フォローしませんか?
シェア
こぴゅら
2021年10月31日 12:11
たそがれ時の訪れる頃、ラダロックと共に母の野辺の送りをし、葬式をすませると、グラファーンは母を偲んで草笛を吹き、数日の服喪の後、黄金の森の南東のはなれの森、アプトムに移り住んだ。そして数年間そこに暮らしながら、グラファーンは、生活の恩人のラダロックに剣術を学んだ。魔の雲によって荒廃した世の中で生き残ってゆくため、自らの命を守り、自己をめぐる現実の障害を取り除き、人生を保つためだった。ラダロ
2021年10月30日 06:35
その日、マックリュートは急に体調が悪くなった。朝から咳が止まらず、意識は朦朧としている。彼女は直感した。もう、自分の体はもたない、と。彼女は自分の最期の刻が近づいたのを悟ると、枕元にグラファーンを呼び寄せた。子は心配そうに母の顔をのぞき込む。目に涙をためて。「母さん、しっかりして! いま、薬を持ってくるよ」それを止め、マックリュートは病で盲いつつあった両眼を和らげ、やさしく微笑みながら
2021年10月25日 20:14
トルダードの街に移り住んだのは、グラファーンが五才頃のことだったが、周囲の異種族スークから異端視されていたにもかかわらず、グラファーンにはスーク人の友だちが一人、できた。それは、やはり五才の女の子で、アミリアという名前だった。アミリアはグラファーンを蔑視しないことはもちろん、いつもグラファーンにきょうだいのように親しく、優しく接してくれた。アミリア以外のスークの子たちは、グラファーンにとっ
2021年10月19日 19:34
3.トルダードこうしてマックリュートは異種族の街トルダードの新しい家で、息子と二人きりでのわびしい生活を送ることとなった。マックリュートは故郷の森マイオープで家庭を営んだ経験があったので、何とか自立していた。彼女は織物と編み物ができたので、糸を仕入れさえすれば、それで布を織って作り、他の人と交換して他の品物を受け取ったりした。また時には、トルダードの街の広場で開かれる市場で織り布を売り、貨
2021年10月13日 14:53
アルビアスからの知らせのないまま、五年の月日が経った。何時までも黄金の森に帰ってこないアルビアスに対して、フォロス族の社会の目は次第に厳しくなっていった。人々は、アルビアスが裏切ったのだと確信した。夫がいないために、マックリュートは幼児をかかえながら毎日、不安定な生活を送っていたが、フォロスたちの批判の矛先はついに、この不憫な母子にも向けられた。こうしてマイオープのフォロス社会の中でアルビ
2021年10月4日 18:10
それから数日後、小屋の中に拘禁されていたアルビアスを訪う者があった。フォロスの族長エリサイラーだ。「アルビアスよ」若く細身で、背の高い族長が告げる。「君に指示をしに来た。君は掟に従い、殺人罪でこのマイオープから追放される」アルビアスは覚悟したかのように目を閉じ、うなだれる。「…ただしかし、君の長年にわたる共同体への貢献への報いとして、君に特別に、刑を赦免する機会を与えよう」「それは