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少女美禄

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#詩

少女美禄7

少女美禄7



少女の口から吐かれた煙は

鳥になって飛んでいった

もう一度吐かれた煙はすぐに

蝶になって舞っていった

鳥も蝶も暗い月を目指して

煙に戻って消えていった

私が彼女に手を伸ばしたら

私の指先は煙になった

暗い、暗い月を目指して

絶望を背負って飛翔しよう

いつかそこに辿り着くまで

あなたは煙を吐いていて。

少女美禄6

少女美禄6



眠りは、小さな死だ

眠るのが苦手な君に睡眠薬を飲ませて

小さく、小さく、殺してあげよう

輪廻転生してもう一度君は

君としてこの世界に目覚める

ハルシオン?マイスリー?

ロヒプノール?ベゲタミン?

それともアモバン、ルネスタがお好み?

眠るのが苦手な君に無理やり飲ませて

君を小さく殺したい

君を小さく殺したい。

少女美禄5

少女美禄5



闇を這う

暗がりを這う

甘い煙に包まれた彼女の瞳

動けなくなる

ただ、息を飲む

闇を泳ぐ

暗がりを泳ぐ

彼女のくちびるが吸い口に触れる

甘い煙が全てを隠す

魅惑

魅了

語彙が足りない

彼女の病みを言い表すには

思考の止まった頭では。

病みを這う

病みを吐き出す

甘い煙に満ちて わらって

ただその暗い瞳に

墜ちていくだけ

model:実咲

少女美禄4

少女美禄4



クレオパトラは

真珠をワインに溶かしたという

あなたは今宵何を溶かしたの

憂鬱か 悲哀か 喜びか 歓喜か

何にせよ

あなたのくちびるに触れ、飲み込まれる

その液体は歓喜に満ちる

美しいもの

それは 全人類が守るべきものだ

彼女のくちびるを通して胃に入った液体は

何より尊く、信仰の対象にすらなる

少女よ!

いや、

お酒を飲めるのは少女ではないかもしれぬ

そんなこと、知

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少女美禄3

少女美禄3



どんな不幸が襲ったって

どんな地獄が待っていたって

あなたは貼り付けた笑顔で

にこにこ笑って見せるのでしょう

そしてひとりになったとき

誰にも気付かれず泣くのでしょう

貼り付けた笑顔をわたしは取りたい

泣いていいんだよ、と背中を撫でたい

それでもあなたはやっぱり笑って

貼り付けた笑顔で微笑むのでしょう。

女神に嫉妬されてしまったあなたは

そんな魔法をかけられて

ひとりに

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少女美禄

少女美禄



雪のような白い肌

血液のように赤いくちびる

黒壇のように黒い髪

毒林檎を齧るのが趣味の

悪趣味な少女がおりました

毒林檎なんか食べちゃダメって

でもわたしはこれがいいのって

もっともっと毒林檎を求める

食べるたびに綺麗になって

魔法の鏡だってひれ伏しちゃうの

毒林檎を食べて苦しむクセに

また次の日には齧ってる

昨日よりも綺麗になって

世界中の誰より綺麗になって

王子

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少女美禄2

少女美禄2



世界から嫌われてしまったのか

世界を憎んでしまったのか

ねえ、あたし もう消えたいの

流す涙ももう無いと

やんわり わらって ゆっくりと

まばたきをして そう言うの

死に損ないのわたしは痛いほどわかって 

じゃあ、お願い

あなたが死んでしまった時にはさ、

どうかわたしに死化粧をさせて

きっと、世界一、

綺麗にしてみせるから。

そして防腐加工を施して

博物館に寄贈するの

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