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思いが交錯するnote【フィクション】

三月(mitsuki)のアイコンは三日月だった。

趣味は読書・音楽・写真。

記事の内容が哲学的で難しいので、勉強熱心な大学生という印象だった。

私がそのことを伝えると、自分は考えすぎて、あまり言いたいことが言えない人間だからと教えてくれた。

大勢でワイワイするのは苦手で、一人静かに読書をしているタイプだと私はイメージしていた。


恐らく倍以上離れている年齢の私と、note記事やコメントを通じて交流してくれる、とても好感がもてる丁寧な文章の大学生だった。

見出しの画像は、三月がスマホでとった夜の空に浮かぶ月が多かった。

とても静かで、儚げに浮かんでいる小さな月。



山森 風太(やまもり ふうた)のアイコンには、本人の写真が使われている。たれ目であどけない表情から、お人好しで友達から色々とツッコミをされているシーンを何度も思い浮かべた。

実際の彼の記事でも、友だちと将来の夢を語っていることが書かれていて、コミュニケーション能力が高く、理論的な文章のまとめ方には、彼の知性が良く表れていた。

「男はプライドが高い生き物」

彼のスポーツジムの記事の中で、あるあるのエピソードが書かれていた時、彼は私にそうコメントで返してくれた。

この時も年齢半分以下の大学生にこんな奥深いことを言われるなんて、世の中面白いと感じた。今のようにインターネットで多くの情報を受け取り、年代を超えて気軽に交流できるからこその経験だった。


ちょうど大学が受験休みの頃の三月の記事だった。

大学のゼミ仲間と徹夜で飲み会をしたことが書かれていた。

三月は物静かなタイプだったから、彼女も大学生らしい一面があったのだと微笑ましく思った。


ゼミの男友達からドライブに誘われている。

そう教えてくれたのはいつの記事の時だったか?

私は、自分の若い頃のトキメキが蘇ったかのように浮足立った。

三月は恋愛に消極的な感じだったから、相手のことが嫌ではなかったら、ドライブにいったらいいとコメントした。


ドライブ後どうなったかを気にしてはいたけれど、野次馬根性で聞くのは野暮なので、私は三月の記事の更新を待っていた。

更新された記事は、読書や音楽の内容はあるのに、ドライブの話は触れられていなかった。

そして、1か月くらいたった頃、意を決したように

自分には、恋愛は向いていないと書かれた記事が投稿された。


「自分を幸せにできない人は、他人を幸せにすることはできない。」


三月は相手にこういわれて、自分が幸せになることができない人間と捉えたようだった。彼女の文章には混乱と悲しみがにじみ出ていた。

恋愛関係になれない判断をしたのは彼女だったはずなのに、彼女は相手から拒絶されたような思いでいた。

私には、三月の記事を読んだ中だけの相手の印象しか分からないけれど、相手は三月のことをとても大切に思って接しているように感じた。

相手は三月に自己肯定感を持ってほしくてこういう表現を使ったのだと思った。

けれども、私は、noteのコメント欄に自分の思いを書くことができなかった。直接会って話していたのなら、伝えられる思いだと感じたけれど、不特定多数がみるところにそぐわない気がしたから、書けなかった。

とても、便利だけれどもどかしい距離。

三月は相手と恋愛関係になることを恐れていた。友人関係のままでいたいと。それが三月の本心だったなら彼女が選択したことを受け入れるしかない。

季節は春になり、彼女は大学生活が忙しくなったのか記事の更新はパッタリ途絶えた。


私の記事の内容にやまもりふうたがコメントしてくれた。人間関係に関する記事だったと思う。

「ドライブに誘った子がいたけど、振られちゃったんですよ~。」

そういえば、やまもりふうたが付き合いたい理想の女性像を書いた記事を読んだことがあるようなないような~。

こういう女性を紹介されたいと書かれていた気がする。


私は、「はっ」とした。

三月の相手=やまもりふうた

だったとしたら?

そんなことありえるだろうか?

ドライブと大学生という共通項しか一致していない。


仮にそうだとしても、やまもりふうたに、ドライブに誘った相手が三月かもしれないとコメントするのはマナー違反だと思った。

そうしたところで、二人が分かりあって付き合う可能性も少ないような気がした。

やまもりふうたは、恐らく実名だと思う。Twitterも同じ名前だったから。

でも、三月は名前じゃない。プロフィールに月が好きだからこのアカウント名にしたと書かれていたことを私は思い出した。

三月はあんなに周りを気にしていたのだから、noteを書いていることを友達に公表しているとは思えなかった。

匿名だからこそ、自分の心の内を話せる場所だったのだ。

三月がその気になったら、相手のnoteを見ることはいつでもできたかもしれない。

いずれにしても、真相は三月にしかわからない。

私の全くの見当違いの可能性もある。


三月とやまもりふうたが付き合うことが最善の道だと思うのは、私のエゴだと気づいた。

彼らが選択した道が、最善な道なのだ。

それが、傍から見て切ないすれ違いだったとしても、私には見守ることしかできなかった。


きっと彼女は自分の価値に気がつく時が来るだろう。

とても知的で聡明な人だから。

私は、それがいつになろうとも、自分の気持ちがどう変化したのかを記事にしてくれることを願っている。

noteという街に戻ってくる日を。


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   愛だけがある。

 全ての存在の根本に愛がある。

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