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「”変”で、”楽しい”人生をおくろう」―教育とサッカーから人生を学ぶ―愛知教育大学 濵島良太


愛知教育大学 教育学部高等数学科3年生 先生を志す学生と対話を深める学生団体「タマゴの轍」共同代表2023年4月 HAMAサッカースクール立ち上げ

教員を目指し、日々学びを続ける傍ら
自身が代表を務めるHAMAサッカースクールにて、子どもの『楽しい』を引き出す事に力をいれている彼の将来への葛藤、そしてこれからの展望についてうかがいました。


自分の色を探していた中学・高校時代

現在、高校の数学科教員を志している濵島さん。
教員を目指したきっかけは中学時代にあると話します。

「中学2年の時、職業を決めようという授業がありました。当時、サッカー選手になりたかったのですが、自分の実力的に難しさを感じて悩んでいて…。普段から忘れものが多かったり、ポンコツだったりと自分に自信がなく、将来の事もよく見えていなかったんです。そんな時、パッと目に入ったのが担任の先生でした。担任の先生がとても楽しそうに働いているのを見て、『あ、教員いいかもな』と。
先生の楽しい笑顔が、先生から生徒に移っている感じがよくて。先生の存在で、子どもも楽しそうにしているのが素敵だなと思い、教員を志し始めました。」

”楽しい”を届ける人になりたい。
そう思う一方で、『今の自分ではいけない。変わらなければ。』という気持ちがあったと話します。

「中学生の頃の僕は、人前に立つのが苦手で、女の子とは目も合わせられないくらいシャイで内気な人間でした。そんな自分から変わりたくて、高校で新しい自分になろうと決意したんです。ちょっといびつな形でもいいから、自分で自分にキャラをつくって『変な人』になろうと。」

内気な自分から変わりたいと思った濵島さんは、高校の自己紹介で『変なキャラ』をつくって皆の前に立つ事に。

「はじめましての自己紹介でボケてみました。中学の僕からは考えられませんが(笑)そこで、クラスのお調子者に『お前おもしろい奴だな』と言ってもらえて、僕の『変な人』人生がスタートしたんです。」

はじめはキャラクターとしてやっていた『変な人』も、いつしか自分の素のスタイルに馴染んでいったと言います。

「だんだんと無理にふざけたり、ボケたりする事は少なくなっていきました。今は『変』を生かしながら、人とは違った視点、自分の良さ、強みを表に出せるように変化してきましたね。『君は人と違う視点で物事を捉えていておもしろい』と言ってもらえる事も多くて。高校3年の時の担任の先生が、最後に手紙をくれたのですが、

”君には、優しさやユーモアといった人間性があります。君のユニークさをもっと出して、素敵な教師になってください。”

と書いてあって……。すごく感動しました。キャラクターとして始めた『変な人』が、だんだんと自分の色になってきているのが嬉しい。」

今までの人生の中で得た”自分の色”をより濃くし、教員として子どもたちに”楽しい”を伝えていこうと決意したと言います。


同じ志をもった仲間と出会い、挑戦

恩師から背中を押され、愛知教育大学に入学した濵島さん。
高校数学教員の養成課程を履修し学ぶ中、自分の教育観が大きく変わる出来事があったと話します。

「2021年の8月に、ヨーロッパの教育を研究している徳留先生という方の講演会に参加しました。そこで、『非認知能力』の存在を知ったんです。
一般的に言われている学力よりも、人間性に重きを置いた研究をされていて。自分も、そんな人間性を伸ばせるような教師になりたいと思いました。

徳留先生のお話の中で出てきた『非認知能力』とは大きく分けて3つあります。
①コミュニケーション力。②自分を見つめる力。③向上心
先生の『非認知能力』が子どもに大きな影響を与える。先生自身の能力が高くないと、子どもの能力も向上しないという研究結果だったんですね。もともと人間性に興味があったので、この話にとても関心をもちました。」

この講演会後、先生になる前に自分の『非認知能力』をあげる活動をしたいと考えた濱島さん。

「そんな時、偶然出会ったのが津原くんでした。僕と全く同じ事を考えていて。先生になってからでは遅いから、一緒に『非認知能力』を高められるような団体をつくろうという話になりました。」

同じ想いをもった二人がたちあげた『タマゴの轍』。
“教職員一人ひとりに幸せと、彩を。”というテーマのもと
先生のタマゴが集まり、教育や教職についての対話を深めたり、授業のプレゼンを考えて発表したり、教育イベントを開催したりしているとの事。

教員を目指す、僕たち学生がやることで社会的な価値になると考えています。自分達が教員になった時に生かせればいいなという想いで、日々さまざまな学生たちと関わり、対話を重ねているところです。」


サッカーと人生。楽しい気持ちから人間性を伸ばす

人間性に注目し、様々な活動を精力的におこなっている濵島さん。
2023年4月からは、自身が代表を務めるHAMAサッカースクールを立ち上げたそうです。

「僕はご縁で、刈谷市の中学校でサッカー部の外部指導者をしています。
刈谷市のサッカーチームは今二極化しているようで、クラブチームと部活動の2つに分かれているという話を聞きました。
上手くてお金がかけられる子達は、クラブチームに入ることができるのですが
そうじゃない子達がサッカーができるような環境が無くなりつつあるんです。

今、働き方改革などで部活動は縮小傾向にあります。平日は週2、3回。土日は2時間。
子どもたちから、『部活動の中でも、長い時間やりたい』という声が聞こえてきました。僕自身、サッカーに人生を支えてもらったという想いがあるので、この子どもたちの願望を叶えたいと思いました。」

今までのサッカー経験をもとに、指導者のC級ライセンスも取得。
中学校の部活に所属している子を対象に、平日の夜の時間のサッカースクールを立ち上げたそうです。

「子どもから「えっ、もう終わるの?」と言われるスクールにしていきたいと思っています。気づいたら夢中になっている仕掛けをどんどん用意していきたいです。

サッカーは、『非認知能力』と非常に深い関係があるスポーツだと思います。部活動の練習の範囲でプロを目指す事は厳しいかもしれませんが、僕はそこを目指す事をゴールにはしていません。
チームスポーツの中でも、11人という集団って本当に絶妙だと思うんですよ。コミュニケーションをしっかり取らないと、まとまるのが難しい。逆を言えば、常に喋らなきゃいけないから、おのずとコミュニケーション力が高まります。

また、何よりエラーが起きやすいスポーツなので、”いかにエラーをしないか”を考える思考力が身に付きます。そして、仲間のエラーをどうカバーするか、そしてエラーを恐れずチャレンジする心レギュラーに入って活躍しようとする向上心。人生で大切な事が本当にたくさん詰まっている。

楽しい気持ちは、その取り組みを継続させるモチベーションになります。プロになれなくても、”楽しんで続けた”事によって絶対に得るものがある。その子によって得るものはちがうけれど、続けられれば人生の財産を得られます。何よりも自分がそうだったから。大人も子どもも”楽しむ”サッカーをしていきたいですね。」

刈谷市全体の中学校にアプローチしながら、他の市の中学校へも活動を広げていきたいと続けます。

「サッカーでこの活動ができるということは、他のスポーツや文化部でのスクール展開も可能なのでは、と仲間と話しています。お金の有無に関わらず、子どもたちにスポーツや文化を楽しんでほしい。


自立した優しい挑戦者になりたい

教員への道、学生団体、サッカースクールと多岐にわたり活躍する濵島さんですが、自分の人生について立ち止まり考える時間も多いと話します。

「いろいろな活動をする中で、自分はいったい何になりたいんだろうとモヤモヤする事も多くあります。
教員を志して勉強しながらも、知り合いの経営者の方に、ビジネスの話などをしてもらうと『あー、ビジネスもおもしろそうだな』と思う自分もいるし……。何をするにしても、スキルや知識が足りないと思うので、今はとにかくもっと勉強しなきゃという気持ちが強いです。」

また、学びを続ける中で、ある事業のプログラムに参加したそうです。

「高校生が社会問題に触れて、実際の解決策などを考えていく取り組みに伴走するプログラムに参加しました。そこで、改めて子どもたちと一緒に何かをする、その変化を感じられる事の楽しさを感じて…。はじめは内気だった女の子が、5ヶ月後には『演劇部に入って、将来は俳優になりたい』とキラキラ話していたりとか、あぁ、良いなぁって。

でも、そんな高校生達の変化を目にした一方で、『あれ、自分って成長しているのかな。』という気持ちも湧いてきました。

学生団体やスクールを立ち上げて、それで満足しちゃっているんじゃないか?と……。」

自分が今やっている事、これからやりたい事、生き方が見えずに苦しんでいたそうです。

「いろんな思考が頭を巡りました。子どものやりたい事に伴走するのって、楽しいな。じゃあ、教員だったらそれを一番近くでできるかな。あれ、自分ってなんで高校数学を教えるんだっけ……。

いったい自分は何目指しているんだろう。やりたい事がみつからない。

そう思ってしまってからは、タマゴの轍も、HAMAサッカースクールの方でもあんまりうまく行かなくなってしまって。
組織だから、みんなの熱量や考えが合わずに揉めたり、自分の気持ちがブレたり。
結局自分何がしたいんだろう?何のために生きているんだろう。と、どん底に落ちていた時もありました。」

自分の生き方に迷っていた時、ある言葉に出会ったのだと話します。

『自立した優しい挑戦者』という言葉に心が動きました。自分にも優しくて他者にも優しくなれる心。スキルがあれば、その能力を生かしてチャレンジできること。改めてその大切さに気づいたんです。
僕のよさは何でも”楽しめる”事だったな、と。恐れることはないし。失敗してもいいやろうし。その向上心は、教員になっても、ビジネスをやるにしても大切な事だと。」

落ち込んでいた気持ちも”楽しむ”気持ちへ変化させ、目の前の事に全力で取り組もうと決めた濵島さん。

「まずはサッカースクールを頑張ろうと思いました。子どもが少しでもうまくなると考えれば、組織の人間関係よりも子どものために。昨日より今日、子どもたちがちょっとでもうまくなるようなサッカースクールにすることが僕の目標です。将来これをやる、というのはまだあまり決めていません。いろんな人に出会って、いろんな事を学び、子どもと伴走する事がしたいのなら、教員に縛られている必要もないかなと思いました。
僕のような”変”な人間は、自由にのびのびやるのがいいのかも、とも思います。(笑)」

今は、作成した『死ぬまでにやりたい事リスト100』の達成にむけて
日々人生の中で起こる出来事を、”楽しんで”いきたいと語ってくれました。

編集後記
私の個展に来てくれた濵島さんに「今までずっと頑張ってきた人色」をプレゼントしました。彼の行動力、これまでの人生、そして今この瞬間の葛藤も全部ふくめて、”ずっと頑張ってきた人色”。どんな事でも楽しめる事が強みだと語る彼の、まっすぐな心がとても暖かくて光り輝いていると感じます。会うたびにアップデートされていく濵島さんの、今後の活躍が本当に楽しみです。
濵島さん、貴重なお時間ありがとうございました。
(インタビュー・編集・イラスト By Umi)


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