私の神様②
学生時代は研究者になりたかった。
別に、特別これに興味があるとかではない。
ただ漠然と、研究者というものに憧れがあったのか、それとも研究者が何か特別な存在のように感じられたからだと思う。
だけど、そんな淡い期待では乗り越えられない壁がそこにはあった。
何かをしたい。
それは誰しもが思っていることだ。
でも、誰しもが思っていることだからこそ、そこには狂気が乱舞する。その嵐の中を自分の想いだけで歩けるものが、自分の望みを手にすることができる。
自分の掌に視線を落とす。
この手には、一体何を手にすることができたんだろうか?
また、この先、何かを手にすることはできるのだろうか?
不安、
焦燥、
そして絶望、
そんな無限ループの先に見える景色は、いまだに過去と変わらない。
研究者を諦めたのは自分だ。
真剣に歩まなかったのも自分。
だけど、それでも、なりたかったという自分を否定しきれないのも、また自分。
何を求めている?
何に縋りたい?
頭が、訳もなく回転する。
ある意味、自動運転だと思った。
こんな思考、誰も求めていないのに・・・。
もしかすると、これが人間本来の執着地点なのかもしれない。
いや、他の人を巻き込むべきじゃない。
コンビニで適当なお昼ごはんを買って、外に出た。
まだ肌寒さを感じる。
春はまだ先のようだ。
「あ!」
と、いう大きな声が聞こえた。
自分の声じゃないことを確認し、僕は社用車に向かう。
だが、僕の足は引き止められた。わずかな抵抗力を感じ、ジェケットの袖を掴んでいる相手に向きなおった
「私の神様!」
彼女、剣城琴美は、白い歯をくっきりと見せていた。
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