見出し画像

No.3内室紀子さんの好きな屋久島~春の照葉樹林~

屋久島の里地に広がる森、「照葉樹林」。
冬でも葉を落とさない常緑の森で、葉の表面が艶を持ちテカテカしていることから「照葉」と呼ばれています。

主に西日本の太平洋沿岸部にみられる森ですが、本州では開発が進んだことで残念ながらその多くが姿を消しています。なので、屋久島の照葉樹林は日本では最大規模と言われています。

画像1

そして、この原稿を書いている今、この照葉樹林の新緑が視界いっぱいどころか、島いっぱいに広がっていて、島のどこにいても見事な新緑を楽しむことができます。

バリバリ新緑

冬を越した濃い緑色の葉の上に、若葉が乗っかるようにして新緑は始まります。照葉樹林は、クスノキの仲間や、ツバキの仲間、ドングリを付けるシイの仲間など多種多様の樹々で森が作られていますので、生まれる若葉の色もそれぞれ。明るいみどり、黄色いみどり、淡いみどり、赤いみどりと、それはそれは目に鮮やかな色々なみどり色で、日々めまぐるしくその色を変えてゆき、私たちを楽しませてくれます。

画像4


俳句の季語で「山笑う」という言葉があります。明るい春の山を表す季語です。海から吹く暖かい風は、新緑で賑わう照葉樹の樹々を順番に揺らしながら春の大気をぐんぐん押し上げてゆきます。その大気を受けて、まるでうたう様にゆったりと揺れる森の姿は、春の喜びで満ち満ちており、まさに「山笑う」としか言いようがない美しさです。そんな森を眺めるたびに、私の心も春の喜びで満たされます。

日々の暮らしは、全てが順風満帆と言う訳ではないけれど、この森が身近にあるだけで、私の日常は結構上々なのではと思えるほどです。

画像5

そして、この森が私に教えてくれる、もう一つの大切なことが「多様性」。先に書いたように、照葉樹林は様々な種類の樹々で森を作っています。大木となるタブやスダジイの下に、ツバキやサカキ、ヤマモモ、ユズリハなどのたくさんの種類の樹々が育ちます。幹の太さも木の高さも、葉っぱの形も花もそれぞれ。私は、このデコボコした個性豊かな森を見ると、ああ、人間の社会も同じだなあ、と感じるのです。

照葉樹林 新緑4

画像6


「私たちは、多様な価値観の中で生きている。」家族ですら、みんなそれぞれ。だけれども、この「多様性」こそが、私たちの日々を豊かにしてくれている。屋久島の照葉樹林を見ていると、そんな思いが心の底から生まれてきて、少し嬉しくなります。

タブ新芽


新型コロナウィルスのおかげで、いつもと違う日常と感情に思いがけず向き合うことになったのですが、屋久島の照葉樹林のいつもと変わらない美しさを眺めながら、これもまた「多様性」を見つめ直す時間なのだなあと思うのです。

画像7

いつか、みなさんが屋久島に遊びにいらした際は、ぜひ里の森にもアンテナを張ってみてくださいね。
 
今回のコロナ禍が早く終息しますように。

********************************************************************

内室紀子
自然食品・雑貨「椿商店」店主 兼 ガイド。
1974年生まれ。神戸市出身。わんぱく男児とおしゃま女児、二児を抱えて、夫の理解を得つつ、好きな事もモリモリやってます。夫に感謝。屋久島暮らしも、ついに20年目に突入。今回紹介した、照葉樹林をじっくり歩くガイドもしますので、興味のある方はどうぞお問い合わせくださいませ。
https://www.facebook.com/tsubaki.shouten/
ringotsubaki@gmail.com


この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?