見出し画像

日常と性癖の短歌集【自選100首】

初めまして、ウメガカと申します。
普段は「日常と性癖(と、推し活)」をテーマに短歌を詠んでいます。
今回は、今までに詠んだ歌の中から、お気に入りのものを100首選んでみました。見ていってもらえると嬉しいです。
よろしくお願いします。



偏愛短歌

カチカチのフォカッチャ食べた月曜の朝のことすら愛おしかった

不器用なままでいてよね身勝手な願いを込めて髪を編み込む

「晩ごはん何食べるん?」への回答は電子レンジのチンじゃとけない

ずぶ濡れのわたしの前に現れたあかいたき火のようなあなただ

オオカミは見逃さないの朗らかなあなたが見せた陰のひとかけ

人生はマシな地獄を選ぶことって言うきみと手をつなぐこと


推し活短歌

推しを推すとき現実は透明だのに朝焼けの色でおしまい

好きなのはブルーライトでひさかたの朝の光が一番嫌い

この世には君と僕しかいないって思った夜も電車に乗った

だいすきの後になんにもなくなったなんにもないも愛せるのかな

折に触れ近況、慶事を耳にする遠縁みたいなフォロワーの推し

推し方も誰を推すかも私が決める誰の指図も受けないからね


推し活(死亡フラグ回収)短歌

青藍の空舞い上がる薄紅の花弁は落ちる場所も知らずに

突然の出番で全て察したよ輝きを増し爆ぜて散る星

死に場所を探すな後を任せるなそこで笑うな回想するな

さぞ貴き星堕ちぬめり月曜のトレンドワードに見えし「推しの死」

実在を感じてたからサ終した後に四十九日数えた

課金する先がどこにもなくなってきみの故郷にふるさと納税


オタクの人生短歌

14の歳に臨也に導かれ「それより前」にもう戻れない

「火」のルーン描いてスマホを起こすとき魔法少女になれた気がして

推しがいる!生きてる!本を売っている!サイン書いてる!存在してる!


夢女子短歌

書見台とかになりたい指の骨だけは埋めずに加工されたい

きみ自炊できないんでしょ探偵には助手がいないと困るって言え

明らかな嘘を明るく高らかに語る華麗なきみは怪盗

幾千の夢から覚めてもまた会おう忘れないからきみの本名

青空と海の隙間できみを見る 恋っていいね(奈良県民より)


魂の強度が高い人物

直視することのできない太陽かがやきを新月の闇の奥底に見る

爛々と耀くきみの双眸は僕の知らないifを見ている

戦いはまだ終わらないから煉獄で踊り続けろ炎のように

手が足が頭が腹が心が痛み続ける君のこと好き

手を足を頭を腹を心を痛め続ける君だから好き

血と泥に塗れてもなお黄金は化合できずに輝いていた

魂の強度が高いきみのこと耐久テストにかけてみたいな

顔が良いきみの面皮を傷つけたら一層男前になったね


歴代の推しが教えてくれたこと短歌(選)

歴代の推しが教えてくれたこと 美学を持ってるヤツが最強

歴代の推しが教えてくれたこと 役には立たぬ淡きときめき

歴代の推しが教えてくれたこと できれば知りたくなかったことも

歴代の推しが教えてくれたこと 刀は室内戦に向かない

歴代の推しが教えてくれたこと 裏切られても嫌えないこと


日常

じゃがいもの芽くらいのさり気なさでいて少し警戒されてたい生

紫の髪と煙が揺れていた灰色の冬の空の手前で

なで肩の憧れ仕草第一位「受話器を肩と耳で挟むやつ」

人間のいない雨降る日の夜も桜は咲くよここで散るまで

花びらが落ちてきた 下ばかり向いて歩いてたって気づいた

お前にも生まれた意味はあるはずだけど容赦なく足の毛を剃る

バキバキのチョコをくるんでパイを焼く明日はましな人生になれ


東京旅行

東京に来たな~と実感! 駅ナカの地元で見ないコンビニとカフェ

「品川のビルのガラスはエクセルのセルみたいだね」「オフィスだけにね」

この駅が新宿じゃない!? デカいのに!? 山手線はこわいとこです

「デカいから新宿着いたと思うやん? 間違えました」「そんなことある?」


郷愁

ペダル踏み蹴り転がして夕暮れにどこに行こうか? どこにも行けない

春ですね きみは狂気に飲まれるな桜の前で足を止めるな

わが心知る由もなし鹿たちは草を食む奈良家裁への道

身長が今の半分だった頃裸眼でどんぐり拾いもできた

「ばいばー」と去る2歳児とハイタッチ 吾が掌の冷たきを知る

午前9時〜正午のみ診察をしてたじじ医がいた医院跡

「君が好き」だけでよかったあの頃は虹も七色だけでよかった

レー コーは売り切れました 「冷コー」と頼むあなたがもう来ないから

月齢のように満ちゆく爪先の白よ 私の生き延びた日よ

ひきだしの底の日記とキスをした タイムマシンがあればいいのに

末永く続かなかった幸せよ オルゴールは未だきらきらと鳴る


社畜哀歌

金持ちの膝でくつろぐ長毛の猫になりたい(週3くらいで)

生きるのが下手すぎるから22時LEDを消して退勤

シャンプーをつめかえるとき人間として暮らせた気がしてうれしい

いっぴきのけものになりたい夜がありよんほんあしで床を這いずる

月曜の23時に丁度いい激安茶葉で淹れた2杯目

残された昨夜のメモは語らない。「おはぎのテトリス」ってなんだろう

「使えない」「そうよ私はあなたには使いこなせるわけがないのよ」

拍動を消費するなよていねいに生きろにんげん野菜も食べろ

逃げていく2月を羽交い締めしてる 息つく暇もない年度末

「人生をやり直せるなら何したい?」「わたしでっかいねこになりたい」

図書館とかきれいな駅のベンチとか居座れる場所に詳しい大人

スギ花粉以外のログインボーナスを早く実装してくれ地球


青春謳歌

人生の縮図みたいだコンタクトがすのこの下できらりとひかる

上京したはずだろお前俺ん家に何でいるんだ「来ちゃった♡」じゃねえ

ローファーで砂路につけた足跡ごと君をさらってくような春風

人生を賭ける日なのに雲一つないから逆に不安になった

インスタの正方形の外側にもたしかにあった僕らの季節


独歌

明け方の残夢みたいな混沌の中でようやく呼吸ができる

本当のあなたはどれと聞かれても柘榴の粒は全部柘榴だ

創作は生きてくための営みだ醜い貝の吐き出す真珠

幸せになりたい楽して生きてたい私は米津玄師になれない

病名がついて体が軽くなり見えない縄で首が絞まった

天井のしみと対話 まなじりをつたう心の発露一滴

十八時半あまやかに翳る空 わたしの「今日」はいつもここから

荒れ狂う夜中の海を越えてゆく 北極星の君をよすがに

いつか詠み尽くされていく定型をはみ出して跳べ五七五七八


人間じゃなくなっちゃったきみとぼく

にんげんじゃなくなっちゃったきみの見るまちのひかりとひとのいとなみ

「人間じゃないんだ?」「ないよ」「そう」「ごめん」「謝る癖はそのままなのに」

「おかえり」の続きを言えず黙り込むぼくを抱きしめるきみは人外

にんげんじゃなくてもいいよ脈をうつ血潮ながれてなくてもいいよ

生き方を変えられなくて死に方を選べなかったあなたを叱る


生存報告

死ぬこともあるよね生きてるんだから君も私も猫も宇宙も

貯金するダイエットするよく眠る明日生きてるからできること

強くなりたいと誓った病床で雲一つない空を仰いだ

あの人は生きていますかそうですか死んだらどうかまた教えてね

踊り場で束の間ねこを想うとき(しぬ)と(じさつ)は息をひそめる

テトリスだけ上手くなったよ 「生きてたくない」と「死にたくない」の隙間で

これからも死にぞこなって生きていく 割れてる爪にマニキュアを塗り

「生きてたくなかった明日」は来ないかも 今日は眠ろうそれだけでいい



ここまで読んでくださってありがとうございます。

短歌を始めて約1年になります。
上記以外の短歌の記事は下記↓のマガジンにまとめていますので、よろしければこちらも見ていってください。



短歌以外のおすすめ記事

また、短歌以外にも、推し活や、ぬい撮りについて綴った日記、読書感想の記事を書いています。
こっちもおすすめの記事をまとめてみましたので、よければ、ぜひ。


日記


ぬい撮り



読書感想の記事




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?