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履き違えの世界(3)

まえのおはなし

君は僕を見てもなにも言わなかった
正確にいうと すこしも動いてないらしかった

だから僕は 、まさか君が
僕をこの世界に連れてきた人物だとは
これっぽっちも思わなくて
すれ違う人の群れの中に 君を見たことを
特別な事だと思わなかった

その樹海の生き物を思わせる目に再び出会ったのは
そう先の話ではなかった

君は僕を訪ねて
なんでか あやとりのような遊びを
ふたりきりで することになったからだ
まったく すべてが珍妙で 行為のはしはしには
1本の糸もないようだった

僕は君のことを
ずっと探していた 忘れもののような感じがしていて
君を知っていくたびに 懐かしい気持ちさえしていた

そうして 君をすっかり
愛してしまうころには 僕はもう
元の世界に どんな色があったかも 覚えてやしなかった

つぎのおはなし

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