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レジリエンス ③トラウマ症状

私は、誰よりも大切に思ってきたはずの子どもたちを、その思いとは裏腹に傷付けていた。

そして、そのことによって自分自身をも大きく損ない、傷付き、様々な身体症状や、うつ状態に苦しんでいた。

「情緒的ネグレクト」の幼少期を過ごした私は、人生の折々で躓いては傷付き、適切に回復することのないまま、たくさんのトラウマ(心的外傷)を抱えて生きてきたと言える。

皮肉なことに、人生をやり直すはずの子育てが、私にとっての更なるトラウマとなりつつあった。


「人は誰でも、あらゆるきっかけや要因から、トラウマを負ってしまうことがある」
カウンセラーは、そう説明してくれた。

トラウマ(心的外傷)とは、以下のようなものが代表的だ。

・幼少期に保護者から不適切な対応(むやみに叱られる、無視される、暴言を受ける、目の前で暴力を見るなど)を受けた経験があり、自分に自信が持てない、学業や仕事がうまくいかない、続かない。

・身体的、心理的、性的な虐待を受けた経験があり、フラッシュバックする、イライラが止まらない、涙が止まらない、悪夢を見る、呼吸が苦しくなる、人とのトラブルが絶えないなどの症状がある。

・学校や職場でいじめを受け、悪夢を見る、眠れない、眠りすぎてしまう、家から出られなくなる、人と関わるのが怖くなる、人を信用できないなどの症状がある。

・事故に遭った後や手術を受けた後に、身体的な部分は回復したが、フラッシュバックを繰り返す、不定愁訴が増えたり、うつの症状が出て苦しい。

トラウマ症状は、出来事のすぐ後から表れることもあるけれど、時間が経ってから出てくることも多いそうだ。

時には、何か月も何年も経ってから表れることもあるので、起因した出来事との関係性に気付かず、トラウマ症状だとは見なされないことがある。

特に幼少期に起きた出来事の影響は、見逃されがちだという。


今では多くの身体症状が、トラウマによって引き起こされることがわかっている。

心臓の動悸、めまい
呼吸器障害、呼吸が浅い、息苦しい
チック、手足の震え・けいれん
不眠、睡眠障害、悪夢
身体を感じられない、麻痺しているような感覚
頭痛、偏頭痛、首や背中の痛み、慢性的な痛み
皮膚の疾病、慢性疲労
記憶喪失、忘れっぽい、記憶が断片的
そわそわする、落ち着かない、貧乏ゆすり

これらのような身体症状の他、トラウマによる心理的、感情的症状としては、以下のものがわかりやすい。

生きづらい、辛い
不安、パニック症状、強迫神経症
恐怖感、恐怖症(高所、閉所など)
フラッシュバック、嫌なイメージが湧く
怒り、不満、愚痴っぽい、攻撃的、イライラ
気分が変わりやすい、自信がない
自尊心の欠如、決断力の低下
無力感、喪失感、深い悲しみ
潔癖すぎる、完ぺき主義

また最近では次のような、トラウマの行動的症状もよく知られるようになってきた。

依存(喫煙、飲酒、薬物、性的、仕事、摂食、ゲーム、SNSなど)
何度も同じ状況に陥る(事故、DV、騙される)
特定の場所、活動、記憶、状況や人を避ける
人との関係性を切る、疑う、試す
他人、家族、子どもをコントロールする
環境、状況をコントロールする
人に気を遣い過ぎる、人の目が気になる
他人からのフィードバックに過剰反応する
人に合わせてしまう、頼まれると断れない
自分のことを常に後回しにする


このような心理的、感情的、行動的症状があれば、トラウマとの関連を疑うことは比較的容易かもしれない。

けれども厄介なのは、一見、トラウマとは何の関わりもなさそうに見える思考的症状だ。

人とうまくやれない
人を信用できない、人が怖い
人と愛情でつながることが難しい
わかってもらえない、報われないと思う
頼れない、自分一人でやる方が楽
自分さえ我慢すればいいと思っている
不当に扱われても自分のせいだと思う
不当、不公平に扱われることに過敏で怒る
きちんとしているべき
人に迷惑をかけてはいけない
誰かが困っていると見過ごせない

これらの中でも、きちんとしているべき、人に迷惑をかけてはいけない、誰かが困っていると見過ごせない、などの項目は、良いことだと思われる方が多いのではないか。


これまで私には、自分の長所だと思っていることがいくつかあった。

注意深いこと。
外出先で財布や傘などを忘れてきたり、失くしたことがない。また道を歩く時にも、常に注意を怠らない。

用心深いこと。
安易な儲け話を信用したり、騙されたりしない。噂や伝聞を鵜呑みにせずに、自分で確かめてから判断する。

状況判断が早いこと。
自分の置かれている状況や立ち位置を瞬時に察知して、今するべきことや優先順位を考える。

行動が早いこと。
決めたことは、間髪を入れずに行動に移す。億劫がって後回しにすることはほぼない。

長年、胸を張って長所だと信じてきた、これらの行動は、実はトラウマ症状なのだと、カウンセラーに看破されてしまった。

用心深く、注意深いのは、人を信用していない、人が怖いという症状と表裏だと言える。また状況判断や行動が早いのも、誰のことも頼れないという思いの裏返しだ。


身体にトラウマのエネルギーが常時、溜まっていると、身体がリラックスしている「通常」モードに戻りにくくなる。

そのため神経系がさらに過敏になったり、または過剰に鈍感になったりして多くの障害をもたらす。

私は長年、そのような状態で生きてきた。

トラウマ治療の必要性を、カウンセラーは丁寧に説いてくれた。

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