見出し画像

これからの教育に向けて、学生の自分だからこそ出来る事―教員志望津原一樹が語る『自分軸思考』の大切さ―


津原一樹さん
兵庫県出身。現在は愛知教育大学にて、現場から教育をより良くしようと教員を志す大学生。
愛知県みよし市で子ども食堂を企画運営。他にも、学生や子ども達が一緒に触れ合う事のできる場づくりをしたり、教育に携わりたいと思っている学生のための学びのコミュニティを作ったりと精力的に活動をしている。


「可能性に尽くす」を全身で体現してくれた恩師との出会い

教育の仕組みをより良いものにするため、日々さまざまな活動をしている津原さん。
小学三年生から大学までバスケ部のキャプテンを務め、学校では生徒会や委員会など人の前に立ち、集団をまとめるポジションを多く経験してきたと言います。

「好きな事にはとことん没頭して、その間は他の事はどうでもよくなってしまうような性格でした。自分がやりたいと思うものは全てやってみよう!という気持ちでしたね。」

自らの興味が湧くものに、どんどん取り組んでいたとの事。

しかし、クラスにはそんな津原さんを良く思わない人もいたと言います。

「僕が行動をすると、嫌な目で見られる事もありました。その経験から、『目立ってはいけない。』『普通でいなきゃ。』『みんなに合わせよう。』……そんな気持ちが湧いて、辛いと感じる時もありました。」

自分の行動や選択に自信が無くなってしまった時、寄り添って支えてくれたのが担任の先生だったそうです。

「先生は、僕に全身全霊で向き合ってくれました。日記に本音を書くと、先生も本音で返事を書いてくれたんです。悲しさや苦しみにどう向き合うか、一緒に考えてくれました。そして、学校の外へ挑戦の機会をつくってくれたのも、この先生でした。」

自分の可能性を信じ、夢への扉を開いて開放してくれた恩師に憧れ、教師の道を志したと語ります。

そんな津原さんが高校に入った時、理不尽な校則に疑問が湧いたそうです。そして、楽しくて大好きだと思っていた部活動が、実は教員にとって大きな負担となっていた事に気づいたと言います。

「いろいろな制約や制限がかかる学校を見て、いったいこれは誰のための学校なんだろうと思いました。今日本で行われているのは、誰のための教育なのかわからなくなったんです。」

教育に携わりたいという想いはあるけれど、自分には知らない事が多すぎる。教育現場、そしてその仕組みについて詳しく学ぶために愛知教育大学の教育ガバナンスコースに進学を決めたそうです。

教育ガバナンスコースでは、様々な角度から教育について学ぶと言います。
教員養成課程ではなく、学校を一つの組織であるという視点から見て、学校の経営について、人材活用の方法、お金がどう動いていてそれがどう子ども達に影響をするかなど学校教育をつくるプロセスを学ぶ学科だそうです。

「今は、大学で教育についての知識を学び、社会教育指導主事やキャリア教育コーディネーターの資格を取りたいと考えています。現場を経験しないとわからない事も多くあると思うので、大学院に進学した後はファーストキャリアとして、教員を目指そうと思っています。」

自らが感じた疑問、違和感を解消し、「学校に彩りを」もたらしたい。そんな願いを叶えるために現在はいろんな活動に挑戦しているそうです。

学生だからこそ出来る事を考える

教員志望の学生が、教員養成課程で学ぶのは多くの場合「知識」であるという津原さん。

他者との協同や、共生を伝える教師になるはずの学生が、まず「その方法を知らない」「知る機会が無い」という矛盾に違和感を感じているそうです。

コロナ禍でオンライン授業が増え、ますます人と学び合う機会が減ってきている事を危惧していると言います。

「教育現場に必要なのは、不安や悩みに寄り添える人、子どもの夢や目標に対等に向き合う事のできる人だと考えています。他人に寄り添うためには、まず自分を知り、軸をもつ事が大切です。」

自分の考えに軸が無い人は、自分の置かれた環境に疑問を抱きにくいと津原さんは話します。

人との関わりの中で対話が生まれない、問いがあっても答えられない。現状の自分が見えていないから、新しい考えとの出会いもない……。そういった状況に陥りやすいと考えているそうです。

「だからこそ、自分と向き合い、対話する時間はとても大切。でも、教員養成課程の中にはそういった時間は設けられていないんです。」

そして、それが教育の在り方に通じてしまっていると語ります。

「みんながこうしているから、自分もこうしよう。学校を卒業したら普通に働いて、普通に暮らそう。こう言った考えの人は多いです。そして、その考えに疑問も抱かない。他人が決めた理想の人生をなんとなく辿るだけになってしまっている。でもそれは、今の教育がそうさせてしまっているのだと思っています。」

この現状を変えるため、やはり教育の在り方を考えていかねばならないと思った津原さんでしたが「教員でもない学生の僕に、何が出来るのだろう。」と悩みます。

大学生の自分だからこそできる事がある

そう思い、考えたのが「自分を育む学校プロジェクト」。

自分の在り方を根っこから育むというコンセプトのもと、教員志望の学生の不安や疑問、今の気持ちに経験や知識のある大人が寄り添うシステムをつくったそうです。

「進路や将来、また専門の分野について悩んだ時に相談できる人って、なかなか出会えないですよね。特にコロナの中で、学生が誰かと出会える環境は非常に少ないと感じています。」

教職をめざす学生に向けて、運営側はホームページや公式LINEで教育に関する情報を発信。オンラインや対面でコミュニケーションが取れるような場を設定したり、子ども達とのキャンプやレクリエーションを通じて他者と関わる機会を生み出しているとの事。

他者と交わることで、『自分』というものが見えてくると考えています。学生同士で繋がるのももちろんですが、学生が子ども達と関わり、向き合う事でもう一度『自分』を考える機会にもなると思い、交流できるイベントを企画しています。」

自らも教育セミナーや勉強会に参加し、日々経験と知識や知見を広げていっていると教えてくれました。

この世で出会う全ての事が、人を育ててくれている。

教育が抱える問題や悩みを、学校や教員だけの課題にしたくないと言う津原さん。

自分が声を挙げる事で少しでも多くの人に、教育について関心をもってほしいという想いからビジネスコンテストに参加して、プレゼンを発表するなどの活動もしているそうです。

「僕は、本気で教育に向き合っている先生達を知っています。現場で働く多くの先生は、みんな子どもの未来をよりよいものにしたいと願って働いているはずです。そして、子どもたちにとって、一番身近な大人はやはり先生。その先生が、子どもたちの世界を変えていく存在であってほしいし、自分もそうありたいと思う。」

来年度は、自分を更にアップデートするため、大学を一年休学し、デンマークやフィンランドの方へ留学に行くこと決めていると言います。

「それぞれが『自分』をもつために、やはり出会いが大切だと思います。人は、外からの影響を何かしら受けて成長していくものです。でも、自分が動かなければ、出会いはない。たくさんの人やもの、世界に出会って『自分』というものを見つけていってほしいと思います。」

残りの学生生活で、自分にできる事は全てチャレンジしていきたいと語ってくれました。

編集後記
自分が学生だった頃、こんなにも世の中の事や社会に目を向ける事が出来ていただろうかと振り返りました。なんとなくの進路選択、なんとなくのキャリア……。そうなっていたんじゃないかと、津原さんのお話を聞いて、改めて思います。津原さんの活動が、教育をもっともっと輝くものにしていく未来が見えた時間になりました。
津原さん、貴重なお時間ありがとうございました。
(インタビュー・ライター・編集・イラスト by Umi)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?