見出し画像

モノを買うときは、物語を添えて

今の私のお財布。社会人になる前から使っているので4年と半年くらいでしょうか。

イギリスを代表するブランドのもので、一眼見れば分かる色やデザイン。みなさんもよくご存知の、あのチェック柄です。


お財布は毎日使うもの。

見た目もだいぶくたびれてきているので、「そろそろ替え時かな〜」なんて思ったりもするのですが、どうしても決心がつきません。



それは、お財布に込められた物語があるからです。

***

留学から帰国して2年、今から4年半前のこと。


私は、社会人になる前の卒業旅行として、以前お世話になったホストファミリーに会うため、再びイギリスへ行きました。



時間が経っても、変わらず向かい入れてくれるホストファミリー。


街に滞在中も近お出かけに連れて行ってくれたりと、本当の家族のように優しくしてくれる、パパ、ママ、おじいちゃん。私の第三の実家です。



“Ohh, Kana〜mi〜!”

中でも、私との再会を一番喜んでくれたのは、おそらくおじいちゃんでした。



***



今から約7年前。

留学していた私は、ほとんどの週末、おじいちゃんと地元のガーデニングショップ巡りをしたりお家にお邪魔したりなどをして過ごしていました。

一緒に過ごしている間、まるで本当の孫のように可愛がってくれたおじいちゃん。

少しずつ淡い記憶になった今も、当時、おじいちゃんが私の名前を呼ぶ声をはっきりと覚えています。


"Kana〜mi〜!"



朝の9時〜10時頃。

1階の玄関から入ったと同時に、2階にある私の部屋目掛けて大声で呼びかけるのが、週末の定番でした。




「今日は壁に飾る絵を見にチャリティーショップに行くよ」

そう言って、ソファに座りながらルンルン気分な姿。

「その後はもちろん、cup of Tea だ」

なんて、紅茶を飲みながら楽しそうに話すおじいちゃん。


イギリス人は本当に紅茶が好きだなぁ、と思いつつ幸せな家族の時間でした。

画像1



(今はもっとダメですが…)当時、パパとママがはっきり話す英語を理解するのがやっとの私。

おじいちゃんの話すことは、訛りも強く、正直、7割程度しか理解できてなかったと思います。

それでも、おじいちゃんの笑顔、口を大きく横にしてにっこり笑った表情に、何度救われたことか…

私はおじいちゃんから、言葉以上の「家族の優しさ」をたくさんたくさんもらいました。


***


そんな家族にどうしても会いてくて、人生で3度目のイギリス旅行をした、という訳です。


異国の地もだいぶ慣れた私。

久しぶりの家族の時間。


旅行中は、色々なカフェでゆっくりお茶をしたり、お買い物に行ったりと、以前と変わらず穏やかなものでした。


「今日は、美味しいレストランに行こう」

そう言って、おじいちゃんは私を食事に招待してくれ、

「もちろんデザートも頼むんだぞ」

と、街のオシャレなレストランでランチをご馳走してくれました。

すっかり少食になってしまった私に、昔と変わらずたくさん食べなさいと大きなジェスチャーを見せる姿。愛しいな。

楽しいイギリス旅行はあっという間でした。

画像2



はぁ、帰りたくないな。

名残惜しくはありましたが、半分、早く空港に行きたい気持ちもありました。

なぜなら、ずっと前から、次イギリスに行った時に決めていたこと

"イギリスで、財布を買う" が待っているからです。



「おじいちゃんから貰ったお小遣い、ずっと貯めてたの。ずっと大切にできる何かを買いたくて、次イギリスに来た時にあのお財布を買うって決めてたんだ」

「かなみはいい子だ」

おじいちゃんにも報告でき、やっと形にすることができる。寂しい旅行の終わりにも楽しみが待っていました。



留学当時、おじいちゃんがお手紙に毎回少しずつ、お小遣いを入れてくれました。本当の孫と思ってくれてるんだと嬉しくもありましたが、私はどうしていいか分からず、ずっと貯めていたのです。

「またおじいちゃんに会いに来るんだよ」

そう言って、少しずつ少しずつ溜まって行くお小遣い。申し訳ない気持ちとありがたい気持ちで、胸が一杯でした。


心から再会を喜んでくれたおじいちゃん。

「よく来た。Kanamiは偉いぞ」

その言葉と。おじいちゃんと過ごしたこれまでの時間を忘れないよう、お小遣いの使い道は、いつも身につけられるお財布にしたのです。

画像3


遠く離れた国で、ずっと家族が見守っていてくれる。

家族として一緒に過ごせた時間は短かったけど、間違いなく My family です。


***


見たら、一瞬で分かるチェックの柄。
ブランドとイギリスを象徴するクロスライン。

上品さと懐かしさを感じさせてくれます。

5年目を迎えたこのお財布は、私の手にもだいぶ馴染み、柔らかさが加わった愛着ある一品に成長しました。


「今週末にでも、重曹か何かで洗ってみよかな」


『イギリス式月収20万円の暮らし方』を読んでから、すっかり井形慶子さんの大ファンな私たち夫婦。

イギリス流の、慎ましくもシンプルかつ、心が穏やかに過ごせる暮らし。特に重曹は、なんでもキレイにする魔法のアイテムと書いてありました。

早速、週末にでも重曹を買って、お財布を洗ってみようと思います。





物語があるからこそ、新しいものに変えられない。

そして、物語のおかげで、私は、変えるのではなく大切にする方法を考えました。


そっか。

このお財布には大事な思い出が詰まってる。

そう気づいたんです。



そんなことで、もうしばらくはこのお財布にお世話になろうと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?