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「バトルホビーには人生で学ぶ事の8割が詰まっている」おもちゃを通じて得た経験と楽しさを次の世代へ 小島歓人


愛知県瀬戸工科高等学校専攻科デザインコース1年生(取材時) 福祉アイデアデザインコンテスト2019入選。専門学校名古屋デザイナー学院特待生試験合格。令和2年度パテントコンテスト優秀賞。長草くんアートコンテスト努力賞。 2023年春から愛知県立芸術大学へ。

高校卒業後、名古屋デザイナー学院(専門学校)へ進学し、さらに瀬戸工科高等学校専攻科デザインコースに進んだ小島さん。


2023年春からは愛知芸術大学へ入学する彼の、おもちゃ作りに対する熱い想い、これから叶えたい夢についてお聞きしました。



おもちゃを通じて人と関わってきた幼少期

現在、愛知県立芸術大学でデザインを専門に学んでいる小島さん。ゆくゆくはおもちゃ会社に勤め、子どもたちの楽しい学びを提供したいと考えているそうです。

「小さいころからおもちゃを買い与えてもらっていて、バトルホビーを通して、家族や友達を遊んだりしてコミュニケーションを取るのが好きでした。
球が飛ぶとか、変形してすごい!とか。おもちゃそのものも好きでしたね。
小さいころからモノづくりに興味があって、段ボールでおもちゃを作ったり、フィギュアをつくったり……。この世にないものを自分で作り上げることに、達成感を感じていました。」


小学校後半からずっとフィギュアをつくっていたそうで
当時は粘土で一からつくったり、既存のものを削って自分なりのデザインに変えて遊んでいたと言います。

「デザイン業界でおもちゃをつくりたいと思ったきっかけは、中学二年生の時の事です。僕が作ったフィギュアを見て、友人の弟が『ほしい!』と言ってくれました。その子のために1から制作して、プレゼントしたんです。その子が喜んでくれる顔、様子、僕のおもちゃで遊んでくれている写真などを見て、うわぁ、嬉しいなぁ…って……。」

おもちゃ産業の職に就いて、
僕を育ててくれたおもちゃや、そのメーカーへ恩返しをしたい。

この出来事がきっかけとなり、デザインの道へ進むことを決意したそうです。


バトルホビーには人生で学ぶべき事の8割が詰まっている。

多種多様、様々なおもちゃがある中でも、小島さんがつくりたいのは「バトルホビー」だと話します。

「僕は、やっぱり対戦させるおもちゃをつくりたい。自分がそれを通して経験してきた、人とのコミュニケーションを次の世代の子どもたちにもぜひ体験してほしいです。
僕は、バトルホビーには人生で学ぶべき事の8割が詰まっていると考えています。

まず、人と触れ合うことでのコミュニケーション。
そして、勝つためにはどうしたらいいんだろうという、目標に対する課程を考えるプロセス。これって、『自分はこういうひとになりたい、じゃあそれをするためにどうしたらいいんだろう』を考える思考と同じだよなぁ、と。
自分が目標に向かって、やるべきことをやっている疑似体験になると捉えています。」

「今はコロナもあり少なくなってしまいましたが、バトルホビーのイベントなどで大勢がドームで大会開かれる事もありました。そういう未知の世界へ出かけると、いろんな人を知るきっかけにもなります。こういう子がいるんだ、強い子はこうやってるんだと、おもちゃを通じて人生の進み方だったり、自分に対する考え方も深まると思っています。

今、外遊びが減っている話もよく耳にしますが、外で遊ぶ機会も、おもちゃは生み出せると思います。そして、家でおもちゃで遊ぶからこそ生まれるものもある。自分自身がそうだったからこそ、子どもたちに体験してほしいという強い気持ちがありますね。」


熱い思いだけでは、おもちゃはつくれない。

幼少期から積み重ねてきたモノづくりと、おもちゃへの熱意。しかし、今の自分では足りないと思う部分もあると話します。

「就職活動を経験し、自分が入りたいと思うおもちゃの会社で、社長面接までの機会をいただいた事もありました。でも、決まって言われる事は同じでした。

『君の思いは伝わる。でも、愛があるからと言って、おもちゃをつくれるわけではない。現実的な実力や経験が足りない。』と……。僕のそういう技術面、能力面での足りなさが見抜かれて落ちているんです。」

「頭の中で想像して、「これ良いでしょ!」というだけじゃダメなんですよね……。実際に世の中に出現させるという事。それを使ってもらう人がいるという事。そのおもちゃが世の中に生産するものとして成り立つのかどうか、とか。そういうところが大切になってくる。

それと、絵で書いた時のかっこよさと、ものとして立体物としてのかっこよさと、全くちがう。僕にはその理解度が足りないんです。

実際に今おもちゃをつくられている方、プロの方は自分よりも半端ない覚悟でやっている。
もっと世の中のものをいろんな視点でみなきゃ、吸収しなきゃいけない。
その吸収したものを、自分の中で積み上げていく基礎もいる。今はまだ、それを楽しみながら学んでいる途中ですね。」

今から10年後くらいに、おもちゃ業界で活躍するという目標に到達していればよいと考えていると話します。

「これって、すぐにできるものではない。若くしてデザインで活躍している人って、小さいころからセンスがある人だという話をよく聞きますよね。

でも僕はセンスって言葉って本当はないと思うんです。

センスというのは、その人が積み上げてきたもの。見ようとする意識の変化、できるようになっている技術。その賜物だと思います。僕はまだその”センス”の途中にいる。」


やりたい事に出会えた幸せと、これからの未来


“自分は幸せな人間だと思う。”そう語る小島さん。やりたい事に出会えたという幸せを日々噛みしめているそうです。

自分が今まで積み上げてきたもの、出会ったものの中に「選びたいと思えるもの」があった。選べる幸せがあった。そして、それに協力してくれる人に出会えたのも恵まれていると思います。その中でも、専門学校の時にお世話になった先生との出会いには本当に感謝しています。今の僕がもっている考えのベースをつくってくれた人です。

その頃の僕は、おもちゃのデザインがやりたい!という強い意志だけもっている少年でした。そんな僕に具体的な道を示してくれたり、道のたてかたを教えてくれた。
でもそれを押し付けるのではなくて、最後に選ぶのは僕だと、そう教えてくれました。」

熱狂できるものに出会えていて、さらにその人に出会えたおかげで今こうしていられる。
すべての事へ感謝しながら、進みたい道でやっていく覚悟を固めていると言います。

「この一年間、瀬戸工科高校専攻科で学んで、今まで見えなかったものが明確に見えるようになりました。『自分ってなんだろう』を掘り下げられさえすれば、これが自分のやりたいことをしっかり軸をもって語れるんだな、と。

2023年の春から愛知芸術大学へ進学するんですけど、少し変わった入学の仕方をしているんですね。きっとストレートで入ってくる子よりも、確実に地頭や試行的な部分が劣っていると思う。だからと言って、自分は駄目だとか、負けるつもりはないんですが、這い上がるこの気持ちは必要だと思っています。

今踏まなきゃいけないプロセスを、爆速で踏まないとおいて行かれてしまう。どの環境でも常にトップでいなきゃという焦りもあります。」

「僕、人って、『一日に満足しているから安心して眠れる』んだと思っていて。
自分自身、今日一日でやったことに十分満足しているときは、寝つきがいいんです。
どうしても物理的に疲れて寝ちゃう時もあるけど、起きたときに、『いや、俺はこんなんで満足してんのか?』と思う時があるんですよね。(笑)まぁ疲れて寝ちゃったら、それはしょうがないんですけど…。
そんなストイックな部分もありつつ、でも自分の良いところは忘れっぽくて気持ちの切り替えがができるところだと思うので(笑)」

今まで出会った仲間と、これから先の未来でまた出会った時にはさらに「自分」を深めて、技術面での力も持ちあわせている自分でありたいと話す小島さん。

子どもたちにおもちゃを届けるという夢を叶えるため、10年後のなりたい姿になるために確実に力をつけていきたいとお話してくれました。


編集後記
私の個展にふらっと立ち寄ってくれた彼。初めて会った時から、不思議なエネルギーを感じていました。「ただ、デザインが好き」とか「おもちゃが好き」なのではなくて、人への想いを感じられるところが素敵です。小島さんがつくるおもちゃで、たくさんの子どもたちの笑顔を生み出してほしいなと心から思います。
小島さん、貴重なお時間ありがとうございました。
(インタビュー・編集・イラスト By Umi)


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