったが、

シドニーと大槌町、二つの離れた土地からその出来事を見つめ直し、自分自身のことも振り返る機会になった。

よくある話だが、やはり「実際に訪れることでしか感じられないもの」があることを知った。どちらも、また足を運びたいと強く思う。

そして、「人との出会い」は、人生の見え方も 変えてゆくのだと学んだ。

この二つの旅を終え、帰宅してから、いつも見る景色の見え方が変わった。

出会えた皆さんに心から感謝をお伝えしたい。

2022年になった今も、まだ上手く伝えられていない。

東北は、確かに被災した地域である。でも、人々の生活は、続いてきた。これからも続いていく…。どんなに傷を抱えていたとしても。


生きたかった方たちの分まで、精一杯、生きよう…!


Mさんに教えて頂いた言葉。

When it is dark enough, you can see the stars. 

ーRalph Waldo Emerson

「どんなに暗くても 星は輝いている(エマーソン)」















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