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詩たち

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詩 「雨あがりのそらに」

詩 「雨あがりのそらに」

「雨あがりのそらに」

ただ 砂の丘に立ち
ながれる星をみあげて生きていたなら

ただひとり
水のみちた夜のそらにゆらいで
息をしていたなら

だれのいかりにも
だれのかなしみにもふれずに

もう なみだもなく
むねをさくことも
はらをさくこともなく

こころをとざすこともなく

ああ それでも
ひとのなかに生まれ
ひとのあいだに生きることをのぞむのは

あなたが
ひとのなかに生まれ
ひとのあいだ

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詩 「息を」

詩 「息を」

 「息を」

いま空を見つめ
あのころも空を見つめ
いまあなたは遠く
あのときはとなりで
いっしょに心をふるわせた

生まれただれもがどこかにいれられ
はいっていないと生きられないけれど
はいっていても
鉛のようで息ができない
つめたすぎる 外から中が見えない箱

さかれた心からそそいでくれた

あたたかさ

あなたがいて

息ができた

踏みあとひとつない
雪の原にねころび
金色《きんいろ》の麦

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童謡詩 「虹 にじ」

童謡詩 「虹 にじ」

  虹

おおきな 虹がかかったよ
ひとつの 虹 ふたつの 虹
おおあめのあとにかかったよ
ひとつの 虹 ふたつの 虹

虹のはじまり どこだろな
虹のはじまり どんなとこ
虹のはじまり 行きたいな
いつか行こう  虹のはじまるところ

ちいさな 虹がかかったよ
ちいさな 虹 ちいさな 虹
お花にみずをあげたなら
ちいさな 虹 ちいさな 虹

みんなに 虹をみせたいな
みんなで 虹をみていた

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詩 「ちいさな星」

詩 「ちいさな星」



 「ちいさな星」

ちいさな星ぼしよ 告げよ
やがて来る春を待つように
よろこびの日に そなえるように

光れ 暗やみのなかでその身を磨き
灯す時を待ち光れ
春の風 春のかおり 春のあたたかさを
はこぶ星として

冬のつめたさは血の流れをほそくし
指さきをかじかませ 鼻を凍らせ
口をとじさせる
吹雪は先を見えなくし
さけぶ声さえ耳にとどかない

冬に生まれ 冬をわたるわたしたちを
冬のつめたさ

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詩 「胎のなかで」

詩 「胎のなかで」



・・・

いろいろと重なり4月末に体調をくずしました。
いまはだんだん元気になってきています。
これを収録したときはまだ喉が治りかけでしたが、「この詩を朗読するのは今がいちばんいい」となぜか思って録音したのを覚えています。
いま聞いてみると、弱々しい声がこの詩に合っているかもしれません。あはは。

▽朗読です▽

詩 「大きなばらの木」

詩 「大きなばらの木」

ばらの木がこんなに大きく育つなんて知らなかった
えも言われぬ美しさをたたえたばらの花が
大きな木に咲きほこる

花は可憐で
儚さをはらんで
この世界に浮いている

小さく細い木ばかりを見てきた

日の光の中に美しい姿を現して
人の目を驚かせる

落ちて 枯れて 朽ちて
地上の限りある美しさ

何にすがりつく
何にとどまる

花の向こうに
大きな木の向こうに
地中にめぐる根の向こうに
何を見る

2

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詩 「水のように」

詩 「水のように」

こころの声
生活の音にかき消されても
寄る辺ないことばに耳を貸さず
みずからを信頼するのは骨の折れること

ちからを渡せと言うひとがいる
いのちを渡せと叫んでいる
いのちが渇いているから
ちからが満ちていないから

あなたのいのちを渡してはいけない
あなたの時間を渡してはいけない

しずかにとりさられてゆく

警告はかき消される

こころの声はいつもあなたのうちにある
たえまなく流れる
水のように

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詩 「100年後から今を見る」

詩 「100年後から今を見る」

だれも気にかけていないけど今日も空はうつくしいよ
たった一度の空だよ

あなたは気にかけていないけど
今のあなたは今だけのあなた
今の私は今だけの私

今の私を あなたを
100年後から見つめます

2021 Sayori
#詩 #朗読 #空

詩 「しずく」

詩 「しずく」

人間の知恵は大海のひとしずく
人々が
おのおのしずくを持ち寄り
分かちあえば
見えなかったものが見えることもある
流れが生まれることもある

ただ、それが完成品でないことは
忘れない
不完全であることを忘れない

わたしたちの不完全さのなかに
見えないものが見えるもの

2021 Sayori #詩 #朗読

詩 「孤島にいる」

詩 「孤島にいる」

悲しい知らせと深刻な知らせから
自分を守る
あなたの中の静けさに
耳を傾ける

孤島にふたり、
孤島に四人、
孤島にひとり、
わたしたちは孤島にいる

2021 Sayori #詩 #朗読

詩 「12月」

詩 「12月」

きらめく街で胸を痛める
ちいさなひとはここに居られないでしょう
ちいさな偽善者でいたいから

わたしのために死んでくれたひとを喜ぶ、
と言うとなんだか怖いか
遠からずだけど
いまも生きてるってことを言わなきゃ

贈りものはいつでも このなかにある
絶えない すたれない

いのちの呼吸を

口をきけなくなったひとが
ふたたび話すようになったとき
そのひとは低くなり
高き存在をたたえるように
歌うよ

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